「娘の浪費癖を注意したら、逆ギレされて手が付けられません…」
人格障害を専門に支援活動を行っている当施設へ、このような悩みを持った母親から娘さんの施設入所を希望する問い合わせのお電話がありました。
現代日本においても、母親というものは家族(主に子供)に大半の時間と労力を費やしていることが多いものですが、そんな母親の苦労も知らず、子供は嫌悪や反抗的な態度をとってしまいがちです。
全てのご家庭の親子関係に当てはまるわけではありませんが、こうした子供の態度の背景には家族の関係性そのものに問題があったり、子供に精神疾患の可能性があることなどが疑われます。
例えば、子供が人格障害(パーソナリティ障害)や発達障害といった精神疾患であったりすると、成人以降も家庭内暴力や引きこもりなどを続けてしまうことがあり、事態は深刻です。
また、母子間の共依存関係が大きく影響し、子供が依存症体質になってしまうこともあります。
今回は、過去に当施設が心理支援を行っていた共依存関係の母親と娘を例に、親を嫌うようになっていった子供から見えてくる様々な可能性についてご紹介していきます。
人格障害と共依存関係
日本の家庭は、昔から共依存関係になりやすい傾向にあると言われています。
実際に共依存関係にある家族は、ほとんどの場合その関係性に対して自覚がなく(そもそも共依存という言葉を聞いたことがない)、第三者に指摘された時、初めてその可能性について考えを巡らせます。
ここからは共依存状態にあった母子のモデルケースが、どんな家族関係だったのかについて見ていきましょう。
今回ご紹介する家族の関係性は次の通りです。
- お母さんが世話焼き人
- お父さんが家庭に無関心
- 娘が依存症
1,まず、このご家族のお母さんは、
「自分がしっかり家族の面倒をみてあげないといけない」
といった考えを持った”責任感の強い母親”でした。
特に娘に対しては、やりすぎるくらい一生懸命に世話を焼くという日々を送っていたそうです。
そんなお母さんを当施設の心理士が分析してみた結果、意外なことがわかりました。
最初の頃、お母さんは「愛情から世話焼きをしていた」つもりでした。
しかし、いつの頃からか本人も気づかないような心の変化が起きており、「子どもを支えること自体が義務感」になっていました。
この時、お母さんの頭の中では
- 私がいないと娘は生きていけない
- 娘には私しかいない
- 娘は私を必要としている
といった思い込みで頭がいっぱいになっていたそうです。
2,一方で、本来誰よりも”家族の理解者”であって欲しいお父さんは、残念なことにあまり家族に関心がありませんでした。
仕事のこと以外はあまり考えたくないのか、娘さんやお母さんに対して口を出すことはおろか、見向きもしていなかったそうです(非協力的)。
労ってくれたり、何かを手伝ってくれるということもなく、たったひとり家事や娘の世話に勤しむお母さんに任せっきりという状態でした。
これも”共依存関係”になってしまう立派な要因の一つであると言えます。
お父さんが家庭に参加してくれないことで、お母さんの頑張りすぎにブレーキをかけてくれる人がいないのです。
3,娘は、生活していくために必要な身の回りのほとんどを母親に代行してもらっているため、自分の好きなことや、興味のあることだけに時間を費やす日々を過ごしていました。
自堕落な生活が続き、寝食がおろそかになったり、昼夜逆転になったり、わがままな引きこもり状態になるまで家族は何の対策もしてこなかったそうです。
子供がここまでになってしまう原因には、もちろん家族の共依存関係の影響が強いと考えられます。
しかし、他の要因として人格障害(パーソナリティ障害)などの精神疾患を持っている可能性が浮上してきます。
もしも娘さんが人格障害などであった場合、成人以降もずっと実家に引きこもり続け、就職も結婚もしないという不安な将来が大いに予想されます。
もちろん、そんな娘さんの口から身の回りの世話をしてくれるお母さんに対して「ありがとう」の言葉などあるはずがありません。
それどころか、気に入らないことやイライラがあると、暴言や暴力で何かを訴えてくるようになるでしょう。
なぜなら、お母さんがしてくれていることは全て「当たり前のこと」だと思っているからです。
そして、人格障害に特有の被害意識(被害妄想)などから親を忌み嫌い、何もかもの責任は勝手にやっている親にあるという思い違いをしていることも考えられます。
心理支援の力を借りて
では、どうしたらこのような家族関係から抜け出すことができるのでしょうか?
一番てっとり早いのは、お父さんがもっと家庭に関心と理解を持って積極的に介入してくれることですが、これは家庭事情(母子家庭であるなど)により難しい場合もあります。
そのため、まずは誰にも理解してもらえない状況の中でひとり頑張るお母さんの”苦労を認め、労ってくれる環境(理解者)”を見つけることから始めてみてください。
なぜなら、こうしたご家族は親も子も心身ともに疲れ切ってしまっていることが多く、関係性の修復や病気のケアを行う前に、まずは心の立て直しを第一優先に考えていただく必要があるためです。
心の回復には専門家(精神科医や心理士)による心理ケア(メンタルケア)や心理検査のような”心理支援”といった資源が必要とされます。
例えば、心理カウンセリングではお母さんの苦労を”お母さん側の視点”に立って気持ちを理解し、話を受け止めてもらえます。
娘さんに対しても、
「お母さんに望んでいたものはなんだったのか」
「自分の本当の気持ちはなんだったのか」
といった、本人も気づけていないような深層心理の気持ち(本心)を一緒に探していくことができます。
当施設でも対応しています
当施設には、人格障害の悩みを抱えるご家族からのお問い合わせが日頃から寄せられています。
その多くが、
「誰にも理解されない苦しさ」
「いたたまれない気持ち」
「孤独な状況に耐え忍んでいる」
といったものばかりです。
開設当初より心理士を常駐させ、心理支援を中心に家族のケアを行ってきたのは、こうしたご家族の心の叫びに耳を傾ける必要があったからです。
実際に心理士や家族相談員と電話などで相談を行ってきた親御さんからは、
「話を聞いてもらって、久しぶりに晴れやかな気持ちになれた。」
「母としての新たな歩み方や、別の価値観や考え方があることに気づけた。」
といったうれしい声もたくさんいただいています。
一方で、人格障害など精神疾患の可能性があると考えられる子供は、いったん当施設でお預かりして直接的な心理支援を受けていただきます。
一定期間の施設入所の中で、心理カウンセリング、自由参加の集団セラピー、自分のことは自分でやってみる自立した毎日を送り、社会復帰や家族との和解などを目指して努力を続けます。
将来的には、家族の希望する形に納まることができるよう、私どもは「個別サポート」をモットーに支援させていただきます。
当施設では過去にも共依存関係にあるご家族の回復サポートの実績が豊富にあり、そのノウハウを活かしたアドバイスなどもさせていただいています。
気持ちを十分にわかってもらえるということは、心にほんの少しのゆとりをもたらし、それが他の行動や活動にも目が向く”きっかけ”へとつながります。
それは結果として、共依存関係にあったお母さんがこれまで費やしてきた時間や労力を”自分自身や他のことに割く”といったことを可能にしてくれます。
すると不思議なことに、お母さんの変化は娘さん(子供)にも連鎖するかのような化学反応を起こしてくれます。
これまでの必死の世話焼きが減ったことにより、徐々に子供が”自分のことをやろう”とする態度が生まれてくるのです。
※精神疾患が関わる場合は少し話が変わります。
最初のうちは、当たり前のように受けていた世話焼きがなくなることに、不満をぶつけたり、暴れたり、抵抗を見せたりもします。
それでも、「今のままではだめだ」とうすうす感じていた子供は、その気持ちからお母さんの変化を受け入れ、自らの力で生きていこうとするのです(社会自立への意識)。
家族だけで悩まないで
今回は、共依存関係や人格障害などが原因と考えられる母親と娘を、どのように心理支援していくのかについてもご紹介してみました。
しかし、世の中には他にも色々な事情や病気などが原因で家族関係が悪化してしまい、収集がつかなくなってしまっているケースが数多く存在します。
当施設は、何よりも「当事者のつらい気持ち」を理解し、寄り添うことによって、ご家族の心理支援を成し遂げることができると信じています。
全ての責任を抱え、ようとして他の誰かに頼ることを良しとしなかったり、金銭的な面で支援を受けることをためらってしまうようなご家族が多くいらっしゃることも認知しております。
しかし、精神疾患(特に人格障害や発達障害など)などが疑われる場合、ご家族の手で問題を解決できたという事例はほとんど確認されていません。
それどころか事件や事故に発展してしまい、ニュースなどで取りだたされているようなこともあります。
私どものような専門家の存在意義は、そのような最悪の結果になる前に、ご家族に支援の手を差し伸べるためにあると考えています。
専門施設として「パーソナリティ障害宿泊・心理支援センター」
施設長
佐藤矢市
2000年度に開設以来、本来安心できるはずのご家族において、親も子も安心して暮らすことができないということは本当につらいことでしょう。私たちはそうしたご家族の一助となれるよう、尽力しております。
費用
初回面談 施設見学 |
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初回面談の特典 |
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宿泊料金 | 支援ニーズにより異なります。まずはお問合せください |
※詳しくは下記URLよりアクセスください。
心理障害グループホーム「地上のひかり」
施設長
佐藤靖人
2021年度に開設し、この度「JECパーソナリティ障害宿泊・心理支援センター」と業務提携を結びました。
心理障害を抱えた方に向けて、心理ケアやスポーツが盛り込まれた生活を通し、楽しく学びながら成長し、将来への希望が見出せます。
月額利用費を抑えながらも支援の質を落とさず、自立や社会復帰に向けた生活支援を行う居住空間をご用意いたしました。
費用
初回面談 施設見学 |
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月額料金 |
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心理障害レベル |
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※詳しくは下記URLよりアクセスください。