「親子の問題は内々でどうにかしたい」という声は、多くのご家族に共通するご意見です。
その中でも特に多いお悩みとして、「子供が起こす問題行動をやめさせたくても、まったく会話にならない」というものがあります。
会話にならないだけならまだしも、時には説教や暴力などの反撃にあってしまって親が痛い目にあってしまうことさえ確認されています。
「親としての責任」「世間体」「経済的な事情」などもあり、内々でどうにかしたいという気持ちも理解できます。
しかし、親子(家族)だけではどうにもならないという現実を受け入れなければ、事態を進展させることは叶いません。
当施設では、そんな行き詰まった状況にある親子のために、”親子話し合いの場”を提供しています。
今回は、親子話し合いの場とはどういったもので、どんな親子に必要とされるものなのか。
また、利用することでどういったメリットが得られるのかなどについてご説明していきます。
【目次】 |
対話を困難にしてしまう経緯
「異なった考え方」「ちょっとした行き違い」「軽はずみについた嘘」
親子という近しい間柄であっても、ふとしたことから気持ちが離れてしまい、本音で語り合うことが難しくなってしまいます。
普段の親子の対話が少なくても、不都合の無い日常を送れているうちは特に問題とは感じないでしょう。
しかし、対話が少ないということはそれだけお互いの”気持ち”を理解するための機会を損失していることを意味します。
「何を考えているのかわからない」
「なんで急に感情的になるのか」
こうした疑問はコミュニケーションの希薄さから生じ、そこから徐々にわだかまりや溝が深まってしまいます。
例えば、ある日突然子供が学校(仕事)に行かなくなって家に引きこもるようになってしまったとします。
親は当然心配になって子供にどうしたのかと声をかけようとしますが、そこで子供がどう答えてくれるかはこれまでの親子の関係に大きく依存します。
普段ろくに話をしてこなかった場合、そんな時だけ声をかけても子供の心に響くはずもなく、引きこもりの原因や本音を聞き出したりすることはおそらく不可能でしょう。
親子の対話を怠ったり、相手(子供)の気持ちを蔑ろにしてきてしまった(理解しようとしてこなかった)親にとって、”今さら”対話ができるはずがないのです。
しかし、親として子供の将来を憂いてただ状況を静観しているわけにもいきません。
親子が本気で話し合わねばならない時は、このように必ずいつか訪れるのです。
当施設の提供する「親子話し合いの場」は、こうした経緯から対話が難しくなってしまった親子が本音で語り合い、お互いの本心を理解することを助けます。
話し合いの場ではベテランの相談員が立ち合うことで冷静さを取り持ってくれたり、言いにくい気持ちを代弁してくれたりすることで、親子の架け橋となってくれるのです。
得られるメリット
親子話し合いの場では、まず自宅や実家といった日常の環境から一旦離れていただきます。
そして、話し合いの場である当施設では親と子には別々の個室が用意され、一定の距離を置きます。
これはなぜかというと、親子の対話を難しくさせている原因には環境や親子の距離感なども大きく影響していると考えられるためです。
特に暴言や問題行動などで親を責めたりする傾向にある攻撃的な印象を持つ子供ほど、普段の生活環境では孤独や不安、恐怖を感じていることが多かったりします。
一度そうした条件をリセットし、落ち着いたタイミングを見計らいながら数日かけてゆっくりと親子の対話を試みます。
対話の際は専用対話室を利用し、相談員の立ち合いや心理士のカウンセリングなどを交えつつ、親と子の素直な気持ち(本音)を徐々に引き出します。
お互いの本音を目の当たりにすると、今まで感情的になって衝突していた親子にも心の中に気づきや変化が起こり、徐々に相手の気持ち(本心)を理解し始めることができます。
一見仲が良さそうに見える共依存関係(子離れできない親と親離れできない子供の関係)の親子も、実はこういった話し合いができていなかったりするものです。
対話の中で知ることになる「お互いの限界」「何が問題だったのか」「どうして欲しかったのか」といったことを理解できると、今後どうしていけばよいかという解決策へとつながっていきます。
もちろん、親子だけではそういったことに気づきにくいことも考慮し、立ち会ってくれる相談員は第三者視点からその都度指摘してくれたり、解決策を提案してくれたりすることも「親子話し合いの場」ならではのメリットと言えます。
どうして?対話が難しくなる理由
親子のコミュニケーションがうまくいっていない。
そうした理由はご家庭によって様々な事情があるものですが、当施設の過去の臨床記録を読み解いていくと多くの親子に共通する原因がいくつか浮上してきます。
ご参考までに、親子のコミュニケーションを困難にしてしまう理由で最も多かったものについて、ここで二つほどご紹介したいと思います。
【理由その①】
親子のコミュニケーションの妨げになってしまう原因の一つに、普段の話しかけ方の問題があります。
例えば、すぐ感情的になってしまったり、相手を否定するような言い方をしてしまっているようなケースでは、知らずの内に相手に劣等感を植え付けたり、存在を否定されたような印象を与えてしまっているのです。
「なんでこんなこともできないんだ!」
「こんな調子でこれから先やっていけるのか!」
こんな言い方をしてしまった経験がある方は要注意です。
他にも、
「どうせまたやらないんだろう?」
「〇〇しないんだったら、もう知らないぞ」
「お前はいつもこうだ」
といった言い方は説教じみた上からの物言いに捉えられます。
また、自分の気持ちと反対のことばかり言う傾向にあると、相手は命令や強迫をされている印象を受け、拒絶反応を示すようになります。
これらのように、好ましくない会話の積み重ねによって相手は会話する気すら失せてしまうため、コミュニケーションがどんどん希薄になっていってしまうというわけです。
【理由その②】
親または子のどちらか(あるいは両方)に、何らかの精神的な特性(発達特性、精神疾患の気質など)が見られる場合も、親子のコミュニケーションが難しくなってしまうことが考えられます。
精神的な特性を持っているということは、ものの考え方や感じ方などに偏り(または被害妄想など)があるということです。
そのような相手に何気なく”普通”を求めてしまうことは、不快感や多大なストレスを与えてしまうことにつながります。
一般的に、そうした特性は精神科医や心理士とカウンセリングなどを通して明らかになるものであり、身近な家族であっても専門知識を持たない人間には特性への理解や発見は難しいのです。
さらに、特性を持つ本人は社会における対人コミュニケーションのあらゆる場面で常に何らかの不便さを感じ、対話そのものを億劫に思っていることも予想されます。
親にできることは、もしも自分の子供が「ちょっと普通と違う」と感じた経験があるのであれば、早めにどこかで診断を受けてみることをおすすめします。
理解し合う心を
当施設の理念にもあるように、私たちは「相手の心を理解することの大切さ」を常に皆さんにお伝えしています。
相手の心を理解するために必要なことは、普段からのコミュニケーションを欠かさないこと。
しかし、誰しもがコミュニケーションのプロではないため、時々失敗を犯し、相手との間に気まずい空気やわだかまりを生んでしまうこともあるでしょう。
肝心なのは、そうした失敗があったとしても相手を理解しようとする心を持ち続け、自分の本音を伝えるように心がけることです。
親子話し合いの場では、そうしたやり取りが誰にでも可能であるということにも気づいていただけると信じています。
これからも話し合いの場を必要としてくれる全ての親子に「新たな気づき」と「相互理解」の機会を提供し、未来に向けた前向きな解決策を提案し続けて参ります。
※詳しくはこちらのページをご覧ください。
※その他ご質問、各種お問い合わせはこちら