人格障害(パーソナリティ障害)のような精神疾患の特徴について調べていくと、”食事がもたらす影響力”の大きさについて改めて気づかされます。
例えば、有名な話のひとつに”地中海式の食事”というものがあります。
地中海式の食事には、和食などと同じく「自然由来の食品」を使ったものが多いと言われています。
それらに含まれる栄養素には、気分の落ち込みを予防・改善する効果があるという話が有名です。
ところが”現代日本の食文化”はというと、どちらかと言えば西洋式に傾倒しています。
パンやソーセージ、洋菓子(砂糖をたくさん使ったもの)などに代表されるような多くの”加工食品”が食卓に並ぶ機会が増えてきたことで栄養の偏りが心配されています。
西洋式が全て悪いと言うわけではありませんが、肥満などの生活習慣病リスクが上がり、今まで以上に自己管理が求められる状況へと変化してしまいました。
私どもは、このような身体的リスクの増加はもちろん、古来より和食に備わっていた精神面へのメリットが薄くなってしまっていることに対して懸念を抱いています。
そこで今回は、当施設が行っている総合回復(トータルケア)の一環である「食事が心に与える影響」について、皆さんにご紹介していきたいと思います。
科学的な根拠
通称:幸せホルモンという呼び名で一躍有名になった「セロトニン」という神経伝達物質があります。
セロトニンには精神を安定させ、感情のコントロール、ストレスの軽減、イライラ予防などに効果があるとされ、不足すると精神のバランスが崩れて暴力的になったり、気分の落ち込みの原因になったりします。
このセロトニンは「トリプトファン」という必須アミノ酸と「ビタミンB6」によって作られるのですが、トリプトファンは体内で作ることができないため、食事によって摂取する必要があります。
つまり、食事で十分な栄養を摂取することにより、身体の健康だけでなく精神の安定をも保っていたということがわかります。
セロトニン生成に必要な栄養素が多く含まれる食品を積極的に食べるようにすることで、ストレスや不安に強い心を作ることができるようになるのです。
しかし、セロトニンの分泌には”日光を浴びたり”、”適度な運動を行うこと”も必要であると言われているため、食事にだけ気を付ければよいというわけではありません。
精神的充足感
食事をとることには「活動エネルギーの補給」「身体の健康維持」といったように様々な目的があります。
しかし、私どものような心の専門家が重視している部分は、食事がもたらす「精神的充足感(心が満たされる感覚)」という点にあります。
食事によって精神的充足感を得るためには、人と一緒に食卓を囲み、楽しく会話しながら食事したり、美味しいものを味わって食べる必要があります。
しかし、今はコロナ禍ということもあり、孤食(一人で食事をとること)や黙食(だまって食事をとること)が推奨されているため、こうした精神的充足感が得難いという残念な状況です。
実際に当施設でも、感染症予防対策としてやむを得ず食堂(共用施設)ではソーシャルディスタンスを保って着席し、あまり大きな声で会話しないよう協力を呼び掛けています。
楽しく会話しながら食事を楽しむことが難しくなってしまった分、当施設ではいかに美味しく料理を食べていただけるかという点を工夫することに注力しています。
新しい料理や食材と出会い、美味しく味わって食べるということは、人生にとって大きなスパイス(刺激)になるということを知ってほしいという願いも込めています。
世の中には、何かを頑張れたり達成した時などに「自分へのご褒美」として普段食べないような美味しいものを食べるようにしている。といった方もいらっしゃると聞きます。
食事で心を満たし、次にまた何かをするための励み(原動力)にするというセルフマネジメントは、上手な活用方法のひとつであると言えるでしょう。
総合回復(トータルコンディショニング)
中国の古い言葉に”衣食足りて礼節を知る”というものがあります。
これは「人は食事や衣服などが満たされることで生活にゆとりが生まれ、はじめて礼儀や節度をわきまえる」といった意味の故事です。
このことからも、食事によって生活にゆとりが生まれたり、心が満たされることで人間らしい振る舞いができるということを昔の偉人たちは既に気づいていて、教訓としてきたことが伺えます。
ところが、人格障害などの精神疾患に悩む方たちの食事を間近で見ていると、彼ら(彼女ら)は黙々と無表情で、あたかも作業のように口に物を放り込んでいるだけであることに気づかされます。
たまに食事に対する不満を漏らすようなことはあっても、「美味しかった」などという感想を口にするようなことはなく、一向にその心が満たされていく様子はありません。
このような事実を踏まえて、当施設では総合回復(トータルコンディショニング)という観点からも、利用者の皆さんに提供する食事には気を遣っています。
当施設が自家農園を持ち、専属のスタッフたちが食用野菜を有機無農薬で栽培しているのもそうした理由からです。
その食材を使い、調理スタッフが栄養の偏りや生活習慣病の予防を考慮した美味しい旬のメニューを提供することで、食事を利用する皆さんの心を動かすことができるよう工夫しています。
現在は難しくなってしまったものの、以前はなるべく仲間たちと食卓を囲って食事をするよう積極的に呼び掛けていたりもしました。
なぜなら、そうすることで今まで感じることのなかった”暖かい手料理から感じられる人のぬくもり”や、”仲間たちとのコミュニケーション”といったものを体験し、少しずつ意識の変化が起こることがわかっているためです。
やがて、美味しい料理を味覚だけでなく視覚(見た目)や嗅覚(におい)などの五感全てで味わえるようになると、自然に仲間たちと雑談を交えながら楽しく食事をとれるようになるまで成長されます。
食事を通して、いつのまにか自分たちの心に変化が起きていたことを知ったら、きっと驚かれることでしょう。
皆さんもこれからの長い人生の中で数えきれないほどの食事をとることになると思います。
その一回一回を大切にして、食事を楽しむことがどれだけ大きな効果をもたらしてくれるかについて意識していただけるようになれたなら幸いです。
当施設では、今後も利用者の皆さんが豊かでより良い生活を送るためにも、毎食ご用意させていただいている料理全てに愛情を込めてご提供していきます。
笑顔で楽しく召し上がっていただけるよう、栽培スタッフ、調理スタッフともどもこれからも努めて参ります。
専門施設として「パーソナリティ障害宿泊・心理支援センター」
施設長
佐藤矢市
2000年度に開設以来、本来安心できるはずのご家族において、親も子も安心して暮らすことができないということは本当につらいことでしょう。私たちはそうしたご家族の一助となれるよう、尽力しております。
費用
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初回面談の特典 |
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宿泊料金 | 支援ニーズにより異なります。まずはお問合せください |
※詳しくは下記URLよりアクセスください。
心理障害グループホーム「地上のひかり」
施設長
佐藤靖人
2021年度に開設し、この度「JECパーソナリティ障害宿泊・心理支援センター」と業務提携を結びました。
心理障害を抱えた方に向けて、心理ケアやスポーツが盛り込まれた生活を通し、楽しく学びながら成長し、将来への希望が見出せます。
月額利用費を抑えながらも支援の質を落とさず、自立や社会復帰に向けた生活支援を行う居住空間をご用意いたしました。
費用
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