「心に起きる事はすべて身体に影響し、身体に起きる事もまた心に影響する」
この言葉については本ブログ内でも皆さんに何度かご紹介したことがあります。
また、最近メディアなどでは「すべての病気は腸から始まる」といった言葉をよく耳にするようになった気がします。
これらの概念は近年の研究によって明らかになったようにも思われますが、なんと2400年も前に医学の父・ヒポクラテスが既に理解していたというのですから驚きです。
そんなヒポクラテスはこうも言っています。
「人は自然から遠ざかるほど病気に近づく」
これは現代人の皆さんにとって、心当たりのある方も多い言葉なのではないかと思います。
この言葉にちなんでいるわけではありませんが、当施設も“豊かな自然に囲まれた環境の施設”と謳っています。
なぜならパーソナリティ障害のケアを行っていく上でも、自然との触れ合いがとても効果的であることがわかっているためです。
そこで今回は「豊かな自然とのふれあいが人間に及ぼす影響」について詳しくご説明していきたいと思います。
【目次】 1.脳に作用する 2.心にエネルギーを 3.意外なことからも |
1.脳に作用する
皆さんも「森林浴」や「アーシング」という言葉を一度は耳にしたことがあるかと思います。
人間なら誰しもが自然の中に身を投じてみると、「空気がおいしい」「なんだか心がやすらぐ」「リフレッシュしたような気がする」といった体験を味わうことができます。
実は、こうした“なんとなくの感覚”にもしっかりとした理由があるということをご存じでしょうか?
少し難しい話になってしまいますが、うつ病になってしまった人たちの脳を見てみると、そうでない人たちとの大きな違いがあるそうです。
うつ病の人たちは脳の中にある“海馬”という部分が委縮してしまっていて、その影響から「悲しい」「不安」「不快」などの負の感情に対して特に敏感になっているというのです。
人間は大きなストレスを感じると、脳の発育や神経のネットワークを作るために必要な栄養素が作られなくなってしまいます。
また、人間は「狭い空間」にいることでストレスホルモンが高まる反面、「豊かな環境」で育つとストレスが上がりにくいどころか、ストレスへの耐性が身に付くと言われています。
具体的に言うと、豊かな環境で育った人間はつらく苦しい出来事にぶつかった時も「明日はきっといいことがあるさ」といった発想が持てるようになるのです。
これは、当施設で心理士が行っている「マインドフルネス」に通じるものがあります。
このような事実から、当施設では自然豊かな環境を積極的にケアに応用する仕組みを作り上げました。
特に自然の中で行うウォーキングや畑作業、ヨガ、登山などはストレスの解消に大きな効果があることが心理学的にも証明されています。
こうした一連の行いは脳そのものに影響を与え、パーソナリティ障害やうつ病などのケアにも非常に効果的なのです。
2.心にエネルギーを
私は、先にご紹介した中でもとりわけ現代人に欠けているものが「アーシング」ではないかと思っています。
最近、皆さんは外に出て靴を脱ぎ、裸足で直接地面を踏みしめたことがありますか?
できれば舗装された地面などではなく、土や芝生などの上が最適です。
子供時代には何も考えずにやっていた「裸足で歩く」という試みを大人になった今改めて挑戦してみると、なんだか足の裏が痛気持ちいような、くすぐったいような。
童心に戻ったような感覚すら覚えることもあるかと思います。
するとどうでしょう、なんだか気分も少し軽くなったように感じられませんか?
これには、肌が直に土へ触れることによって脳内で起こるセロトニン(しあわせホルモン)分泌や、マグネシウムの経皮吸収といった目に見えない化学反応などが理由として考えられます。
まるで地球のエネルギーを吸収しているかのようなその瞬間だけは、日頃の悩みやストレスから解放され、ほっと一息つける時間が約束されています。
どんなに科学や文明が進歩して生活が豊かになったとしても、物だけで心を満たすことはできないのです。
心を真に満たすためには、人との関わりや、自然との関わりといったものが必要不可欠です。
余談ですが、アーシングには日常的に様々な電波に晒されている現代人から電磁波を取り除くことができるとも言われています。
しかし、電磁波の除去はアーシングの副産物のようなものであり、その真価ではないと思います。
なぜならアーシングを通して自然と触れ合うことで、さながら心理士とカウンセリングをした時のような影響が心にあらわれるからです。
ものごとを考えることに疲れた時、ストレスで押しつぶされそうな時、悲しいことやつらいことがあった時。
心理士にその思いを打ち明けるかのように、自然に心を委ねて深呼吸してみると、普段は気づかなかった色々なことがわかってきます。
風が肌に当たる感覚、木の葉や枝がすれる音、鳥や虫の鳴き声、土や花のにおい。
自分の外に感覚が集中することで頭の中にあった雑念から解放され、荒んだ心がまるで浄化されていくような感覚を覚えます。
スピリチュアルな考えになってしまいますが、こうした現象はまるで弱った人間の心が大地(地球)から”氣”のエネルギーをわけてもらって満たされているように思えてなりません。
3.意外なことからも
当施設の入所者(女性)からおもしろい話を伺いました。
彼女は「料理はアーシングと同じ効果があるように思う」と私に教えてくれたのです。
アーシングとは本来、地面や岩、草木といった植物などの“自然のもの”と触れ合うことでなされるものです。
そして、料理においては“食材”と触れ合うことがまさにアーシングのそれであると言うのです。
確かに、野菜などは植物そのものですし、肉も元は自然環境に居るはずの動物由来のものです。
生肉に触ったり、新鮮な野菜を切った時の感触やにおいなどは、その子にとって立派にアーシングとなっているのだそうです。
そして、できた料理を人に振舞えば「美味しい!」と喜んでくれて、さらに幸せな気持ちにもなれる。
彼女にとっての料理とは、趣味の枠を超えて根源的なパワーを得られる特別な行為なのでしょう。
他にも彼女は、自分が土いじりが出来なかった時などは土いじりをしてきた他の人たちと触れ合うことで間接的にアーシングを体感できるとも言っていました。
森林浴や自然の中でのウォーキング、裸足で地に立つアーシングだけが自然と触れ合う方法ではない。
彼女にそう教えられたようで目からうろこでした。
自由な発想で自分に合った自然とのふれあい方ができれば、それはその人の心のケアになっているということを実感しました。
当施設は群馬県の比較的田舎という立地をデメリットとは捉えず、その広大な自然環境を最大のメリットと捉えています。
そうした環境をセラピーや生活空間に取り入れたり、農園で作った野菜を提供するなどして入所者の皆さんにいつでも自然を感じていただけるような仕組みになっています。
今回ご紹介した彼女のように、楽しいことや嬉しいことで心が満たされる体験を伴うパーソナリティ障害のケアを、これからも多くの方に提供できるよう努めて参ります。
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