「急に『自分じゃない』と言い始めた」
「鏡を見ても自分だと思えない」
「現実なのに夢の中にいるようだと言う」
このような言葉を聞き、
ご家族が戸惑うことがあります。
一見すると理解しにくい症状ですが、
それは決して本人の気のせいでも、
ましてや演技でもありません。
離人症とは、解離症状のひとつです。
強いストレスや心の負担が続いた結果、
自分自身を守ろうとする
脳の働きと考えられています。
特に解離症状は、幼少期からの
慢性的なストレスや心の傷と
関連することが多いとされています。
JECセンターもこれまで
数多くのケースを支援した経験から、
正式に診断されていなくても、
パーソナリティ障害の背景に
解離状態がみられる娘さんが
少なくありませんでした。

「自分が自分ではない」と感じる離人症
離人症とは、
自分自身とのつながりが
薄れたように感じる状態です。
例えば、
- 自分を外から眺めているような感覚になる
- 鏡の中の自分が他人のように感じる
- 感情がなくなったように感じる
- 周囲が映画や夢の世界のように見える
- 体が自分のものではないように感じる
このような体験をします。
重要なのは、
多くの場合、本人は
「この感覚はおかしい」
と、理解していることです。
統合失調症のように
現実との区別が
失われているわけではなく、
「変だと分かっているのに元に戻れない」
という苦しさを抱えています。

娘さんは「逃げている」のではなく耐えている
親御さんから見ると、
「ぼーっとしている」
「話が頭に入っていない」
「感情がないように見える」
そんな姿に映ることがあります。
しかし本人の心の中では、
処理しきれない苦しさが
続いていることがあります。
人は強い恐怖や
精神的負担を受け続けると、
それ以上傷つかないように
感情や現実感を
切り離してしまうことがあります。
これは意志によるものではなく、
防衛反応の一つと考えられています。
そのため、
「しっかりしなさい」
「気の持ちようだよ」
という励ましは的外れになり、
本人に届くことはありません。

パーソナリティ障害の背景に隠れていることも
JECセンターで支援してきた娘さんの中には、
- 感情の起伏が激しい
- 人間関係が極端になりやすい
- 自傷を繰り返す
- ホストや恋愛依存から抜け出せない
- 家族への暴言や家庭内暴力がある
このような問題の背景に、
離人症状を含む解離状態が
確認されたケースもありました。
正式な診断名が付いていなくても、
「つらい場面で記憶が曖昧になる」
「感情が急に消える」
「自分が自分ではなくなる」
という状態を繰り返している娘さんは
決して珍しくありません。
だからこそ、
表面の問題行動だけを見るのではなく、
「心の中で何が起きているのか」
という視点が、
回復への第一歩になります。

安心できる環境で現実感を取り戻していく
離人症を含む解離症状は、
「頑張れば治る」ものではありません。
安心できる人間関係や
生活環境を整えながら、
少しずつ心の安全基地をつくることが
大切だと考えられています。
現在も医療の分野では、
安心できる環境づくりと
信頼関係の構築が基本とされています。
JECセンターでもこれまでに
パーソナリティ障害の支援を続ける中で、
解離状態を抱える娘さんを
数多くケアしてきました。
その経験から学んだことは、
「治癒する」という発想ではありません。
安心して生活できる環境の中で、
自分自身を少しずつ取り戻していくこと。
そして、ご家族も症状を理解し、
「なぜこんな行動をするのか」
ではなく、
「どれほど苦しい状態なのか」
という視点を持つことが、
回復を支える大きな力になります。
離人症は、本人にも周囲にも
非常に理解されにくい症状です。
しかし、その奥には
「生き延びるための防衛反応」が
隠れていることを知っておいてください。
次回は、「解離性同一性障害」について、
実際の家族支援の視点も交えながら解説します。

*JECセンターは、20年以上に及ぶパーソナリティ障害の臨床研究と回復の実績を持つ
元臨床心理士(現:施設顧問)佐藤矢市が考案した“心理休養”に基づいたサポートを提供しています。


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