皆さん、こんにちは。

当センターを訪れるご家族との面談の中で、「パーソナリティ障害を抱える子ども(または配偶者)に対して、どう接したらよいのか?」という質問は多くいただきます。

その際に、施設長や担当心理士が強調してお伝えすることのひとつに、「優しさや親切だけでは治らない」という点があります。

今回はケアをする立場の人間が、どう接していけばいいのかについて解説して参ります。

逆効果になること

パーソナリティ障害を抱える人の援助を試みる場合、時によっては優しさや親切で接していては相手のためにならないばかりか、逆効果になってしまいます。

多くの場合、余計な混乱を招き、事態は泥沼化していってしまいます。

なぜそうなってしまうのかというと、パーソナリティ障害の方は依存傾向にあり、過度な期待をもち、人の優しさや親切を見つけると、どんどん相手を飲み込んでいきます。

そうなると援助者は耐えきれず、途中で投げ出したり、逃げてしまったりします。

すると、たちまち「見捨てられた傷つけられた」が始まってしまい、事態が悪化してしまいます。

家族の方が接する場合は特に「かわいそうだから、どんなに犠牲を払ってでも救いたい」といった想いとは裏腹に、その感情がマイナスに働いてしまうことがほとんどです。

温かい目で見守りつつも、あくまで本人の責任と主体性を大切にする冷静さが必要です。

本人を面倒ごとからかばったり、代わりに引き受けてしまうのは、本当の意味での援助にはなりません。

それもわが子の人生

あるギャンブル依存の20代男性(回避性パーソナリティ障害)の方は、多額の借金を繰り返しては、最終的にそのツケを毎回母親に対応させていました。

こういったケースでは、母親が息子に対して無意識の「申し訳なさ」や「かわいそうな想い」を持っていることがあります。

しかし、息子さんの人生を長い目で見るならば、酷ではありますが、本人に借金の対応をさせ、責任を取らせることこそが効果的なのです。

本人に対応させた結果、もしかしたら何らかのトラブルに巻き込まれてしまうこともあるかもしれません。

仮にそうなったとしても、「それもわが子の人生」と割り切って、親として腹をくくることが重要です。

そのような「親としての覚悟」を子どもが感じた時に、初めて子どもは自分自身と向き合うことを知り、主体性を持って自分の足で人生を歩んでいけるのです。

長い目でみてください

最後に、もう一つ忘れてはいけないことに、パーソナリティ障害のケアにはとても長い時間と労力を要します。

特に、子どもが成人していたり、30代、40代、50代と、パーソナリティ特性が固まってしまっているケースではさらに長い時間が必要になる傾向があります。

目先の状況に一喜一憂しすぎると、すぐに疲れてしまい、長丁場に耐えられなくなってしまいます。

熱し過ぎず、冷めすぎず、結果を急がずにかかわることが、パーソナリティ障害者と接する上での一番の基本となります。