「人格障害(パーソナリティ障害)が回復することなんてないかもしれない…」
このように絶望や挫折にも似た考えを持つ当事者たちが実に多くいらっしゃいます。
私どもの施設では、20年以上も人格障害を専門に支援活動を行ってきた結果、多くの当事者たちの社会自立や家族再生の現場に立ち会って参りました。
「なんとしても人格障害から回復させたい!」
そんなご家族や当事者たちの強い願いや希望の声には、「回復させることは可能です」と自信を持ってお伝えしています。
今回は、皆さんの人格障害に対する疑問や悩みを少しでも解消できるよう、どのようにして回復し、変わっていくのかについて、過去の入所利用者を例にご説明していきたいと思います。
入所前のご様子
今回ご紹介するAさん(30代女性、既婚、子供一人)は、医師の診断結果によると人格障害の他にも万引きや摂食障害などを併存していました。※Aさんの個人情報は一部修正しています。
まだ当施設へ入所する以前のAさんは、親に対して激しい憎しみと恨みを抱えていました。
その一方で、そんな感情を抱いてしまう自分を受け入れられず、心の中では常に葛藤が起きているような状態でした。
気が付くと両親に手を上げてしまい、そんな自分を反省するということを繰り返す日々を送っていました。
当時のAさんは、親に暴力を振るうことへの罪悪感から、心の中に言葉にならない感情が溜まってしまい、「自分がどんどん壊れていってしまう感覚だった」と後に語っています。
では、Aさんの家族はどんな様子だったのかというと、父親は家族のいざこざから逃れるために無関心を装うことが多かったそうです。
また、母親はAさんを愚痴のはけ口として利用してしまい、典型的な親子共依存関係(母子密着カプセル化)を作りあげてしまっていたようです。
私どもの見解では、その結果としてAさんに完璧主義と強迫性が特性として身に付いてしまったようにも思われます。
傍から見たAさんは攻撃性の強い人間のようで、心の中には”他者への恨み”や”妬み”、”強い怒り”や”敵意”など負の感情に支配されることが多かったそうです。
ひとたび負の感情が沸き起こると、周囲の物や人間関係を壊すようなことをしてしまい、決まってその後には”孤独”や”強い恐怖心”、”見捨てられ不安”を抱いていたと言います。
次第に、Aさんは本当の自分を見せないように演じることが癖になっていったそうです。
これを専門用語で「偽りの自己」と言いますが、彼女の場合、この偽りの自分が「攻撃性のある人間」だったのです。
自分も他人も信じられなくなったAさんは、そのうちお金や物しか信用できなくなり、それらが少なくなっていくと激しいパニックを起こしたり、暴れたり、周囲を責めるような暴言を吐くこともあったそうです。
これは、お金や物が愛情であるという”歪んだ思い込み”があったためと考えられます。
「現実から逃げたいけど、どうしたら楽になれるのか」
「どうしたら無になれるのか」
こんなことを考えるようになったAさんが選択した対処法は、過食、万引き、自傷行為、家庭内暴力などだったそうです。
徐々にそれらの行動がエスカレートしていった結果、限界を迎えた家族は専門家に相談することを決断されたというのが当施設へ入所するまでのいきさつです。
入所後のご様子
Aさんは初回面接の場面で、
「もうこれ以上自分を責め続けていくわけにはいかない」
「親には世話になったこともたくさんあったし、それを分かっていた」
「私は自分を追いつめて我慢してきたけど、本当は親の笑顔を見たかっただけ」
「もうこれ以上は心も体ももたない」
と、自分の気持ちを正直に、そして涙ながらに訴えてくれました。
入所生活を開始した後も、Aさんは持ち前の激しい攻撃性を周囲にぶつけてしまうような時期もありました。
しかし、そんなAさんを決して誰も𠮟りつけるようなことはせず、スタッフや同期の仲間たちはそんな彼女の話に耳を傾けたり、見守ることを続けました。
周囲の理解の甲斐もあってか、Aさんはとても辛抱強く努力し、様々なことに挑戦しながら長い時間を親と離れて過ごすという体験をしました。
結果的に、Aさんは自分と親との関係性を冷静かつ客観的に振り返ることができるようにまで成長されました。
施設で学んだ経験から、社会自立への一歩として就労訓練を兼ねて会計事務所で働くことになったAさんは、”攻撃性”というエネルギッシュな一面を仕事という適切な場面で発散(昇華)することを習得しました。
また、”強迫的な傾向”を生かし、会計事務という細かなミスが許されない職場で”完璧主義”を存分に発揮し、自分の特性を治すのではなく、活かすことを覚えました。
余談ですが、Aさんの勤める会計事務所では計算の正確さやスピードで彼女の右に出るものはいないと噂されるほどの実力を発揮しているという嬉しい評判も耳にしました。
回復させたいと願う心
このように、人格障害が持つ特性の全てが悪いものという決めつけにも似た概念が、回復を妨げている要因の一つであるとも言えます。
当事者が自分の特性を”活かしたい”という願いを持つことができれば、その真価を発揮できる環境は必ず存在します。
何度挫折しても決して絶望したりはせずに、自分らしく生きていく方法があるということを知り、それを理解してくれる人に出会うことこそが回復のための重要なプロセスなのです。
今現在も同じ悩みを抱え、このブログにたどり着いたという方がもしもいらっしゃいましたら、私どもからひとつのアドバイスを送らせていただきたいと思います。
「あなたが願うなら、活躍できる順番はきっと巡ってきます。理解してくれる人も必ず存在します。自分を信じて前進してみましょう。」
当施設は、人格障害に悩む全ての当事者と家族の未来のために、日々サポートを行っています。
次のような問題でお困りの方も、一度、当施設へお問い合わせいただければ幸いです。
- 子どもから親への家庭内暴力
- 引きこもり(子ども、成人含む)、ニート
- 金銭トラブル
- 各種依存症(ホスト、薬物、アルコール、ゲーム)
- 対人(隣人)トラブルなど
専門施設として「パーソナリティ障害宿泊・心理支援センター」
施設長
佐藤矢市
2000年度に開設以来、本来安心できるはずのご家族において、親も子も安心して暮らすことができないということは本当につらいことでしょう。私たちはそうしたご家族の一助となれるよう、尽力しております。
費用
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初回面談の特典 |
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業務提携しました
心理障害グループホーム「地上のひかり」
施設長
佐藤靖人
2021年度に開設し、この度「JECパーソナリティ障害宿泊・心理支援センター」と業務提携を結びました。
心理障害を抱えた方に向けて、心理ケアやスポーツが盛り込まれた生活を通し、楽しく学びながら成長し、将来への希望が見出せます。
月額利用費を抑えながらも支援の質を落とさず、自立や社会復帰に向けた生活支援を行う居住空間をご用意いたしました。
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- パーソナリティ障害, 人格障害, 境界性パーソナリティ障害