皆さん、こんにちは。
今回は当センターの施設長に、パーソナリティ障害の専門家がどうして少ないのかということについて語ってもらった内容をご紹介して参ります。
1つ目の理由
佐藤矢市施設長は、このパーソナリティ障害という領域で専門家を目指そうと志してから、今日まで30年以上もの間、当事者やご家族たちの支援を続けてきているのですが、今現在においても、当時と変わらず「専門家」は少ないと語っています。
当事者の皆さんもよくご存じかとは思いますが、1つ目の理由は「大変だから」ということが一番なのだそうです。
パーソナリティ障害を抱える方たちは、感情の起伏がとても激しく、一日の間にも感情が大きく揺れ動きます。
「あれ?さっき言っていたことと真逆のことを言い出したけど、どっちを信じればいいの?」という場面に多く出くわしますが、これは感情のコントロール、つまり「自分自身を安定して保っておく力」が未熟であるという側面を持っているためです。
また、時として「被害妄想」なども働き、周囲の言っている言葉を全て自分に対する攻撃と受け取ってしまい、自分を守るために周囲を攻撃し始めます。
攻撃の手段は様々ですが、「自己中心的な思想」から第三者機関を巻き込んで訴訟を起こし、クレーム問題に発展してしまうことさえあります。
他にも「独占欲」や「不安」が非常に強かったりして、当センターの中でもこんな光景がよく見られます。
一部の研修生は自分の気に入ったスタッフ(よく話を聴いてくれる)に対して全精力を傾けてくるため、スタッフ自身が精神的に負担になってしまうケースがあります。
その研修生にとってはスタッフの勤務時間など関係なく、昼夜を問わず突然電話をかけてきたり、私生活に入り込んでくるなどの公私混同が著しく、自殺未遂や自傷行為をちらつかせてみせてはスタッフを試してくることもあります。
これらの行動の背景には「絶対に自分を見放さないか」という見捨てられ不安があります。
こういった傾向をスタッフ(支援者側)がきちんと把握していないと、共に寄りそって支援を続けていくことは困難であり、スタッフが自身のキャパシティ(許容限界)をオーバーしてしまう事態につながりかねません。
2つ目の理由
専門家が少ない2つ目の理由として考えられるのが、パーソナリティ障害というものが安定して回復するケースが少なく、「成功例を経験することができていない」からではないかと施設長は語っています。
これまで数多くの当事者たちと向き合い、社会に送り出してきた施設長でさえ、1人1人の回復にはとても長い時間と労力を費やし、誰一人として簡単なケースなどなかったそうです。
支援者に要求されるものは、当事者と向き合う上で「何があっても揺るがないという毅然とした態度」と「彼らを決して見捨てないという信念」であるとよく施設長から伺います。
もちろんこれは支援者全体、つまり当事者のご家族含む全ての関係者に必要とされるものであり、専門家を目指す人間にはこの「覚悟」が必須なのです。
まとめ
パーソナリティ障害の専門家が少ないという事実は、今の世の中にとって非常に危機感を覚えます。
社会は複雑化し、精神疾患というものは昔に比べて増加傾向にある現代において、パーソナリティ障害の専門家はむしろ充実していて然りと言えるのではないでしょうか。
施設長はもちろん、私たちスタッフ一同は、1人でも多くの専門家が名乗りを上げ、パーソナリティ障害の回復に努めてくれることを切に願っております。