皆さん、こんにちは。
佐藤矢市先生の「パーソナリティ障害の回復には決断と見守る連携が必要」シリーズ第14回目となります。
今回は、当センターに寄せられるご家族からのメッセージについて、矢市先生の視点から感想と考察を交えてご紹介して参ります。
多くのご家族と関わってきて
20年以上もの間、パーソナリティ障害を専門に活動を行ってきた私の心の支えになっていることと言えば、やはり卒業生やご家族からいただく「感謝の言葉」の数々です。
いくつもの精神科病棟への入退院を繰り返してきた方、様々な種類の薬を服用してきたが一向に改善が見られずに症状が悪化してしまった方、問題行動を繰り返して何度も警察沙汰に発展してしまった方など、当センターに辿り着かれるご家族の状況は実に多様で、各々が歩んできたストーリーを持っていらっしゃいます。
光も希望も見えず、どん底の状態にあったご家族が当センターと出会ったことで、かすかな光を見いだせるようになっていただけることは、私どもスタッフ一同にとってもこの上ない喜びです。
今現在、ご家族が問題の真っただ中にいてどん底状態である場合には、これから紹介する感想はなかなか理解に苦しむところがあるかもしれませんが、実際に体験されたご家族からの生の声として参考にしていただければと思います。
「ご家族からの感想」
・『以前は、子どものことを信じてあげることができなかった。なぜなら私たち自身も自分のことを信じられなかったし、いつもどこかで、これではいけない!と思っていた。でも、今は純粋に子どものことを信じてあげられるようになった。こういう風に思えるようになったのは、思い切って子供をセンターに預けたから。人生で初めて、子どもを信じるということを体験した』
・『親の力だけで何とかなると思い込んで、問題を抱え込んでいた。でもそれは逆に問題を悪化させ、家族間の閉鎖感に繋がっていたことに初めて気がついた。もっと早くにセンターと出会っていれば状況は変わっていたと思う。特に、専門的な支援の活用は家族間のコミュニケーションを助けるきっかけになるということを学ばせていただいた。』
・『センターと出会うまでに数えきれないくらいの医療機関にわが子を入院させてきました。でも、入院期間も限られていてすぐに退院してしまうし、自宅に帰ってくれば、また同じ症状の繰り返しで困っていました。センターのように長期的にケアをしていただけるパーソナリティ障害の専門機関が、日本にあって本当に良かった。』
・『生活環境を変えれば何とかなると思ってアパート暮らしをさせてみたりしたが、結局、根本的な問題の解決にはならなかった。お金も時間もロスしてしまった。もっと早くにセンターを知っていれば余計な出費は必要なかったと思う。』
親の力だけでは限界がある
以上のような有り難いご感想をたくさんいただいています。
それらの内容からもわかるように、ご家族がわが子をセンターに預けるという決心を下したことによって、家族間でのコミュニケーションの限界に終止符を打つことへとつながったのです。
今までは「なんとかなる!」と一生懸命頑張ってやってこられたご家族が多いようですが、残念ながらその想いと行動が強い親御さんほど、子どもからの反発や攻撃を受けることになってしまいます。
私の経験上、パーソナリティ障害のケースでは、子どもの将来を考えた上で、「親の力だけでは限界がある」ということに早い段階で気づけるかどうか、そして、信頼のおける専門機関に子供を預け続けるという「信念を持てるかどうか」が、パーソナリティ障害の回復には必要不可欠なのです。
この親のスタンスを子どもが本当の意味で実感した時に、子どもたちは自分自身の力でバランスを取り始めていくのです。
最終的に多くのご家族は、親も子も、それぞれに自立し始め、程よい距離感を保ちながらお互いの存在を尊重し、未来への一歩を踏み出していきます。
「パーソナリティ障害は大変だ」と思うよりも、我が子は「持っている特性・個性が他の子たちよりも際立っているのだ」と考え、将来の可能性について、どう活かしていくのだろうかと楽しみに思うようにしてみてください。
「可能性を持った」大事なお子様なのですから。