皆さん、こんにちは。
佐藤矢市先生の「パーソナリティ障害の回復には決断と見守る連携が必要」シリーズ第2回目となります。
今回は、ご相談いただいた内容の中から、完璧主義をお持ちの方々が比較的多く悩んでいらっしゃる問題行動について解説して参ります。
完璧主義者の問題行動
完璧主義の方に共通していることは、一つ間違えると、強迫的な反復行動と結びつきやすくなってしまうということです。
強迫的な反復行動というのは、反復すること自体が目的となっていくものです。
完璧主義者が陥りやすい様々な癖である、依存症、過食や拒食、クレプトマニア(盗癖)、リストカット、オーバードーズ(OD)、性風俗、ドラッグ、自殺未遂、被害妄想、他人を攻撃せずにはいられない衝動性などがありますが、これらの背景には、ただ繰り返すために行動するという反復強迫の病理が、程度の差はあれ認められるのです。
対人関係における場面で、この完璧主義者たちがよく口にするフレーズを以下に記しておきます。
「傷つける言い方はやめてください!」
「押し付ける言い方はやめてください!」
「急に話題を変えられるとビックリするのでやめてください!」
「本当は言いたいことがあるけど我慢しているのです。」
「あなたの言い方は暴言を吐いているのと同じです!」
では、これらのフレーズをよく使う人たちの心理面を解説していきます。
利用されたくない!馬鹿にされたくない!
まず、彼らの心の中には「利用されたくない」や「馬鹿にされたくない」といった発想があります。
そして、誰かと話をする場面などでは、「自分の話している内容が相手にちゃんと伝わっていないのではないか、それによって馬鹿にされるのではないか?」と、感じるので、必要以上に自分の言い分を強調しすぎたり、叫んだりしてしまいます。
当然、周囲の人は驚き、逆に彼らのことを攻撃してくるような危険人物のように見えてしまうことがあります。
また、この人たちは常に、相手に対して「変わってもらいたい・・・私は毎日ここまでやっているのだから褒めてもらいたい・・・」と、強く思い込んでいます。
自分は周囲から一方的に攻撃されているので(実際はそうでなくても、そういう風に思い込んでいく)、自分の身は自分で守らなければと、強く思い込んでいきます(敵か味方か、戦うか逃げるかという二極化思考)。
こうなってくるともう戦闘モード全開です。
会話も「○○○です!!」と相手に全く隙を与えず、自分の話にも入ってくる余地を与えません。
完璧主義であるがゆえに、白か黒か、敵か味方かの発想がどうしても強くなってしまうのです。
このレベルになってくると、本格的にパーソナリティ障害(強迫性パーソナリティ障害)として登場してきます。
現に、広汎性発達障害での二次障害者の多くが、この範囲に属していることも珍しくありません。
彼らの多くは、カウンセリングでの受容、共感、認知行動療法、SST、精神分析、暴露療法、薬物療法などと色々試してはいるものの、実際の成功率はとても低く、なかなか改善に至っていかないというのが現状です。
まとめ
完璧主義から発展した問題行動の心理は、本人や家族だけの努力では、びくともしないほど困難なケースへと発展していく傾向にあります。
時間が経過すればするほど、改善される可能性は薄れていってしまいます。
実のところ、これらの人たちが真に心から求めているものは「安心感」に他なりません。
我々を含め、全国で「安心感」を提供できる専門機関が増えていくことを心より願っております。