「また、こんなに使ってしまった……」
そう言って後悔する娘さん。
「もう二度と使わない」と
反省するのですが、
しばらくすると、
また同じことを繰り返してしまう。
ゲームへの課金。
ネット通販での衝動買い。
欲しいと思ったものを、
その場の勢いで購入してしまう。
しかも本人には、
安定した収入がありません。
それでも数万円、
時には十数万円のお金を
使ってしまう。
「お金がないのにどうして使うの?」
親御さんからすると、
理解しにくい行動です。
しかし、こうした行動の背景には、
単なる「浪費癖」や「親のお金だから」
という一言では片付けられない
問題が隠れていることがあります。

わかっているのに使ってしまう娘
ある20代の娘さんは、
仕事が長続きせず、
安定した収入がありませんでした。
買い物やゲーム課金などに使うお金は、
基本的に親御さんのカードに
頼っていました。
ところが、
欲しいものが目に入ると、
その場の気持ちを抑えられない。
「これが欲しい」
と思うと、
後のことを考える前に
購入してしまう。
数万円使ってしまうことも、
決して珍しくありませんでした。
使った後には、
「またやってしまった」
「お母さんに申し訳ない」
「こんなことをしてはいけない」
と自分を責めます。
本人も、
自分の行動が問題であることは
分かっていました。
だからこそ親御さんも悩みます。
「本人も反省している」
「悪いと思っているのは分かる」
だから、強く責めることもできない。
けれど、また繰り返される。
そして娘さん自身も、
「分かっているけどやめられない」
「でも自分のお金もない」
「どうしたらいいか分からない」
という状態でした。
ここには本人の意思の弱さだけでは
説明できないものがあります。
その瞬間の欲求を抑えること。
先のことを考えて行動すること。
お金を計画的に管理すること。
こうしたことが苦手であれば、
「使わないようにしなさい」
と注意するだけでは、
なかなか行動は変わりません。

娘だけでなく、家族も立て直す必要がある
このケースでは、
親御さんは娘さんを注意しながら、
しばらく見守っていました。
しかし「本人が反省すれば変わる」
という状態ではありませんでした。
反省する。また使う。
注意される。後悔する。
そして、また繰り返す。
この循環から、
なかなか抜け出せなかったのです。
そこで娘さんは、JECセンターで
生活を立て直すことになりました。
私たちが彼女にしていたことは、
単にお金を使わないようにする
という指導ではありません。
基本的な生活を整えながら、
心理検査や発達特性検査を通して、
まず本人が自分自身の特性を
理解することから始めました。
「どうして自分はこうなるのか」
その理由を知ることは、
自分の苦手な部分を知り、
特性との付き合い方を学ぶこと。
そしてJECセンターでは、
娘さん本人だけでなく、
親御さんとも継続して
話し合いを重ねました。
ここがJECセンターの大きな特徴です。
一般的に多いのが、
本人だけへの支援です。
家族側への支援はと言うと、
別々に考えられることが少なくありません。
その理由は、本人が支援を受けている間、
家族そのものに継続的に介入することが
難しいという事情があります。
しかしJECセンターでは、
本人だけを支援して終わりにしません。
娘さんを取り巻いてきた家族の状態や、
これまでの親子関係、
親御さん自身の対応についても、
一緒に考えていきます。
これはJECセンターが大切にしている
独自の支援方法です。
なぜなら本人の回復には、
本人だけを変えるのではなく、
家族も立て直すことが
非常に重要だからです。
娘さんが困れば、また親が支える。
もしもまたそうなれば、
以前の状態に戻ってしまうでしょう。
だからJECでは、
本人と家族を切り離して考えません。

浪費をなくすだけが回復ではない
JECでの生活を通して、
娘さんは少しずつ
自分自身の特性を理解し、
「自分にはこういうところがある」
と考えられるようになりました。
そして次のステップとして、
アルバイトにも挑戦しました。
自分で働いて自分でお金を得る。
そして、そのお金で生活する。
これは単に
「浪費をやめる」ためだけの
取り組みではありません。
自分のお金を自分で管理する経験を通して、
「働くこと」
「お金を使うこと」
「これからの生活」
を考える機会になっていったのです。
もちろん浪費が完全になくなった
というわけではありません。
まだ時折、衝動的に使うこともあります。
しかし使ってしまったら終わりではなく、
これは本当に必要なのかと一度考える。
使い方をセーブする。
働いて得たお金だから大切に使う。
そうした感覚が、
以前より身についていきました。
そして親御さんが負担していた
経済的な負担も大きく減りました。
退所後は、
娘さんはグループホームへ移り、
親に依存しすぎない
新しい生活が始まりました。
そして現在も、
その生活は1年以上続いています。
親御さんのもとへ戻ることなく、
彼女はがんばっています。
娘さんの問題行動だけを
なくそうとするのではなく、
本人が自分自身を理解する。
生活を立て直す。
働く経験をする。
お金を管理する経験をする。
そして、家族との関係も
見直していく。
こうした積み重ねが、
自立につながっていきました。
JECセンターが考える
「家族も立て直す」とは、
娘さんの回復とともに、
長い間娘さんの問題行動に苦しんできた
親御さん自身も立て直していく。
その両方を支援することです。

*JECセンターは、20年以上に及ぶパーソナリティ障害の臨床研究と回復の実績を持つ
元臨床心理士(現:施設顧問)佐藤矢市が考案した“心理休養”に基づいたサポートを提供しています。


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