脅しや恐喝の裏にある「試し行為」

「お金を出さなければ死んでやる」「どうせ私のことなんてどうでもいいんでしょ」

 

そんな脅しや恐喝のような言葉を繰り返す娘に、母親は翻弄され続けます。

これは単なる反抗心ではなく、心理学的に「試し行為」と呼ばれるものです。

 

愛情を確かめたい、親の反応を見たいという未熟な心の叫びが、攻撃的な態度や危険な言動に形を変えて現れるのです。

 

しかし、放置すれば経済的損失だけでなく、家庭崩壊深刻な依存関係を招くリスクが高まります。

 

悪化すると自傷行為や自殺未遂まで…

脅しや恐喝にとどまらず、リストカットやオーバードーズ(大量服薬)、果ては自殺未遂に及ぶケースも少なくありません。

 

厚生労働省の調査でも、若年層の自傷行為は年々増加傾向にあり、背景には家族関係の不和や精神的孤独が指摘されています。

母親が「またか…」と感覚を麻痺させてしまうと、命の危険を見過ごしてしまう恐れがあります。

 

たとえ未遂で終わったとしても、親の反応に味を占めてもっと行動がエスカレートしてしまう可能性が高いため、早急に専門的なサポートを受ける必要があります。

 

親の間違った対応が悪化させる

多くの親は「私が何とかしなければ」という責任感から、お子さんの脅し行為に対応しようと必死になります。

 

しかし、感情的に巻き込まれると、逆にお子さんの思う壺です。

親の慌てふためく様子を見て歪んだ満足感を得てしまうと、問題行動をさらに助長してしまうこともあります。

 

具体例を挙げると、脅しに応じてお金を渡せば依存が強化され、自殺未遂に過剰反応すれば「自分を傷つければ親を支配できる」という学習を生むことになります。

 

こうした一連の流れを察知して、先回りして最善の対応を取る。なんてことは親の能力の限界を超えています。

つまり、親が疲弊しきる前に第三者(専門機関)の介入が欠かせません。

 

安全な距離をとりながら、冷静に状況を整理できる専門機関の支援を受けることが、母親と娘双方の命を守る最善の方法です。

 

専門家に相談する意味

JECセンターには、お子さんからの脅しや恐喝、自傷行為や自殺未遂に悩む親からの相談が全国から寄せられています。

 

センターではお子さんの一時的な受け入れや心理ケアを行い、同時に親への助言や相談も行っています。

家庭だけでは解決できないお子さんの問題行動に対し、専門スタッフが寄り添いながら再発を防ぐ仕組みを整えています。

 

「試し行為」に隠された本当のSOSを読み取り、親子が新しい関係を築けるようサポートするのが、JECセンターの大きな役割です。

 

恐怖や不安を一人で抱え込まず、まずは電話でご相談ください。

 

その一歩が、命と家族を守る大切なきっかけになります。

 

 

*本コラムは、20年以上に及ぶパーソナリティ障害の回復実績を持つ

元臨床心理士(現:施設顧問)佐藤矢市が考案した”心理休養”に基づいています。