なぜ多くの親は「相談したのに、前に進めない」のか

支援機関に問い合わせはした。

話も聞いた。

説明にも納得した。

それでも多くの親は立ち止まります。

「少し考えます」

「また連絡します」

と言ったまま話は進まない。

この“問い合わせ止まり”は、

珍しい現象ではありません。

むしろ家族支援の現場では

最も多く見られる状態です。

重要なのはこの行動が

怠慢でも、無関心でも、

優柔不断でもないという点です。

そこにはある心理構造があります。


問い合わせは「決断」ではなく「心の避難」である

多くの親にとって、

問い合わせは行動の第一歩ではありません。

それはむしろ、

  • 何をすればいいか分からない不安から一時的に逃れるため

  • 何もしていない親ではないと自分を保つため

そうした心理的避難行動の一環です。

「相談した」という事実が、

罪悪感、焦り、周囲からの無言の圧

といったものから守ってくれるのです

その結果、

親の心は一度落ち着いてしまう。

前に進むために必要な緊張感が、

そこで切れてしまうのです。


支援を使うことは「娘の問題」だけを扱う行為ではない

支援を本格的に利用するということは、

  • 娘の生活

  • 親子関係

  • 家庭環境

  • 親自身の関わり方

にまで踏み込むことを意味します。

これは親の無意識に、こう響きます。

「娘の問題は、家庭とも無関係ではない」
「自分の関わり方も問われる」

ここで、強い心理的ブレーキがかかります。

それまで

「娘を騙すホストが悪い」

「娘の交友関係が悪い」

「社会が厳しすぎる」

と外に置いてきた責任が、

静かに自分の側へ戻ってくる

そんな感覚が生まれるからです。


親が本当に怖れているのは「責められること」ではない

多くの親は、

「責められるのが怖いから進めない」

と思っています。

しかし実際には、

もっと深いところに恐れがあります。

  • 自分の育て方が否定されるのではないか

  • 見ないふりをしてきた問題を直視させられるのではないか

  • 親としての未完成さが露呈するのではないか

これは、「失敗を許されにくい社会」で生きてきた親ほど強くなります。

そのため、

・話を先に進めない

・連絡を控える

・「少し考えます」で止める

という行動が、

自己防衛として選ばれるのです。


娘の反発は「決断できない理由」として機能する

「本人が嫌がっているので」

という言葉は、

事実であることも多いでしょう。

ただし心理的には娘の反発が

親自身の決断回避を正当化する材料

として機能しているケースも少なくありません。

  • 親が決める → 親の責任

  • 娘が拒否 → 決めない自分を正当化

この構図の中で、

娘の意思は“盾”として使われます。


「まだそこまでではない」親の心理の核心

問い合わせをする親ほど、

状況の深刻さには気づいています。

しかし同時に、

  • 他の家庭よりはまだマシ

  • 命の危険まではない

  • もう少し様子を見れば変わるかもしれない

という正常化バイアスも働きます。

これにより、

「今すぐ支援を使うほどではない」

という結論に、

一時的に落ち着いてしまうのです。

こうした親の心理を一言で言えば、

「変えたい気持ち」と「変わる怖さ」

それらが同時に存在している状態です。

  • 何かしなければという焦り

  • 親の責任を引き受ける恐怖

  • 娘との関係が壊れる不安

  • 自分の人生や価値観を問われることへの抵抗

これらが拮抗し、

動けなくなっています。

この層の親は、

冷たいわけでも、

逃げたいだけでもありません。

むしろ最も迷い、

最も苦しんでいる層です。


必要なのは「決断を迫ること」ではない

重要なのは、

  • 親の怖さを言語化すること

  • 親も変わるが責められないと伝えること

支援とは、

誰かの失敗を裁く場ではなく、

未来へ進むためのプロセスです。

相談やお問い合わせは、

状況整理だけでも構いません。

親子関係・生活・支援について、

理解を進めていくことが大切です。

*JECセンターは、20年以上に及ぶパーソナリティ障害の臨床研究と回復の実績を持つ

元臨床心理士(現:施設顧問)佐藤矢市が考案した“心理休養”に基づいたサポートを提供しています。

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