「娘が昨日の出来事を覚えていない」
「家を飛び出したまま連絡が取れない」
親御さんにとって、
これほど不安な出来事はありません。
怒りや戸惑いから疑心暗鬼になり、
「忘れたと嘘をついているだけ」
「ただ現実から逃げているだけ」
と思ってしまうこともあるでしょう。
しかし、こうした症状が
解離性障害に由来するとしたら、
それは本人の意思とは関係なく、
強い精神的負担によって起こる
「解離性健忘」や「解離性遁走」が
関係している場合があります。
JECセンターでも、
そのような正式な診断はなくても、
娘さんの支援を行う中で、
「本人が本当に覚えていない」
という解離状態に接してきました。

「忘れた」のではなく、思い出せなくなっている
「解離性健忘(かいりせいけんぼう)」では、
強いストレスや
心理的ショックなどが原因で、
ある特定の出来事や
一定期間の記憶が
思い出せなくなります。
例えば、
- 激しい親子喧嘩の記憶だけない
- 自傷した経緯を覚えていない
- 警察に保護された理由が分からない
- 数時間(数日間)の記憶がない
といった状態がみられます。
これらは一般的な物忘れとは異なり、
脳の病気では説明できない
記憶の欠落が特徴です。
本人も
「思い出したいのに思い出せない」
と苦しんでいるのも特徴です。

家を飛び出し、新しい生活を始めてしまうこともある
「解離性遁走(かいりせいとんそう)」は、
かなり重めの解離状態です。
自分が誰なのかという感覚が曖昧になり、
突然、家や学校、職場を離れて
別の場所へ行き、
新しい生活を始めてしまう状態です。
ご家族から見ると、
「突然失踪した」
「連絡が取れなくなった」
という出来事になりますが、
本人は混乱したまま
行動していることがあります。
しかしながら、最近の若い世代では
恋人やホスト、SNSの知人を頼って
家を出てしまうケースも多々あり、
これらは解離性遁走とは少し違います。
娘さんの背景、心理状態などを
専門家と注意深く観察したとしても、
症状の見極めは簡単ではありません。

問題行動だけでは見えない「心の限界」
JECセンターで支援してきた娘さんの中にも、
- 暴言を吐いたことを覚えていない
- 自傷した理由を説明できない
- 外出中の記憶が曖昧
- 感情が爆発した後だけ記憶が抜けている
というケースが少なくありませんでした。
このような状態では、
「責任感がない」
「反省していない」
と受け取られがちですが、
実際には心が限界を迎え、
自分を守るために
記憶を切り離している可能性があります。
特に境界性パーソナリティ障害などでは、
激しい感情の高まりとともに
一時的な解離症状が現れることもあり、
表面的な行動だけで判断することは
適切ではありません。

家族ができること
記憶がないと話す娘さんに対し、
「本当は覚えているんでしょう」
「思い出しなさい」
と繰り返し問い詰めても、
解決にはつながりません。
そういった対応ではなく、
むしろ安心できる環境を整え、
本人が落ち着いて生活できることが
回復への第一歩になります。
JECセンターでは、
パーソナリティ障害の支援を続ける中で、
解離性が疑われる娘さんに対しても、
「なぜこんな行動をしたのか」
責めるのではなく、
「その時、心の中で何が起きていたのか」
理解する視点を大切にしてきました。
記憶を失うことも、
突然その場を離れてしまうことも、
本人が望んで起こしてはいません。
その背景に隠されているであろう
苦しさへ目を向けることが、
ご家族にできる最初の支援です。

*JECセンターは、20年以上に及ぶパーソナリティ障害の臨床研究と回復の実績を持つ
元臨床心理士(現:施設顧問)佐藤矢市が考案した“心理休養”に基づいたサポートを提供しています。


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