皆さん、こんにちは。

シリーズブログの第二部「同じ悩みを持つ母親たちがここにいる~There’re mothers just like you~」8回目になります。

今回は、万引きと摂食障害を併存している境界性パーソナリティ障害を抱えた子どもと親との関係性について考えてみたいと思います。

過去の愛着障害

立派な犯罪行為である「万引き」と、犯罪行為ではない「摂食障害」という食べることへの依存症との間には、無関係のように思えてある大きな共通点があります。

それは、どちらも幼い頃に「愛着障害(愛情不足)」を味わったという経験です。

親の立場からすれば、十分とはいかないまでにも、我が子にその都度愛情をかけていたつもりなのに、「どうして今頃になって愛情が足らないなどと言いだすのか?」と困惑してしまうようなことですが、実際にそういった内容の相談件数は多いものです。

心理臨床では、「愛情」というものを量ではなく「質」と捉えていきます。

ですから、子どもと一緒にいる時間がたくさんあったからといって、愛情が十分に伝わったかというとそうでもなくて、時間がない中でも子どもの話に耳を傾けてあげたり、子どもに興味を持つだけでも十分に意味があるのです。

愛情不足を味わった子ども達の多くは、両親の間に喧嘩が絶えなかったり、不仲であったが故に、必要以上に「良い子」や「優しい子」を演じます。

母親の愚痴を必死になって聞いてあげるカウンセラー役になってしまう子どもも珍しくありません。

万引きや摂食障害を併存している方たちの学童期や青年期を見てみると、こういったいわゆる「良い子」「優しい子」が多いという事実があります。

万引きと摂食障害を繰り返す境界性パーソナリティ障害

Aさん(30代女性、既婚、子どもが一人)という方が、当センターへ面接に通っていた当時の話を紹介したいと思います。

Aさんは初回の面接で、「私は緊張しやすく、いろんなことをくよくよと考えてしまって疲れる。首や肩がものすごく痛い。」と繰り返し訴えていました。

そんなAさんは当時、「母親には絶対に会いたくない」「両親のいる実家には帰りたくない」「顏も見たくないし声も聞きたくない」「両親や家族の記憶なんてなくなってしまえばいい」といった想いを抱いていました。

毎日夢の中でも母親がいつも泣きながら父親にすがりつき、その後Aさんが一生懸命母親を慰めて励ますものの、一向に母親の気分は晴れず、どうしていいのか分からずにいると目を覚まし、汗びっしょりになっていたなんてことが頻繁に起きていました。

Aさんは面接を重ねていく中で、「私も実際に自分の子どもを授かり、育てていく中で母親と全く同じように子どもに接していたことがわかった。」と、世代間連鎖に気づき始めました。

また、「親に一切迷惑をかけたくなかった。甘えたい気持ちとわがままな気持ちは我慢して、一切を口にしたことはありませんでした。親に心配をかけないようになんでも自分でできる良い子を一生懸命やってきました。でも、父親と母親の距離が一向に近くならない現実を目の当たりにして、その原因を自分に持ってきては、ひたすらに努力を繰り返していきました。父親も自分の世界に閉じこもる性格の人だったのはわかっていましたが、どこかで心を開かないのは私が悪いんだと思い込んでいました。」などと、良い子を演じるしかなかった背景にある素直な気持ちを語るようになりました。

Aさんは自らの過去を素直に表現していく一方で、「時が経過した今では、私は父親と母親を絶対に許せないし憎んでいます。しかしそう思ったりすると、それが全部自分に帰ってきて、自分を責める気持ちに襲われてしまうんです。」と、両親に対する怒りや憎しみ、自責感情なども表現できるようになりました。

Aさんは最後に、「私が良い子になろうとすればするほど、苦しく、辛く、なぜか親たちが憎くなって、なんで自分だけこんなに努力を続けても報われないのだと苦悩し、ついには家庭内で爆発するようになっていました。」と、良い子が家庭内暴力を振るわなければいけなくなった「悪い子」に急変する背景を付け加えました。

親に向かう家庭内暴力の背景には、「親にもっと愛されたい、でも今まで愛してくれなかった親を恨んでいる」というアンビバレンス(相反する感情)のような葛藤が存在しており、それが暴力という形で表現されているのです 。