皆さん、こんにちは。

シリーズブログの第一部「小さな気づきで全てが変わる~Small changes make a big difference」5回目になります。

今回は、過去に当センターで短期間入所されていたうつ病・強迫性パーソナリティ障害の男性(20代後半)の言葉を交えて、社会復帰までのプロセスをご紹介して参ります。

当時の彼は・・

入所した当初、彼はいつも笑顔を絶やさず、誰に対しても良い子を演じる、ある意味ポーカーフェイスな研修生でした。

しかし、そんなポーカーフェイスの裏では、強い攻撃性が自分へと向かい、「このままではいけない・・死んだ方がマシだ」と毎晩母親に連絡をしては、母親を困らせていました。

当時、彼には素の自分をさらけ出せる相手が母親しかいなかったのです。

母親に対しては本心を訴え続けることができていた一方で、他人にはまったくそれができず、「~しなければならない」という強迫観念に支配され、ゆっくりと休むことができずにいました。

ゆっくりとくつろいでいると、たちまち罪悪感が溢れてきて、「このままではいけないのではないか・・」といつも不安に襲われていたと後に語ってくれました。

結論から言うと、彼は社会復帰し、当センターを退所(卒業)なさっていかれたのですが、そんな彼が実際に入所していたのは4ヵ月間という短い期間でした。

彼の後日談を聞いていくと、「どの時期に」「どのような変化が起こり」「社会復帰するまでに回復できたのか」についてのヒントが見えてきます。

彼が社会復帰後に実際に語ってくれた言葉をご紹介して参りますので、その中から、「何が彼を変えていったのか?」を感じ取っていただければと思います。

※彼の同意の元、個人情報が特定されないように一部修正を加えています。

彼の体験談より

『最初の1,2ヵ月は、「早く良くならなければ」という焦りがものすごくある一方で、メンタル的には「勉強とか仕事などの将来に関わることは何もしたくない」といった状態だった。

でも、気を紛らわすためにいつも何かをしていないと落ち着かない自分がいた。

センターに来ても「自分は元気、明るい、“大丈夫”なんだよ」と、できるだけ自分を良く見せようと演じていて、自分の悩んでいることが誰にも言えなかった。

言ってしまうと、トラウマとなった経験を思い出して辛いから、触れないようにしていたのだと思う。

2ヶ月目に入った頃、自分に対して突っ込んで話を聞いてくる先生に戸惑いがあったけど、少しずつ話が出来るようになってきた。

同じ研修生に対しても、自分の辛かった経験を話せるようにもなった。

それまでは、「話す」ということは、自分にとって悩みを解決するものではなく、何も変わらないからムダなことで、相手に時間を取らせるだけという風に思っていたけど、話すことで自分を客観的に見ることができて、自分の経験した辛さを自分の言葉で伝える過程で、何が辛くて、どういう場面が辛かったのかなどが理解できることに気づいた。

そして、凄く辛いと思っていた経験は、実は自分で過大評価していて、「そんなに大事ではなかったのかも?」ということに気づけた。

振り返ってみると、今までの人生でも小さな失敗はあったし、今回は凄く大きな失敗ではあったけれど、そんなに大差がなかったことに自分で気づけて、気持ちがラクになった。

3ヵ月目以降は、センターの人たち全般に対して、自分の深い所を話すことができるようになり、共感してもらえた。

外部の友人たちは、辛い経験をしていないので分かってもらいにくいが、ここでは理解してもらえたから話しやすかったし、「辛いのは自分だけだ」という思い違いをしていたことに気づけた。

その頃から、「働く意欲もないし、自分のできる仕事なんてない」という気持ちから、「何かやりたい!」という気持ちに切り替わった。

「自分のことで迷惑かけられない」という思いがあり、周囲に対して自分の言動を気にしすぎて、行動に移せない自分がいたけど、以前のように「失敗するのが怖い、どうせ失敗する・・」などと思わなくなった。

自分の話を聞いてくれる人がいるということはとても大きく、何があっても、聞いてもらえるということが安心となって、踏み出す力になったんだと思う。

4ヶ月目にもなると、自分の経験などを気楽に話せるようになっていて、実際に働いてみたいという気持ちも強くなっていた。

その時、介護施設でアルバイトがあるという話があったので、思い切ってチャレンジしてみた。

今アルバイトを始めて1ヶ月以上経っているが、職場で何かあったら、いつでも話を聞いてもらえるという安心感もあって、先生やスタッフの理解の元、晴れて退所(卒業)することができたんだと思う。』

以上が彼の語ってくれた体験談です。

そして、そんな彼に私たちはこう言ってあげられます。

「もう大丈夫だね!」と。