「わかってほしい」だけが残り、対話が消えた家の中
「言葉で言っても伝わらない」
「何を言っても否定される」
そう感じた娘さんが、最後に選ぶ手段が“暴力”です。
叩きたいから叩いているのではありません。
叫びたいのに叫べない、助けてほしいのに届かない。
その行き場のない感情が拳に変わるのです。
一方、お母さんは「怖い」「これ以上刺激したくない」と口をつぐみ、いつの間にか家庭は“話し合いのない静かな緊張”に包まれていきます。
ここで一つ、はっきりした現実があります。暴力は衝動ではなく、壊れかけた関係のサインだということです。
「意思を尊重しているつもり」で、実は言いなりになっている
多くのお母さんはこう言います。
「娘の意思を尊重しています」と。
ですが現場で感じるのは、尊重ではなく“逃げ”になっているケースです。
怒らせたくない、荒れさせたくない、その恐怖が、いつの間にか娘さんの要求をすべて飲み込む形に変わっていく。
結果として、家庭の主導権は完全に娘さん側へ傾き、お母さんは自分の意見を失います。
これは意思の尊重ではなく、親子関係の放棄に近い状態と言えます。
そしてこの関係は、時間が経つほど娘さんの自己否定と攻撃性を強めていきます。
「動けば悪化する」は本当か？ 現場の答え
お母さんが最も恐れるのは、「親が余計なことをしたせいで刺激して余計に悪化させること」です。
しかしJECセンターが見続けてきた現実は、その予想とは全く逆の現象です。
親御さんが動かず、何もしなかったことで悪化したケースの方が圧倒的に多いのです。
暴力は突然始まったように見えて、実は長い“見て見ぬふり”の末に起きています。
様子を見る、落ち着くのを待つ——その間にも、娘さんの内側では怒りと孤独が積もり続けています。
「勇気を出して相談してみて正解だった」と安堵されるご家庭を、私たちは何度も見てきました。
今、親御さんが動かなければ、娘さんはもっと壊れていく
暴力は決して容認できる行動ではありませんが、娘が助けを求める「最後の形」でもあります。
ここでお母さんが恐怖に負け、再び黙ってしまえば、娘さんはさらに強い手段へ進む可能性があります。
守ろうとして身を引いた結果、もっと深い闇へ娘さんを押し出してしまう…。
そうした親子のすれ違いこそ、家庭内暴力の本当の怖さです。
JECセンターは、親御さんが“言いなり状態”から抜け出し、娘さんと再び向き合うことができる場所です。
見守りや心配は、もう十分です。
今必要なのは、ためらわずに踏み出すお母さんの行動です。
いつの日か、暴力でない形で娘さんが自分の意思を伝えられるようになるための唯一の道です。
＊JECセンターは、20年以上に及ぶパーソナリティ障害の臨床研究と回復の実績を持つ。
元臨床心理士（現：施設顧問）佐藤矢市が考案した“心理休養”に基づいたサポートを提供しています。
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