ガールズバーに反対する母と娘の対立
「娘がガールズバーで働いていると知ったのは、娘が大学に入って2年目のできごとでした」
これは、JECセンターへ問い合わせされたある母親のお話です。
「ガールズバーは何もやましいことなんてしてない!」
そう言い張る娘に、母親は疑うようにこう答えます。
「何で夜のバイトにこだわるの?普通のバイトじゃだめなの?」
母親の言い分に娘は反論を諦め、黙って自室へと去っていってしまいます。
表面的には軽い接客業のように見えるかもしれませんが、ガールズバーも夜の世界に属していることに変わりはありません。
その特性上、どうしても横の繋がりのあるメンズエステ店や風俗店へのあっ旋などが後を絶たないそうです。
その事実を知っている母親は、なんとか娘に考え直してもらおうと毎日のようにこうした論争を繰り広げていたそうです。
実は娘の心の裏側に「家庭内のすれ違いからくる複雑な心理」が影響を及ぼしているとは、この時点では察することも叶わなかったでしょう。
母親の苦悩は限界に達していた
母親の説得もむなしく、娘のガールズバー勤めが続くと家庭内の空気は大きく揺らいでいきました。
母親が話しかけても「うるさい」「放っておいて」と一蹴され、時には暴言や無視が繰り返されることもありました。
母親は「娘を守りたい」という気持ちと「どうにもできない無力感」の間で苦しみ、心身ともに疲弊していました。
また、この頃から父親や姉妹との間に意見の食い違いも生まれ、「もう好きにさせてあげたら」という諦めムードが家庭全体に広がりつつありました。
実際、このような状況は長引くほど親子の断絶を深め、母親も「このままでは娘の人生が壊れてしまうのでは」という強い不安を抑えきれなくなります。
夜の世界の魅力や依存性は、家庭内の説得や叱責だけでは解決できない深刻さを孕んでいるのです。
母親が見つけた一筋の希望
精神的にも限界を迎えていた母親でしたが、力を振り絞って娘のことをなんとかしてくれる場所はないかと探し続けていました。
そんな折、やっと見つけることができたのが「JECセンター」でした。
娘と似たような状況の女性が入所している施設があると知り、母親は居てもたっても居られず、すぐに相談してみることに。
JECセンターは、一時的に娘を預かってくれて、入所中に心理ケアなどの専門サポートが受けられる場所です。
ここでは、娘の行動の背景にある心の問題を丁寧に分析し、その情報を家族と共有して回復を目指していきます。
「なぜ娘がガールズバーに居場所を求めるのか」について、直接本人から伺った話を元に考え、母親の苦悩を理解した上で、どうしていくことが最善かを探っていきます。
一時的に安心できる環境で生活することで、徐々に夜の世界から距離を置けるよう計らっていきます。
また、母親自身の不安や罪悪感にもスタッフは寄り添ってくれるため、今まで孤独な戦いを続けてこられた母親にも安心が訪れます。
「誰かに相談することは、決して責任の丸投げではない」
そうスタッフから告げられたことで、母親は肩の荷がすっと下りた気分になったと言います。
「預けることは娘を見捨てることではない」とわかった母親は、積極的に連絡を取り合い、娘の心の回復を待ちました。
結論から言うと、この娘はメンズ地下アイドルに貢ぐため、ガールズバーにこだわっていたそうです。
パパ活もしていたけれど、風俗はためらったとも言っていました。
家庭では、母親とのすれ違いが多かったことも尾を引いていたそうです。
こうした本音を打ち明けてくれたのも、スタッフの献身的な寄り添いによるものでした。
親の力だけではどうにもならないと感じても、専門機関とつながることで解決の道筋は見えてきます。
「ここで初めて話を聞いてもらえた」「親子の関係が少しずつ回復してきた」という声も少なくありません。
「つらかったですよね…」とこれまで苦労されてきた母親を労うことも忘れません。
娘は元通りにはなりませんが、成長し、変わることはできます。
そして小さな成長が、やがて必ず大きな希望につながります。
*本コラムは、20年以上に及ぶパーソナリティ障害の回復実績を持つ
元臨床心理士(現:施設顧問)佐藤矢市が考案した”心理休養”に基づいています。