AIに相談して終わる時代に起きている静かな異変
「最近の悩み相談の相手はChatGPT!」
そんな人がとても増えたように感じます。
10代、20代、30代、40代…世代を越えてAI相手に相談をしている人が珍しくなくなってきました。
ChatGPTを代表とする生成AIは肯定的な回答をする傾向にあり、投げかけた質問にすぐに答えが返ってくる安心感などは確かに魅力です。
まるで新世代のカウンセラーであるかの如く、実際にその相談効果を実感している方も少なくありません。
しかしその一方で、「AI相談だけで完結してしまうことの危うさ」が見過ごされています。
AIは否定せず、その人の話に合わせてくれます。
それは心地よい反面、間違っていても指摘されない(間違いに気付けない)という問題を孕んでいます。
また、人間相手に相談するという必要がなくなってしまうことで、現実の人間関係が希薄になり、社会との接点を徐々に失い、孤立を深めてしまいます。
これはAIの便利さの裏で、静かに起きている異変なのです。

エコーチェンバー現象が娘の深刻化の引き金に
AIは相談者に寄り添う言葉を返してくれます。
しかし、そればかりに傾倒した使い方をしてしまうことで、「エコーチェンバー現象」を強めます。
エコーチェンバー現象とは、「自分は間違っていない」「周囲が理解しないだけだ」という偏った意見ばかりに目が向いてしまい、確証バイアスや意見の分極化が進んでしまうことを指します。
もし、問題行動を起こすような娘さんがその悩みを人間相手に相談せず、AIだけに相談していたとしたら…。
もともと偏り気味だった視野を狭め、且つその問題性が露呈しない(人目に触れない)ことで、現実の支援とつながる機会を失ってしまいます。
その結果、特に専門家や相談窓口に問い合わせることなく、問題が水面下で悪化、深刻化していくケースが少なくありません。

相談件数が減る社会が意味するもの
仮に、こうした背景からJECセンターへの支援要請や相談件数が減っているとすれば、それは「問題が減った」のではなく、「表に出てこなくなった」可能性を示しています。
もともと家庭内で抱え込まれやすい娘の問題行動や心の悩みといったものが、端末と向き合うだけで解決したような錯覚を覚えてしまう(実際に解決していない)。
そうすることで、本当に手が付けられなくなるまで娘の異変に家族すら気づけないケースの増加につながってしまいます。
AIは的確な助言をくれたり、知らないことを教えてくれる、人間の優秀なパートナーです。
しかし、現実の生活環境を調整したり、感情の揺れを受け止め続けたりすることはできません。
人が関わらない支援には、明確な限界があるということを覚えておいてください。

本当に賢いやり方はAIと専門家を活用すること
JECセンターは、娘さん本人だけでなく、親御さんも含めた「人と人との関係」を回復する支援を行っています。
顔を合わせ、声の揺れを感じ、時に葛藤しながら進む過程こそが、人と社会との分断を防ぐ力になります。
これは、現時点で生成AIにはできない領域です。
決してAIに相談すること自体が悪いのではありません。
そこで完結したつもりになって満足せず、時には人に相談し、反対意見にも耳を傾ける必要があるのです。
そのために一番効率的なことは、専門家へ相談をもちかけることです。
AIとの相談と併用し、孤立が深まってしまう前に一度、専門家の意見も聞いてみてください。
娘さんが、親御さんが、その一歩を踏み出すことで、不安や悩み、問題行動を本当の意味で解消できる未来へとたどり着くことができます。
