依存性パーソナリティ障害:Dependent Personality Disorder
以下は、診断マニュアル(DSM⁻5)上の情報です。
診断
面倒を見てもらいたいという広範で過剰な欲求があり、そのために従属的でしがみつく行動をとり、分離に対する不安を感じます。成人期早期に始まり、種々の状況で明らかになります。以下のうち5つ(またはそれ以上)によって示されます。
- 日常のことを決めるにも、他の人達からのありあまるほどの助言と保障がなければできない。
- 自分の生活のほとんどの主要な領域で、他人に責任をとってもらうことを必要とする。
- 指示又は是認を失うことを恐れるために、他人の意見に反対を表明することが困難である。
- 自分自身の考えで計画を始めたり、または物事を行うことが困難である(判断または能力に自信がないため)。
- 他人からの世話および支えを得る為に、不快なことまで自分ンから進んでするほどやりすぎてしまう。
- 自分自身の面倒をみることができないという誇張された恐怖のために、1人になると不安、または無力感を感じる。
- 1つの親密な関係が終わったときに、自分を世話し支えてくれるもとになる別の関係を必死で求める。
- 1人残されて自分で自分の面倒をみることになるという恐怖に、非現実的なまでにとらわれている。
特徴
依存性パーソナリティ障害の基本特徴は、面倒をみてもらいたいという広範で過剰な欲求であり、そのために従属的でしがみつく行動をとり、分離に対する恐怖や不安をもつことです。
従属的で依存的な行動パターンは、他者の面倒見を引き出すために行われることがしばしみられ、背後には、他人の援助なしでは十分に機能できないという自己認識(恐怖)が存在しているかもしれません(「自信がなく、独力で物事を行ったりすることが困難である」と信じ込んでいることがあります)。
具体的な行動として、例えば、「外出用のシャツは何がよいか、傘を持って行くべきかどうか…」「自由な時間をどう使うべきか」「どこに住むべきか」「どの仕事や進路に進むべきか」「どの人と仲良くすべきか…」等々、他人からの助言や保証がなければ、決められない傾向としてあらわれます。
依存性パーソナリティ障害をもつ人は、「他人に決めてもらいたい」「責任をとってもらいたい」とする傾向を、生活の広範な領域(あらゆる活動や場面)でもちます(年齢相応の欲求にそぐわない)。
また、他者に依存的・従属的であるために、相手の要求が不合理なものだとしても、相手の望むことに従ってしまう場合が、依存性パーソナリティ障害の人にはみられます。例えば、ひどく自分を犠牲にしたり、言語的・肉体的、あるいは性的虐待にでさえ、耐えたりすることもあります。
◆見捨てられる恐怖
依存性パーソナリティ障害をもつ人は、自分の世話や面倒をみてくれる人に対して「見捨てられるかも…」との恐怖を常に心配していることがあります。
そのため、他者からの面倒見を失うような機会、例えば、自分をより高めるような機会や活動への参加を避けようとたり、そのように有用な自分がいることを世話人に知られたくないと思うかもしれません。
◆他の障害との合併傾向
依存性パーソナリティ障害は、他のパーソナリティ障害や精神疾患との合併症があります。例えば、抑うつ障害、不安症、適応障害などとの合併症がみられますし、他のパーソナリティ障害とは、境界性パーソナリティ障害、回避性パーソナリティ障害、および演技性パーソナリティ障害と合併して発症することが報告されます。
見捨てられる恐怖については、境界性パーソナリティ障害と共通します。ですが、依存性パーソナリティ障害のそれは「服従的で従順な様子」を特徴とするのに対し、境界性パーソナリティ障害では「強い怒りや要求、起伏の激しさ」等として現れる点に、両者が区別されます。
また、他者の保証と是認を求める傾向は、回避性パーソナリティ障害と共通します。ですが、回避性パーソナリティ障害のそれは、自分が受け入れられるという安心が得られるまで「引きこもる」「距離を取る」ことが特徴となりますが、依存性パーソナリティ障害では、むしろ重要な他者とのつながりを求めて維持しようとする行動があります。
こうした依存性パーソナリティの「特性」をもつ人は、社会に多くいるとされます。そうした特性が、柔軟性を欠き、不適応的でかつ持続的で、そして著しい社会的機能や生活の支障をきたしている場合に限って、依存性パーソナリティ障害であると診断されます。