境界性パーソナリティ障害:Borderline Personality Disorder
以下は、診断マニュアル(DSM⁻5)上の情報です。
診断基準
対人、自己像(セルフイメージ)、情動(気分や気持ち)などの不安定性および著しい衝動性の広範な様式で、成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになります。以下の5つ(またはそれ以上)によって確認されます。
- 現実に、または想像の中で、見捨てられることを避けようとするなりふりかまわない努力。
- 理想化とこき下ろしとの両極端を揺れ動くことによって特徴づけられる、不安定で激しい対人関係の様式。
- 同一性(自分とは何か?)の混乱:著名で持続的に不安定なセルフイメージまたは自己意識。
- 自己を傷つける可能性のある衝動性で、少なくとも2つの領域にわたるもの(例:浪費、性行為、物質乱用、無謀な運転、過食)。
- 自殺の行動、そぶり、脅し、または自傷行為の繰り返し。
- 顕著な気分反応性による感情の不安定性(例:通常は2~3時間続き、2~3日以上続くことはまれな、エピソード的に起こる強い不快気分、いらだたしさ又は不安)。
- 慢性的な空虚感。
- 不適切で激しい怒り、または怒りの制御の困難(例:しばしばかんしゃくを起こす、いつも怒っている、取っ組み合いの喧嘩を繰り返す)。
- 一過性のストレス関連性の妄想様観念または重篤な解離症状。
基準中で「~なりふりかまわない努力」「~不安定で激しい対人関係の様式」「~不適切で激しい怒り~」には、客観的基準が存在しません。診断医の恣意的判断に委ねられます。
主な特徴
見捨てられることを避けようとすなりふりかまわない努力
境界性パーソナリティ障害をもつ人は、現実に、または想像の中で見捨てられることを避けようとなりふりかまわない努力をします。
さし迫った別離や拒絶を想像したり、または関係が崩れる・喪失することによって、気分状態や自己イメージ、考え方、行動に大きな変化が起こることがあります。こうした人達は、”見捨てられる”かのような現象が、すなわち=自分が”悪い”との意味を表していると信じ込んでいるかもしれません。
こうした恐怖は、1人でいることに耐えられない悩み、他の人に一緒にいてもらいたいなどの欲求と関係していることがあります。
また、見捨てられることを避けようとするなりふりかまわない努力には、自傷行為や自殺行動のような衝動的な行為も含まれます。
不安定で激しい対人関係パターン
境界性パーソナリティ障害をもつ人は、不安定で激しい対印関係パターンを特徴とします。1~2回会っただけで、その人のことを自分の面倒をみてくれる又は恋人になる可能性があると理想化し、長い時間を一緒に過ごすように要求したり、早い段階から非常に個人的なことを詳しく分かち合おうとするかもしれません。
しかし、理想化からこき下ろしへとすばやく変わり、その人が自分の面倒を十分にみてくれない、十分なものを与えてくれない、または十分に”そこに”いてくれないと感じることがあります。
境界性パーソナリティ障害をもつ人たちは、他人に共感したり世話をしたりすることはできるが、それは相手が”そこにいて”、お返しに自分の求める欲求を満たしてくれることを期待しての行動であることが多くあります。
ですが、他人に対する見方が突然に、しかも極端に変化する傾向があり、この人達にとって他人は、有益な援助をしてくれる(世話や欲求を満たしてくれる存在=理想化)かあるいは残酷な罰(拒絶)を与えるか(恐ろしい対象=こき下ろし)のどちらかであると映っていることがあります。
こうした二極化な対人行動パターンの背景には、同一性(アイデンティティ)の障害が存在しているかもしれません。それは、自己像(セルフイメージ)を「悪いまたは邪悪である」と信じ込んでいるかもしれず、また「自分がまったく存在しない(感じられない)」と感じているかもしれません(「人格レベルの生きにくさ」をご参照)。
衝動性の問題
境界性パーソナリティ障害をもつ人は、少なくとも2つの領域において自分を傷つける可能性のある衝動性を持っていることがあります。それらは、「無責任な金銭浪費、過食、物質乱用、危険な性行為、無謀運転など」と「自殺の行動、そぶり、脅し、または自傷行為の反復など」です。
境界性パーソナリティ障害をもつ人の衝動性は、実際に自殺してしまう可能性も高く(8~10%)、自傷行為や自殺の脅しならびに自殺企図の割合は非常に高いことが認められます。
こうした自己破壊的な行為は、通常、距離をおかれることや拒絶されるという脅威、またはその人の責任(プレッシャー)が増大すると予期された場合に突然に起こる傾向があります。