皆さん、こんにちは。
シリーズブログの第二部「同じ悩みを持つ母親たちがここにいる~There’re mothers just like you~」10回目になります。
今回は、過去に当センターを利用していた境界性パーソナリティ障害を抱えた娘さんの母親からいただいたお手紙をご紹介したいと思います。
※同意をいただいていますが、特定を防ぐために一部修正しています。
センターでの経過
A子さん(娘さん)は入所当時、口を開けば母親への恨みつらみを延々と語り、涙を流しながら訴え続けるということを幾度となく繰り返していました。
その母親に対する激しい攻撃性と暴力性は、時には自身へと向かうこともあり、腕には数々の自傷行為による傷跡が残っていました。
当然、母親は娘であるA子さんを腫れ物でもさわるような扱いで自身から遠ざけ、怯えるように毎日を過ごし、疲弊しきっているといった印象でした。
ですがA子さんは、センターの中で一歩先を進んでいる先輩研修生たちと触れ合い、様々なヒントや話を伺いながら、少しずつ「母親という存在の捉え方」についての認識を改め、落ち着きを取り戻していきました。
そして8ヶ月という期間を過ごし、センターを卒業されました。
母親からの手紙
『8か月間、娘を預かっていただき本当にありがとうございました。
センター修了後の一週間、娘と暮らして、やっと穏やかな暮らしを体験しています。
娘にとって、センターでの生活は自分をじっくりと見つめ直せた期間になったんだと思います。
生活態度を見ていると、とっても変わったなと思う点がいくつもあります。
まず、親に対しての批判がありません。いつも穏やかに接しています。
謙虚さも出てきました。異常な甘えもなく普通です。
主人が帰宅すると、「おかえり」とやさしく言えるようになりました。
一緒にテレビを見ることが夜の日課のようになりました。
以前でしたら批判的な言葉や暴力がありましたが、昔のことが嘘だったように今はまったく何もありません。
やはり娘にとって、「自分を変える!」と思えたことが一番の解決だったんだと思います。
恥ずかしながら母親としての私は、娘が自分の力で何かを成し遂げるという力を信じてあげることができなかったんだと今になって思います。
センターの皆様の愛情で、今回新たな成長ができたと感じております。
私たちにとって、親亡き後の心配が少しずつ消えていく感じで、とてもうれしいです。本当に感謝しています。
見渡してみると、パーソナリティ障害という問題で苦しみ、40歳になっても未だに親への批判、他人への攻撃が収まらず、すさまじい人生を送っている人は本当にたくさんいると思います。
センターのような場所に巡り合えたことは本当に奇跡だったと思っています。
病院を探し回って転々として、入院を断固として拒否され続けたことも、今は懐かしく思います。
我が娘に対して、センターの施設長をはじめ、スタッフの皆さんの努力、応援、暖かいまなざしを感じました。
本当に熱い情熱に感謝いたします。
親子の心理的距離を保つ
ご紹介したお手紙にもつづられていたように、研修生たちの多くは入所期間中にある程度症状が落ち着いてくる時期(3ヵ月ほど経過した頃)が訪れますが、これを「安定期」と呼んでいます。
当センターでは、その頃を見計らって定期的にご実家に帰ってみることを提案しています。
どれくらい親との距離感が保てるようになったかを実際に体験していただくためです。
まだ親に対する恨みやつらみが整理・浄化しきれていないと、帰宅後にすぐ以前のような状態に戻ってしまい、親を困らせたり振り回したり甘えた行動が出てしまいますが、これは決して失敗などではなく、「自分にはまだまだ気持ちの整理や浄化が必要なんだな」と、捉え直す作業なのです。
これを繰り返していくと、ご紹介したお手紙にもあったような「親と一緒でも穏やかな日常が送れる」までに回復されていくのです。