皆さん、こんにちは。

佐藤矢市先生の「パーソナリティ障害の回復には決断と見守る連携が必要」シリーズ第15回目となります。

これまでにも、パーソナリティ障害を克復していくための目安やポイントを挙げてきましたが、今回はその中で最も大切となる「親を卒業する」という点について矢市先生に解説していただきます。

親に対する強いこだわり

すべてのパーソナリティ障害に当てはまることですが、親に対するこだわりが強いところがあり、最終的に「親を卒業する」ことが必要となってきます。

親の事で多大なエネルギーを費やしている子どもたちは、親別れをできていない証拠であり、いつまで経っても自分の人生を歩み出すことはできません。

気持ちのどこかで親に対する強い執着とともに怒りや否定的な感情を抱えていて、このドロドロした葛藤が本人を苦しめ、周囲をも苦しめることになります。

口では「親なんかウザい!いつも自分の価値観を一方的に押し付けてくる!あんなのは親として失格だ!」などと訴えていたとしても、心の中では、「もっと私を見て!こんなみじめな自分を受け入れて欲しい」という強い承認欲求を抱いています。

最初のうちは、この葛藤の正体さえわからずにただ自暴自棄な行動や、救いや支えを求めて誰かにのめり込むといった行動に走ります。

引きこもりや摂食障害、万引きやDV、その他数々の依存症などの行動もこの時期に多く見られるものです。

時期が経って少しわかってくると、今度は今の苦しみや現状が親のせいだと思うようになってきます。

この段階はある意味で、自覚が始まり、一歩前進と言えるのですが、ここに留まっている限りは本当の意味での回復には至っていません。

親に対する暴言や暴力などが顕著に表れてくるのもこの時期で、私の元を訪れてくる方々の多くがまさにこの時期の真っただ中にいます。

親に対する復讐心や恨みがとても強く、徹底的に親を責め立てていきます。

あるいは、数々の問題行動を通して、親を困らせ、無力感と敗北感を抱かせ、「いかに親が悪かったのか」ということを次々に証明していくのです。

必死で親にしがみつこうとする本人の気持ちもわからなくもありませんが、そんなことばかりを繰り返していては、回復に近づくことはできません。

回復に必要な段階

回復には次のような段階が必要になります。

親の対応にもいろいろ不足な点や問題はあったけれども、親もまたそうせざるを得ない事情を抱えていたのだと理解する段階です。

簡単に言えば、親もいろんな事情を抱えている一人の人間、限界のある人間であることに子どもが気づくということです。

そこまで客観的に振り返ることができるようになると、親に対する怒りや否定的な感情は薄らいでいき、親もまた自分の人生に関わった大切な人として、もう一度受け入れ直すことができるようになるのです。

仮に受け入れられなくても、受け入れられない自分をも肯定できるようになるのです。

このようなプロセスを経て、親を卒業していくのです。

その後は、パーソナリティ障害特有の繰り返される対人関係パターンやクセを見直し、修正できるよう実際にトレーニングし、より自分らしい生き方を探索していく段階に入ります。

まとめると、心の病気というものを理解し、いつまでも親と一緒に居たらダメになってしまうと認められることが大切なのです。

ご家族様におかれましても、社会自立を心から願うお子様、そしてお互いのためにも、回復のチャンスである今を逃さずに、ぜひ、専門機関と協力して乗り越えていきましょう。