「また、人と揉めたみたいです」

そう話してくださったのは、

30代の娘さんを持つお母さんでした。

娘さんは、決して人付き合いが

苦手な人には見えません。

むしろ、初対面の人とも

すぐに仲良くなります。

気に入った友人には、

とても親身になります。

恋人ができると、

相手のために一生懸命になります。

ところが、しばらくすると、

必ず人間関係のトラブルが起きる。

友人と突然絶縁する。

恋人を激しく責める。

職場の人間関係で揉めて、

仕事を辞める。

そして、そのたびに娘さんは

こう言っていました。

「私ばかり悪者にされる」

お母さんには、

その言葉が理解できませんでした。

「最初は仲が良かったのに」

「どうして最後は喧嘩になるの?」

これが、お母さんの悩みでした。

 

 

「人付き合いが苦手」だけでは説明できない

娘さんには、子どもの頃から

気になるところがありました。

忘れ物が多い。

予定変更が苦手。

相手の言葉を

文字どおり受け取りやすい。

自分の気持ちが強くなると、

相手の気持ちを考える余裕がない。

学生時代にも、

友人関係でトラブルがありました。

当時は、

「少し不器用な子なのかな」

くらいに考えていました。

成人してからも、

仕事そのものはできるのに、

職場の人間関係でつまずく。

恋人ができれば、

相手のことを考えすぎるほど考える。

ところが、相手から少し距離を

置かれただけで、

「嫌われた」

「もう私なんて必要ないんだ」

と強く落ち込む。

その不安が怒りに変わり、

「もう別れる!」

「最低な人間!」

と相手を激しく責める。

そして翌日には、

「やっぱりあの人しかいない」

と戻ろうとする。

こうした繰り返しでした。

このような対人関係の不安定さや、

感情の大きな揺れ、衝動性は、

境界性パーソナリティ障害で

みられる特徴の一つです。

しかし、この娘さんの場合、

それだけではありませんでした。

もともとの発達特性によって、

相手の意図を読み取ることや、

状況に合わせて自分の行動を

調整することにも

苦手さがありました。

つまり、

「発達特性による対人関係のつまずき」

に加えて、

「強い感情を調整する難しさ」

が重なっていたのです。

お母さんは、

ようやく娘さんのこれまでの人生を

違う角度から見ることが

できるようになりました。

 

 

娘だけを変えようと家族も疲れていく

ここで大きな問題となるのは

娘さん本人だけで済まないことです。

娘さんが友人と揉めると、

すぐ母親に電話をしてくる。

「お母さん!聞いてよ!」

何時間も何時間も延々と話を聞く。

そして翌日には、

「もうあの人とは関わらない」

ときっぱり言っていた。

ところが数日後には、

また連絡を取っている。

お母さんは、

そのたびに振り回されました。

娘が泣けば心配になる。

怒っていれば、

刺激しないようにと考える。

娘が相手を責めれば、

「そうだったのね」と

受け止める。

娘が仲直りすれば、

「よかった」と安心する。

そしてまたトラブルが起きる。

いつの間にかお母さん自身が、

娘さんの人間関係に

一喜一憂するようになっていました。

娘さんの問題を解決したい。

その気持ちから、

一生懸命に話を聞いてきた。

しかし気がつけば、

お母さん自身も疲れ切っていたのです。

ここで大切なのは、

「娘さんの人間関係をどう改善するか」

だけではありません。

その問題によって、

「家族がどんな状態になっているのか」

を見ることです。

本人の感情調整や対人関係の

安定化が重要である一方、

家族も問題の影響を受けています。

だからこそ、

本人だけを支援対象にするのではなく、

家族も含めて考える必要があります。

 

 

本人と家族を一緒に立て直す

この娘さんが変わるため、

お母さんに必要だったことは、

「もっと上手に娘に対応する方法」

だけではありませんでした。

お母さん自身が、

「娘の問題を全部背負わなくてもいい」

ということを心から理解する。

娘が怒ったからといって、

その感情を受け止めなければならない。

そんなわけではありません。

娘が誰かと揉めたからといって、

母親が人間関係を解決する必要もない。

そして何より、

「娘の機嫌を取ること」と

「娘を支えること」は違う。

そうしたことを一つずつ

整理していく必要がありました。

JECセンターが、本人だけでなく

家族にも継続して関わることを

大切にしているのは理由があります。

娘さん本人への支援だけでなく、

その問題行動によって

疲弊してきた家族にも介入し、

家族そのものを立て直す。

これは娘さんがどう変わるのか。

そして、その変化を支える家族が

どう変わっていくのか。

その両方を見ながら

立て直していくという、

JECセンター独自の考え方です。

なぜなら本人の回復と家族の回復は、

別々の問題ではないからです。

娘さんが感情調節できるようになっても、

家族が同じ関わり方を続けていれば、

帰ったら以前の関係に戻ってしまう。

反対に家族だけが頑張って対応を

がんばって変えようとしても、

本人の問題が残ったままでは、

家族だけが疲れてしまいます。

だからJECセンターでは、

同時に家族も立て直す。

娘さんが人間関係で

何度もつまずいてきたとしても、

「この子は人付き合いができない」

と決めつける必要はありません。

発達特性があり、

感情を調整することが難しくても、

自分の特徴を理解し、

人との距離の取り方を学び、

自分の感情と向き合う力を

身につけていくことはできます。

そして、そのためには

本人だけを見るのではなく、

その本人と長年向き合ってきた

族にも目を向けること。

それが本人の回復を支えるうえでも

重要な一歩になるのです。

*JECセンターは、20年以上に及ぶパーソナリティ障害の臨床研究と回復の実績を持つ

元臨床心理士(現:施設顧問)佐藤矢市が考案した“心理休養”に基づいたサポートを提供しています。

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