若年層の間で「親ガチャ」という言葉が流行しているという話を耳にしました。
親ガチャとは、子供が「ゲームのガチャガチャのように運しだいで親が決まり、その親のせいで自分の人生が決まる」といったニュアンスで使うそうです。
そして、そのような言葉を使う子供には、潜在的に親への暴言や暴力(家庭内暴力の兆候)が見られる場合があります。
うまくいかないことがあったり、気に入らないことがあると、その責任は全て親にあると言わんばかりに親を責め立てる気質がある場合などは特に要注意と言えます。
実際に、当施設にも関連した問題に悩まれるご家族からのつらい訴えが後を絶ちません。
- 毎日のように子どもに責められ続ける。
- 家で子どもが暴れて手が付けられない。
- ”毒親”だと非難されてしまう。
- 親ガチャは大外れだったと嘆かれる。
このような訴えは統計から見ても年々増加傾向にあることがわかります。
そういったご家庭から話を伺うと、抱えている問題は深刻かつ緊急性の高い場合がほとんどでした。
なぜならば、子供の家庭内暴力や引きこもりといったものはどんどんエスカレートする傾向にあるものだからです。
原因を悠長に探っていたり、世間体を気にして対応に足踏みしていたりすると、取り返しのつかない事態へと発展しかねない大きなリスクがあります。
以降は、私たち専門家からの危機回避のためのアドバイスと思って記事を読み進めていってもらえたらと思います。
一時避難
家庭内暴力に悩まされている場合、まず始めにしてほしいことは原因探しではありません。
子供のことも気がかりだとは思いますが、親自身の身の安全も大事だということを忘れないでください。
そのために知っておいてほしい対処法のひとつに、「一時避難」というものがあります。
これは、暴力を振るっている側(子供)もしくは受けている側(親)のどちらかが住んでいる家から避難し、物理的に距離を置くというものです。
これには「怪我や事故を負ってしまうリスク回避」や、「暴力のエスカレートを一時的に防ぐ」といった目的があります。
もう一つの効果として、その間に行政に相談したり、医者や専門家などと連携を図るなど、時間的猶予を利用して今後の対策を練ることが可能となってくるのです。
本当に手詰まりなのか?
家庭内暴力や引きこもり、ニートといった状態にある子供とは、まともに会話ができないという場合が多いと思います。
そんな子供に対して、親が精神科入院やカウンセリングなどをすすめたところで、聞き流されるか、激高して暴れだすかは目に見えているでしょう。
実際、こうした状況にあるご家庭において、親が子供を説得することは不可能に近いと言えます。
第三者を頼ろうとしても、警察は「親子の問題は家庭内でどうにかしてください。」と言うでしょうし、福祉相談窓口などに問い合わせても、なかなか望んだ支援が受けられないことが多いと思います。
子供のためにどうにかしようと奔走している親御さんほど、こうした現実に直面して打ちのめされてどうしていいかわからなくなっています。
ですが、そんな親御さんたちに希望がないわけではありません。
数こそ少ないですが、このように説得の難しいケースを専門に扱う支援機関はちゃんと存在します。
私どもの施設でも、説得から移送までを生業とする「民間の救急移送サービス(精神科移送)会社」と連携していて、これまでにもそういった子供たちを施設の支援へと結びつけてきた実績があります。
諦めずにそうした専門家を探すことで道が開けるということを知っておいてください。
親ガチャなんて無い
ここまで、緊急性の感じられるご家庭へのアドバイスをいくつかご紹介して参りました。
子供たちが「親ガチャ」なんていう言葉を使い始めたのはここ数年のことですが、その考え方自体はずっと昔からあったように思われます。
自分の不都合は全て親のせいなんていう責任転嫁は、ある意味子供が自身を守るための言い訳にすぎません。
子供たちも、心の奥底では
「このままではいけないと思うけど、どうしていいかわからない…」
「いつまでも親のせいばかりにしてはいられない…」
と、このように無意識に気づいている場合もあります。
そして、いつしか自分の人生は自分でしか変えられないことに気づき、親ガチャなんて考え方の無意味さを理解していくでしょう。
最も、子供がそこに至るまでには長い時間と親との葛藤が待っていることは言うまでもありません。
当施設では、そんな子供たちを預かり、親と子の双方の背景を理解した上で介入し、早期解決に向けたメンタルケアをご提供しています。
親ガチャという言葉は、親からしてみたら皮肉以外の何物でもありません。
ですがそこに腹を立てず、どうして子供がそんなことを言うようになったのかに目を向けてあげてください。
そして、もしもその子供が抱えた心の問題が大きく、ご家族の手に負えそうにないものであると判断された場合、私たち専門家を頼るという選択肢もご検討いただければ幸いです。
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