皆さん、こんにちは。
シリーズブログの第一部「小さな気づきで全てが変わる~Small changes make
a big difference」10回目になります。
今回は、数年前にある卒業生から届いた一通の手紙をご紹介して参ります。
手紙の主は、12年以上も前に当センターに研修生としてやってきた境界性パーソナリティ障害(ボーダーライン)を抱えた女性(当時20代前半)です。
境界性パーソナリティ障害と戦った女性
彼女はODやリストカットなどの自傷行為の常習犯で、当センターに辿り着くまでに幾度となく入退院を繰り返していました。
その原因の多くが異性との関係の破たんによるもので、抑えきれなくなった感情によって様々な自傷行為に走っていました。
家族が住む実家に戻ってきては母親へ一方的に怒りをぶつけて、「自分がこんな人生を歩まなければいけなくなったのはお前たちのせいだ!何とかしろ!」と、全ての原因を親に押し付けていました。
当センターで彼女をお預かりした当初は、境界性パーソナリティ障害特有の「見捨てられ不安」や「激しい衝動性」が顕著に表れていました。
そんな彼女が本当の意味で安心し、落ち着いて生活できるようになったのは入所してから実に半年が経過した頃でした。
それまでは矢市先生を含めたスタッフ一同が、本気で彼女と向き合い、幾度となくじっくりと話し合いましたが、彼女に裏切られてしまうことも多々ありました。
それでも私たちは疑うことなく彼女の力を信じ続けたことが、結果的に彼女の「安心感」につながったのだと信じています。
そんな懐かしい彼女からの手紙の内容を一部ご紹介します。
卒業生からの手紙
『お元気ですか。寒い日と暖かい日が交互にやってきて大変ですね。
センターでは今どんなお花が咲いているんでしょう?センターの裏山の緑がとても恋しく感じる今日この頃です。
あれだけ一人でいることが耐えられなかった私ですが、独り暮らしにもだいぶ慣れてきて、元気に過ごしています。
数か月前から、一応社員として小さな文房具店で働かせてもらっています。
キャバクラや風俗時代の給料に比べればたいしたことはありませんが、接客していてお客様との会話が弾むと、とても嬉しいです。
幸せって、こんなに小さく些細なものだったなんて今までは気づきもしませんでした。
なんだか毎日、自分の能力の限界を超えて頑張っている気がして正直この先不安です(笑)。もつかな~?
正社員として働き始めた頃は職場環境とシフトに不満があって、辞めちゃおうかな~と思った時もありましたけど、矢市先生の『あなたの人生はあなたが決めるんだよ』という言葉を思い出して“もう少しだけ続けてみよう”と決断することができて、気づいたら今に至っています。
女性の店長さんがとても信頼・尊敬できる人で、辞めなくてよかったと思っています。昔だったらすぐに辞めてましたけどね。へへ。
男性じゃなくて、女性の友達もできましたよ。また今度遊びに行きます!』
彼女からもらった希望
以上が送られてきた手紙内容の一部です。
実は他にも嬉しい報告があり、彼女はその手紙が送られてきた年内に晴れて入籍なさったそうです。
当センターに入所していた当時は、彼女のすごいパワーにこちら側が押し切られそうになったこともありましたし、こちらのことを信用してもらえない時期は、何度も自傷行為を繰り返していました。
今となって思うことは、それだけの精神的エネルギーを持っていたということなのかもしれません。
パーソナリティ障害者は、「安心感」や「信頼感」を抱くことさえできたなら、彼らがもともと持っている大きな精神的エネルギーを適切な方向へと費やすことが可能になります。
そうして初めて、彼らは「自分らしい人生」を歩み出すことができるようになるのだと思います。
私たちは、そんな彼らを見守ってあげられるように、これからも日々サポートをして参ります。
- 投稿タグ
- パーソナリティ障害, ボーダーライン, 人格障害, 体験者の言葉, 境界性パーソナリティ障害