物に当たる子供

「子供がすぐ”キレて”暴言を吐いたり、物を壊すので困っています…」

 

こうした声は全国のご家庭から数多く寄せられる問い合わせのひとつです。

 

これは単に今どきの子供が”キレやすい”からというだけの問題ではありません。

 

いつの時代においても、子供がキレる原因はちゃんとあるのです。

 

今回は子供がキレて暴言を吐く、暴れる、物を壊すなどしてしまう場合に考えられる2つの理由についてご紹介し、予防や問題解決のお役に立てていただきたいと思います。

 

気持ちを出せない

我慢する子供

1つ目の原因は「子供が自分の気持ちを表に出せない環境」に置かれている場合です。

 

例えば、親が子供に対してルールや習い事などを強いる時、子供は親が怒ったり悲しんだりする様子を見ると、嫌だと思っても「自分の本当の気持ち」を押し殺してしまう傾向にあります。

 

そのような体験を積み重ねて限界を迎えた子供は、ある日突然糸が切れたかのようにストレスが爆発してしまい、暴言を吐いたり、暴れたり、物に当たったりするのです。

 

この場合、子供が自分の気持ちを素直に表に出せるよう、親が次のことを意識してあげれば予防できるでしょう。

  • 親の意見に対して子供が何か言いたそうにしていないか?
  • 何かをさせる前に子供の意見をしっかりと聞いたか?
  • 子供と話すときに感情的にならずに対話できているか?

 

障害の可能性

つらい女性

2つ目の原因として考えられることは、「子供が何らかの障害を抱えている可能性」が考えられる場合です。

 

子供がすぐキレる原因として考えられる障害には、「発達障害」「知的障害」「強度行動障害」「人格障害(パーソナリティ障害)」「間欠爆発症」「適応障害」「気分障害」などがあります。

 

そうしたケースで親がしてあげられることは少なく、治療や問題解決には専門家によるケアが絶対的に必要とされます。

 

仮にそのような子供が何のケアも受けずに成長してしまった場合、力の増した子供の暴力によって家庭内での大きな怪我や事故へと発展してしまうリスクが考えられます。

 

何らかの障害の疑いによって子供の暴力行為が見られる場合は、次にご紹介する3つのポイントを押さえたうえで問題の解決に取り組んでいただければと思います。

 

①一緒には住めない

実家

まず最初に押さえておきたい点として、暴言、暴力を振るっている子供に対して、親は次の行動をとらないように気をつけてください。

  • 子供の暴力を甘んじて受け入れる(耐え忍ぶ)
  • 子供に反撃する(暴力で返す)
  • 子供からの理不尽な注文や命令を承諾する

 

これらはいずれも子供の暴力行為を助長する原因となるため、絶対にやってはいけません。

 

そうなると「いったい親はどうしたらよいのか?」という当然の疑問を持たれると思います。

 

再三申し上げるようですが、障害が原因による暴力行為は親の手に負えるものではありません。

 

従って、そういった子供と”一緒に生活する”のは非常に難しいというのが現実です

 

一緒に住みながら精神科病院などに通院させたり、カウンセリングを受けさせるという選択肢もあるかもしれませんが、そうした治療方法では継続が困難を極め、家族にとって大きな負担となります。

 

②抵抗感を乗り越えて

抵抗を感じる親

そこでもう一つの選択肢として挙げられるのは、「精神科入院」「施設入所」です。

 

しかし、親は「子供がかわいそう…」、「子供に逆恨みされそう…」「責任の放棄になるのでは…」「金銭的に難しい…」などといったことから、子供を入院・入所させることに抵抗感を覚えます。

 

中には、「親と子供が別居するだけなら子供に一人暮らしでもさせればいいのでは?」という意見をお持ちの方もいらっしゃるかと思います。

 

結論から言うと、たとえ子供が一人暮らしを望んでいたとしても、それは単に親が暴力から逃れられるだけで、子供の将来を考えた場合あまり良い結果を産まないでしょう。

 

なぜなら、子供の抱えた問題の”本質”を変えない限りは就職してもすぐにトラブルを起こして辞めることになるか、高確率で引きこもりになってしまうためです。

 

家庭の事情はそれぞれあると思いますが、そういった抵抗感を理由に子供を治療しないということは、子供の未来を潰してしまうことにもつながります。

 

私どものような専門家は、長い臨床経験から「子供の抱えた障害の治療には長い時間がかかる」ということを熟知しているため、「始めるのであれば早い方がいい」と助言しております。

 

実は早い方がよいとすすめするもう一つの理由もあり、それは

 

「実際に入院・入所できるようになるまでにかなりの時間と手間がかかる」

 

ということが予想されるためです。

 

手続きなどもそうですが、子供の症状に合った適切なケアを受けられる病院や施設を見つけることも、なかなか骨が折れる作業なのです。

 

③子供を預けた後は

アドバイスを受ける親

紆余曲折を経て無事に子供を入院・入所させることができた後、「子供を預けている間に親が何かできることはあるでしょうか?」という質問を多くお聞きします。

 

もちろん子供の様子が気になるのは親として当たり前の感情だと思いますが、あまり気にしすぎていても心に毒というものです。

 

そういった場合の心構えとして、私どもは「子供を信じてあげてください」ということをお伝えしています。

 

なぜなら、親の心配は時として子供に不安感を植え付けてしまう原因になりかねません。

 

親が「子供はきっと大丈夫」と信じる姿勢は、子供の心に希望と安心を与えてくれます。

 

もちろん、預け先では専門家たちが責任を持って対応してくれるので、間違いなく症状は段階的に回復へと向かうでしょう。

 

親に”辛抱強く”見守っていただくことで、きっとそう遠くない未来に子供が社会に復帰される日を迎えることができるはずです。

 

最後に…

私どもの施設では主に精神疾患を抱えた子供たちをお預かりしており、様々なケアやカウンセリングなどを通して確実に成長し、本来の自分の姿を取り戻していくご様子を日々傍で見守っています。

 

一方で、その姿を直接見ることのできない親御さんたちに対しては、お電話などで経過をご報告したり、今後のご相談を交えた情報交換などを通し、その成長を実感していただいております。

 

その際に私どもがよくアドバイスとして申し上げることは次のようなものです。

 

親が子供にすべきことは無暗に干渉することではありません。」

 

「成長を応援し、適度な距離感を持って見守っていただくことです。」

 

子供をついつい心配してしまうのが親の性かもしれませんが、子供の本来持っている”たくましさ”というものをぜひこの機会に実感していただければ幸いに思います。