パーソナリティ障害は時間の経過によって(自然)回復する?
症状の表面的な現れ方のみに注目すれば、確かに、加齢(時間経過)による軽快傾向(その頻度や激しさが減ってきているように思える現象)は、私どもの臨床場面でも確認されます。
特にその傾向は、「自傷他害行為」などのリスクテイクな行動においてある様に思え(これを「晩熟化」と呼ぶこともあります)、その症状の激しさは、30~40代を境(ピーク)に「やや、おとなしくなった?」との印象を受けるものです。
ですが、同じ経過を辿らないケースがあることや、パーソナリティ機能の不安定さ(自信のなさ、偏ったものごとの捉え方、人づき合いの苦手さ等)は年齢を重ねても軽快するどころか、むしろ強まっている(固定化している)傾向さえ感じます(年代ごとに同様の傾向を概観した場合そう思います)。
さらに、晩熟化に至るまでには、相当な混乱や疲労が続くことを、多くのケースが物語っているように、「晩熟化まで耐えましょう!」のスローガンは必ずしも適正と言えません。むしろ、それを信じ込んでしまえば、適正な治療やケアのタイミングを逃すことになり兼ねないので、疲労困憊をさらに悪化させてしまう助言にもなり得ます。
大切なことは、「今の生活のつらさ」に焦点を合わせることです。今の生活のなかで「困っていること、苦しんでいること」があるのであれば、その問題と正直に向き合い、その相談に乗ってれる他者(知人や支援者など)を根気強く探すことが、より健全であると私どもは考えます。
パーソナリティ障害支援の専門家の数は、全国的に少ない現状にありますが、力になれってくれる専門家が増えているのも事実です。根気強く、そしてあきらめずに探していれば、「一緒に考えてもらえるかも」「何とかなるかもしれない」と思える支援者(機関)にきっと出会えるはずです。
実際、多くの回復者(ご家族を含む)は、そのような経緯を辿って現在の生活を手に入れています。