皆さん、こんにちは。
シリーズブログ「家庭内暴力からの成功例」は、当施設のこれまでの解決実績を元に、子どもの深層心理を知ることによって見えてくる、真の原因や対処方法などについてご紹介していくものです。
家庭内暴力に苦しんでいるご家族に、少しでも希望を持っていただけるような情報を提供して参ります。
今回で7回目になるシリーズブログもいよいよ最終回となります。
最後のテーマは「家庭内暴力への対応」と題し、一般的な対応方針と、当施設の臨床経験を踏まえて詳しくご紹介したいと思います。
やってはいけないこと
子どもの家庭内暴力に対する基本対応に触れる前に、必ず知っておいて欲しい「やってはいけない対応方法」を2つご紹介します。
それは「我慢すること」と「対決すること」です。
- 我慢するとは
暴力を甘んじて受け入れてしまう危険な行為のことを指します。
「暴力を黙って受け入れ、耐え忍んでいればそのうち収まるだろう…」
「子どもが暴力を振るうのは、それだけのことを私(親)がしてきたから仕方ない…」
といった理由から受け入れてしまう方がいるようです。
この行為は結果的に暴力を助長し、長期化させる要因になるためおすすめできません。
- 対決するとは
暴力には暴力でと言わんばかりに力づくでねじ伏せることです。
こんなことがまかり通るのは、子どもが小さく、親がまだ若く力があるうちだけです。
この行為は、子どもの恨みや憎しみを買ってしまいます。
時が経てば力関係は必ず逆転し、報復を受けることになりかねません。
初期の対応
発達障害や精神疾患が原因でない場合の子どもの家庭内暴力への一般的な基本対応は「拒否」の姿勢をとることです。
家庭内暴力が初期~慢性化していない段階において有力とされる対応方法は、決して力任せではなく、断固として暴力には反対するという姿勢を取ることです。
拒否する際のコツは、子どもに対して「暴力が駄目」ではなく「暴力は嫌」と訴えることです。
その上で、子どもの言い分には黙って耳を傾け(傾聴)、共感してあげてください。
家庭内暴力の子どもの深層心理には必ずと言っていいほど深い悲しみの感情があり、それを知って欲しくて暴力に訴えている場合がほとんどです。
「過去に辛い体験をした」
「ひどい仕打ちを受けてきた」
など、自分はあたかも被害者であると必死に訴えてくるでしょう。
この時、内容に多少の誤認や誤解があったとしても、その場で正すようなことは控えてください。
なぜなら否定的な意見、皮肉、嫌味といったものは更なる暴力を誘発する刺激になるためです。
もう一つの注意点は、子どもから無理難題な要求をされたとしても、決して従わないことです。
耳を傾け共感することと、言いなりになることは違います。
お互いのためにも、無理なことは「できないよ」と正直に答えてあげてください。
ひたすらにこのやりとりを繰り返して、子どもの悲しみを理解することで、暴力が解消されることもあります。
慢性化への対応
初期の段階と違い、慢性化(長期化)してしまった家庭内暴力は、その性質が大きく異なってきます。
慢性化してしまった家庭内暴力は、何らかの刺激によって起こるのではなく、他責感情をただ難癖をつけるかのように親にぶつけてくるパターンが多いため、いくら親が言動に気をつけて過ごしていたとしても防ぎようがありません。
そのため、この段階における基本対応は「暴力が起こってから取る方式」に変わります。
具体的な方法は2つあり、「回避」と「介入」と言われています。
- 回避とは
暴力の対象となる家族がまず家から離れ、暴力が落ち着くまでは外泊などして避難する方法です。
沈静化したと思って帰ってみても、まだ暴力が止まないような場合は、子どもの制止を振り切ってでも再度避難を続行してください。
また、避難行動をとる際に最も注意して欲しいことは、子どもに「見捨てられ不安」を抱かせないことです。
例えば、事前に(暴力が起こる前に)避難をしないことや、外泊中のこまめな連絡のやりとりをすることで防ぐことができます。
もし避難する理由を尋ねられた場合は、「子どもから逃げたいのではなく、暴力が嫌だから逃げるのだ」とはっきり伝えてあげてください。
これら以外にも、避難行動を実行するにあたって、その家庭の状況に応じた留意点が多々ある可能性も考慮し、専門家と協議した上で行った方が確実と言えるでしょう。
- 介入とは
暴力を振るわれたら直ちに第三者を家に呼ぶ(入れる)ことです。
第三者の幅は広く、一般的には警察や専門家、友達、親せき、誰でもかまいません。
ほとんどの場合、その場に家族以外の人間が介入することで暴力は一旦収まります。
警察を呼ぶのはちょっと気が引けるという方は、「警察はよほどのことが起きていない限り逮捕や補導することはなく、注意程度で終わる」ということを知っておいてください。
身の安全が第一ですので、危険を感じたらためらわず警察を呼んでください。
当施設の対応
これまでに説明してきた対応方法は、あくまで発達障害や精神疾患が原因でない場合の子どもの家庭内暴力に対する対処法です。
もしも発達障害や精神疾患が原因と疑われる場合、家庭内だけでの対応は困難を極めるため、精神科病院、地域の相談所、専門家などに頼る他ありません。
当施設では、発達障害や精神疾患に起因したケースも含め、子どもの家庭内暴力全般に対応しており、その全ての回復実績があります。
施設入所と聞くと、一般的には本人の同意が得られないような入所となってしまった場合、「入所中は良い子を装い、退所後にまた再発してしまう」と言われ、敬遠されています。
当然ながら当施設はその点も認知しており、お子さんと家族のこころの悲しみに着目したケアを行うことで、再発防止につながることが臨床経験よりわかっています。
実際、入所したての頃のお子さんの多くは良い子を演じています。
しかし、何ヶ月も同じ敷地で生活を共にしていれば、良い子を演じ続けられなくなってきます。
環境の変化にも慣れ始め、周囲へ気を許すようになってくると、本来の姿を覗かせてくれます。
そこを見逃さず、心の専門家(臨床心理士、精神保健福祉士)がお子さんの本心と正面から向き合い、真意を探り、心に巣食った悲しみをゆっくりと解きほぐしていきます。
そうすることで、自分自身、周囲の人、親に対する考え方までもが変わっていき、復讐のために費やされていたエネルギーは、いつしか自分のために使えるように成長されます。
就労などして、社会自立への目途が立った頃を見計い、施設を退所され巣立っていきます。
当施設では深層心理に根付いた深い悲しみのケアを重点的に行い、人と人との温かい関り方を知ってもらうことで暴力の連鎖を断ち切り、再発を防止します。
また親と子が、安心して安全に暮らせるよう、ご家族に支援を提供しています。