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皆さんは身近にパーソナリティ障害(人格障害、PD)と診断された人(或いは可能性のある人)がいることによって、怖い思いをした経験はありませんか?

 

パーソナリティ障害の人が怖がられたり危険視されてしまう背景には、「認知の歪み」という特性による周囲との行き違いや感情の爆発、周囲との衝突によってトラブルを起こしてしまうことが原因として考えられます。

 

しかし、そんな事情を知らない家庭や職場、学校などで危険人物とレッテルを貼られてしまったり、腫れ物扱いを受けたりしてしまうことは、本人を苦しめる悩みの種となっていることをご存じでしょうか。

 

そう考えると、パーソナリティ障害の人が見せる怖い一面も、ある部分では周囲の無理解によって助長されているということがわかります。

 

もし、そこに気づいてくれる人理解を示そうとしてくれる人寄り添ってくれる人がいたとしたら、お互いに嫌な思いをしたり身の危険を感じるような出来事もきっと少なくなるでしょう。

 

今回は、そんなパーソナリティ障害の人に対する「危険」という印象を解くために、誤解・衝突・行き違いなどが起こってしまう理由と対処法について詳しくご紹介していきますので、この機会に理解を深めていってもらえればと思います。

 

【目次】
1.誰が悪い論争をしない
2.行き違いや無理解からの衝突
3.自身に向けられるパターン
4.当施設の出した答え

 

1.誰が悪い論争をしない

女性バツ印

パーソナリティ障害の人がやってしまいがちな言い争いの中で、特に多いとされるものが「誰が悪いのか?」という不毛な論争です。

 

「自分が今こんなつらい思いをしているのは全部”親”が悪い!」

 

「私が怒っているのは”あいつ”が私のことをないがしろにしたからだ!」

 

「私は何も悪くないのに、”まわりのみんな”で私を悪者にしようとしている!」

 

このような言い争いは傍からは見るに堪えないものですが、当の本人は真剣に苦しんでおり、本気でそう思い込んでいるのです。

 

そんな相手に向かって頭ごなしに「違う、そうじゃないよ」などと諭そうとしたところで、聞き入れてもらえるはずがありません。

 

このようなシーンに実際に遭遇した場合、一番やってはいけないこと「一緒になって犯人捜しをしない」ことです。

 

ついつい売り言葉に買い言葉で話に乗っかってしまい、誰が悪いのか論争を白熱させてしまうとますます怒りのボルテージは上がってしまうばかりです。

 

言い出した当の本人も相手も、決してお互いに争い合いたくて口論しているのではありません。

 

かと言って、距離を取ったり、相手にしない(無視)といったやり方をしても反感を買ってしまいます。

 

この状況ですべきことは、まず相手の心の中に注目し、「何があったの?」「何を伝えようとしているの?」という部分に焦点をあてながらゆっくりと相手の話に耳を傾けてみるよう心がけてください。

 

こちらの意見や求められていない余計なアドバイスをせず、黙って聞くに徹することで思っていることを一通り吐き出させ、落ち着きを取り戻してくれるまで待つとよいでしょう。

 

2.行き違いや無理解からの衝突

悲しそうな女性

パーソナリティ障害の人は常に不安や不満を抱えており、そのため不機嫌そうに見えることがほとんどだったり物憂げに見えることがあります。

 

この原因を「親子(家族)」という単位で、親と子それぞれの視点から考えてみると、そのしくみが次第に明らかになっていきます。

 

これは当施設を利用された親御さんたちがよく口にするフレーズからも読み解いていくとわかりやすいかもしれません。

 

・「娘はコミュニケーションが苦手なので、積極的に話しかけてあげてください。」

 

・「息子は成績もよく賢い子なのです。立ち直りさえすれば立派な仕事に就けるはずです。」

 

・「娘がもう家に帰りたいと言っているので、施設を退所させたいと思います。」

 

これらのフレーズには、”ある共通点”があることがおわかりでしょうか?

 

それは、親御さんたちはお子様のことを想っての発言のように見えて、実は全く気持ち(心)を理解できていないという点です。

 

寄り添う母親

「娘はコミュニケーションが苦手なので、積極的に話しかけてあげてください。」

 

まず、1つ目のこのフレーズにある「娘はコミュニケーションが苦手」という部分と「積極的に話しかけてあげて」と言う部分に注目してみましょう。

 

前者は娘さんの見たままの状態でほぼ間違いないでしょうが、後者「親御さんの勝手な要望」に過ぎず、娘さん本人が望んでいることと合致していない(ズレている)可能性があります。

 

これがほとんどの親子で行き違いの原因となっており、実際言われた側の娘さんは「またお母さんは余計なことばかり言って!」と憤り、ますます親子の溝は深まってしまいました。

 

こうならないためには、「今から言おうとしていることは自分の考えの押し付けになっていないか?」と、常に相手の気持ちを第一に考えての発言を心がけるとよいでしょう。

 

期待する父親

「息子は成績もよく賢い子なのです。立ち直りさえすれば立派な仕事に就けるはずです。」

 

次に、2つ目のフレーズにある「息子は成績もよく賢い子」という認識に加え、「立派な仕事に就けるはず」という親御さんの話には同意しかねます。

 

なぜなら、これもやはり親御さんの主観(感想や願望)である場合が多く、真実であるかどうかは疑わしいからです。

 

スタッフや心理士が息子さんから直接真意(本音の部分)を聞き出してみると、

 

「本当は親の期待に応えるために死に物狂いで良い成績を取っていた。」

 

「親に言われたから立派な仕事に就くことを目標にしていたに過ぎなかった。」

 

といった本音を、とても苦しそうに打ち明けてくれたたりします。

 

直後、息子さんは実の親にも言えなかった本音を話せたおかげか、スッと肩の荷が下りたように安堵してくれました。

 

様子を伺う娘

「娘がもう家に帰りたいと言っているので、施設を退所させたいと思います。」

 

最後に触れる3つ目のフレーズは、当施設へ入所された親子の間で必ずと言っていいほどやり取りされているものです。

 

親御さんも、当施設へお子様をお預けになられた時点では「我が子をなんとしてでも立ち直らせたい」という思いが強かったはずです。

 

それなのに、たった1ヶ月や2ヶ月という短期間で「家に帰りたい」と弱音を吐くお子様を見ると、ついつい心が揺らいでしまうのです。

 

残念なことに、パーソナリティ障害のお子様が親御さんにすがるように訴える「もう帰りたい」というセリフに含まれた”別の意味”に自力で気づける親御さんはほぼいらっしゃいません。

 

結論から言うと、これはお子様からの「試し行動」の一環なのです。

 

「自分が『帰りたい』と言ったら、言うとおりにあっさりと退所させてしまうの?」

 

「そんな程度の覚悟で『心配だ』とか『治してあげたい』なんて、本気で思っていたの?」

 

「じゃあそもそもなんでこんな施設に入所させようと思ったの?」

 

お子様はこういった意味を含ませて「帰りたい」と親にぶつけ、自分に対する親の本気度を推し量っているのです。

 

もちろん、こうした話題を振られるたびに私どもスタッフから親御さんへのご説明は欠かしていません。

 

それでも我が子かわいさから、「やっぱりやめます…」と折れて中断してしまう親御さんも少なからずいらっしゃることは、大変に残念でなりません。

 

3.自身に向けられるパターン

手を抑える

パーソナリティ障害の人は、認知の歪みから生まれた言葉にできないモヤモヤイライラといった感覚をどのように扱えばよいかわからず、それらを表に発散することで周囲との衝突が起こってしまいます。

 

ところが、人によってはそのエネルギーを自身の内面に向けて解き放つ場合もあります。

 

それらは自傷行為(リストカット)OD(オーバードーズ、薬物過剰摂取のこと)摂食障害(過食や拒食)といった症状として表れ、本人を傷つけ苦しめるだけでなく、身近な人たちにも困惑をもたらします。

 

共感し難い(理解できない)行為というものは、他人からは得てして「怖いもの」として捉えられ、距離を置かれてしまうことがあります。

 

そうなってしまうと、孤立や不安から心の中のモヤモヤやイライラは消えるどころか増していくばかりです。

 

「こんな自分はいつか見捨てられてしまうかもしれない…」

 

「不安で何も手が付けられない、そんな自分を誰もわかってくれない…」

 

漠然とした負の感情に苛まれ、一連の行動を繰り返していくうちにいつしか「心の歪み」はさらに大きくなり、パーソナリティ障害は深刻化していってしまうのです。

 

この負のスパイラルを防ぐためには、やはり身近に話を聞いてくれたり、寄り添ってくれるような良き理解者の存在が欠かせません。

 

4.当施設が出した答え

笑顔の女性

今回は、パーソナリティ障害の人がむやみに危険視されたり怖がられてしまわないよう、誤解や衝突の実例をもとに周囲にはどういった対応が求められているのかについてたくさんご紹介してまいりました。

 

パーソナリティ障害の人の心の中には、成育歴や家族関係(人間関係)に大きく影響された何らかの「歪み」が深い部分に根付いていることがほとんどです。

 

彼ら・彼女らは、口には出さずとも「安心したい」「見捨てないで」「認めて」「背中を押して」という願望を胸に抱いています。

 

当施設では長い臨床研究の中から見出されたそれらの真実を元に、「どうやったら安心を感じてもらえるのか?」をテーマに環境づくりや接し方などを試行錯誤しながら改善し続けてきました。

 

パーソナリティ障害の回復には薬や精神療法が基本とされていますが、それだけでは求めている「安心感」につながる保証が得られないように感じていました。

 

そこでたどり着いた答えが、「パーソナリティ障害の人もそうでない人たちも、安心の基本は衣食住にある」ということでした。

 

暑さ寒さを防いで快適に過ごせる衣服が十分にあり、美味しくて安全な食事を毎食とれて、ストレスを感じない自由で解放的な環境で過ごせること。

 

当たり前のようでできていなかった、これらの要素を満たした独自の支援スタイルが当施設の「宿泊支援」の基礎となっています。

 

背伸びする男性

他の支援施設などでも、スタッフによるメンタルケア、寄り添い、見守りなどは基本として行われています。

 

そこからさらに一歩進んだ「パーソナリティ障害の人たちが求めているもの」を与えられるサポートに重点を置いたことで、利用者はもちろん、そのご家族に至るまで安心を感じていただけるようになったと当施設は確信しています。

 

これからもパーソナリティ障害の人やその近親者の皆さんに安心・安全を感じていただけるようになるサポートとは何か?をテーマに、施設の運営をアップデートさせていくつもりです。

 

もし、この記事をご覧になっている方の身近に、今も周囲との衝突や自身の苦しみなどと闘っていらっしゃるような方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度当施設へご相談ください。

 

※当施設について詳しく知りたい方はホームページをご覧ください。

 

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☎ 0274-62-8826(専用回線)

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担当:佐藤

 

きれいなお花