皆さん、こんにちは。
パーソナリティ障害について調べたことがある方なら一度は耳にしたことがあるかと思いますが、昔からパーソナリティ障害は❝治らない病気❞として語られてきました。
しかし、この表現には誤解があり、これは当時の精神科治療(主に薬物を用いたものが中心)では功を奏さなかったボーダーライン(境界性パーソナリティ障害)の治療の難しさから広まってしまった話です。
実際にエビデンス(根拠)となる研究結果もあり、例えばM・ザナリーニらの研究では、ボーダーライン(境界性パーソナリティ障害)の患者が診断基準を満たさなくなった(症状が緩和された)という追跡データがあります。
その研究によれば、2年経過で35%、4年経過で50%、6年経過で65%といったペースで「寛解(かんかい)」が確認されているそうです。
※M・ザナリーニらの研究の詳細はこちら
寛解から社会的治癒に至るまで
各種パーソナリティ障害にはそれぞれの回復プロセスというものがいくつか存在します。
ボーダーライン(境界性パーソナリティ障害)を例に説明させていただきますと、以下のような複数のステップを踏んで回復していくという道のりが見えてきます。
・ステップ1 「寛解」
・ステップ2 「社会的治癒」
・ステップ3 「完全な回復」
あくまでひとつの例ですが、このような段階があるとされています。
ところで先ほどからあまり聞きなれない「寛解(かんかい)」という言葉を使っていますが、
「寛解」とは、
完全なる回復ではないものの、特徴的な症状群が減ったことにより診断基準を満たさなくなり、生活に落ち着きが生まれて来るような状態を表す医学的概念のことを言います。
「寛解」は、加齢による自然治癒(おおよそ30代半ば~40代前半くらいで生じる自然的な回復)もあれば、適切な社会的サポート資源(専門家や、親身に話を聴いてくれる支援者)を活用して症状の改善がみられるケースなどがあります。
具体的には、以下のような症状のある患者の寛解が確認されています。
・自殺行為
・自傷行為
・精神病様の思考(幻覚、妄想、易被刺激性など)
社会的治癒とは?
社会的治癒とはどんな状態のことを言うのか?
それは、社会的にみても(社会保険制度上からも)、寛解からさらに回復が進んで生活能力の向上がみられるような状態を指します。
わかりやすく言い換えるなら、症状の緩和(寛解)に加えて、私生活(または就労生活)が行えるようになった状態のことです。
このような時期に入ると、ご自身でも症状をコントロールできているという感覚が実感でき、プライベートを楽しんだり、自分なりの社会活動を広げていったりと、闘病中にはおよそできなかったであろうことが、たくさん実現できるようになっています。
社会的治癒の状態を数ヵ月から数年単位で維持できるようになってくると、最終ステップである「完全な回復」が見えてきます。
「完全な」とは、
具体的には「社会的治癒を維持しながら、医療や心理療法などのサポートを必要としなくても、自分らしい社会的生活を送ることができる」ような状態を指しています。
そして、この時期にさしかかると、多くの人は自身の過去の闘病体験を冷静に振り返ることができたり、不調が始まる前兆を察知したり、対策を講じることもできるようになっています。
中には、闘病の体験談を同じ苦しみを抱えて生きている人の役に立てたい、助けになりたいと、「当事者会」に参加してくれてたり、自らが支援者となって活躍されている方もいらっしゃいます。
まとめになりますが、パーソナリティ障害は治らない病気などではなく、様々なステップを経て時間をかけて回復していくものです。
少なくとも、我々のような専門家や支援者は、数多くの患者さんやその家族と共に長い時間を闘い、回復されていった姿を何度も目の当たりにしています。
「ご自身、またはご家族の回復のために何ができるのか?」を一緒に考え、サポートしていくのが我々専門家(支援者)であり、JECパーソナリティ障害支援センターです。
悩んでいたり、苦しんでいるのであれば、どうか一度ご相談ください。