「セラピーって何をするんですか?」
「心理カウンセリングにはどういった効果があるんですか?」
このような疑問を持たれる方が多いように、セラピーや心理カウンセリングについて詳しく知っている方はそう多くないでしょう。
当施設でも心理士(臨床心理士、公認心理師)が入所者(利用者)に対し、必要に応じて心理カウンセリングを行ったり、自由参加型のセラピーを実施していますが、誰しも最初の頃は疑心暗鬼で臨まれる方がほとんどです。
そこで今回は当施設専属の心理士監修のもと、セラピーと心理カウンセリングの違いや、期待される効果などについて、皆さんに詳しくご説明いたします。
セラピーとは?
「(therapy)治療、療法。薬や手術などによらない心理療法や物理療法のこと。テラピーともいう。」
皆さんがよく耳にするものとしては「アロマテラピー」「アニマルセラピー」「フラワーセラピー」などがあると思いますが、それらはほんの一部であり、世の中には実に多くの種類にセラピーが存在しています。
その数あるセラピーを行うことの意味や目的は、主に”心のケアをすること”にあります。
セラピーの具体的な効果としては、一般的に次のようなものが期待てきると考えられています。
「人が本来持っている能力や資質などを引き出せる」
「心と身体をリラックスさせて不安を解消することができる」
「身体を動かしてストレスを発散、解消することができる」
「ホルモンバランスや自律神経が整い、健康面でも良い影響がある」
「荒んだ心にもカタルシス(精神が浄化される)効果が期待できる」
「ネガティブ傾向にある方でも、ポジティブな体験ができる」
例えば、当施設では”集団セラピー”を日替わりで行い、「スポーツセラピー」「楽器セラピー」「コーラスセラピー」「ダンスセラピー」などを自由参加という形で提供しています。
セラピーに参加していただくことで、日常生活の中の小さな不安やストレスなどを解消することを目的としています。
心理カウンセリングとは?
「専門知識(臨床経験)やスキル(心理療法)を持った者が、心の悩みに寄り添うように傾聴や対話(コミュニケーション)を通じて一緒に考え、クライエント(相談者)が自己解決へと至るためのプロセスのこと。」
心理カウンセリングを行うためには、膨大で専門的な知識と経験が必要不可欠であるため、次のような資格を有する者が行うことになっています。
- 公認心理師(国家資格)
- 臨床心理士
- メンタル心理カウンセラー
- メンタルケアカウンセラー
- キャリア(産業)カウンセラー
- チャイルドカウンセラー
そして、有資格者による心理カウンセリングを受けることで、クライエント(相談者)の心には次のような効果が期待できます。
「今まで自分だけでは気づけなかったような新たな自分を発見できる」
「親身に聞いてもらったり共感してもらうことで、心が軽くなる」
「自己肯定感が高まり、自分に自信が持てるようになる」
「カウンセラーとのやりとり(対話)は対人関係にも応用できる」
しかし、このような効果が期待できる反面、心理カウンセリングには長い道のりを継続していかなければならないという試練も待っています。
一般的に、心理カウンセリングには3つの段階があると言われています。
まず初期の段階においてはクライエントとの信頼関係を築く時期があります。
心理カウンセリングというものは信頼してもらうことによってはじめて成り立つものであり、カウンセラーに疑いを持っているうちはあまり進展は望めません。
そのため、この信頼関係をいかに早く築けるかが早期解決や、今後継続していくためのカギであると言えるでしょう。
無事に信頼関係を築いた後は心理カウンセリングに身が入り、その効果が表れてくる時期に入ります。
この時期から色んなことに気づいたり洞察できることが多くなるので、心にも徐々にその影響による変化が見え始めてきます。
ちなみにカウンセラーは、この時期のクライエントの心の動きを察知し、解決に必要な要素を見極めるために神経を研ぎ澄ませて心理カウンセリングに臨んでいます。
そして最後に、自信を取り戻す時期に差し掛かったクライエントと共に今後(将来)についての話し合いを進めていきます。
そうなるといよいよ心理カウンセリングも卒業にさしかかります。
このような長い過程を経て、クライエントは様々な気づきによる心の成長と自信の獲得によって自己肯定感を取り戻したり、悩みを払拭したり、希望を持って今後に臨むことができるまでに回復されるのです。
セラピーと心理カウンセリングの違い
セラピーはその時その時の”具体的”な不安やストレスなどを取り除くことにおいて大きな効果が期待できます。
また、心理カウンセリングは問題や悩みのさらに奥にある根本的な部分を治療、回復させることを目的として行うことが多いです。
そう考えると、心理カウンセリングだけを受けていればいいのではないかと考える方もいらっしゃるかもしれませんが、少し留意してほしい点があります。
心理カウンセリングを受けることで、日常で積み重なる小さな不安や悩み、ストレスなどを軽くすることはできても、全て解消しきるということはできません。
それらが解消しきれずに積もりに積もってしまった結果、心理カウンセリング自体を継続する気力を保てずに治療を断念されてしまった、という方も少なからずいらっしゃいました。
そういった意味でも、セラピーにも参加して、日頃の小さな問題(不安、悩み、ストレスなど)を自主的に解消することにはとても大きな効果があると言えるでしょう。
当施設が根本治療を行ううえで、長年この二つを軸にケアを行ってきた理由にはこうした狙いもあります。
実際に、うつ病や各種精神障害などで心を病んでしまわれた方が、セラピーと心理カウンセリングを併用していったことによって支援を継続でき、無事に社会復帰できた事例がたくさんあります。
私どもはこれからもセラピーと心理カウンセリングの有効性を信じて、心理士を中心とした経験豊富なスタッフたちと共に入所者の社会復帰という結果を出し続けていくつもりです。
そして、もっと世間一般にこの手法の有効性を示していけたらとも考えています。
これを機に、皆さんの中で「まだやってみたことがない」という方にも興味を持っていただけたなら幸いです。