家庭内暴力(子供からの暴力や暴言)に苦しんでいる親御さんの中には、何も変わらない毎日を地獄のように感じ、それでも責任を感じて耐え忍んでいる方がいます。

 

「いっそのこと子供から逃げてしまえたら楽になれるだろうか

 

そう思ってしまうほど精神的に追い詰められ、心身共に疲弊しきってしまうというのが家庭内暴力の恐ろしい側面です。

 

今回は、長年引きこもりを続けている息子からの家庭内暴力に悩む母親の現実と、その対処方法についてご紹介していきたいと思います。

 

 

母親が限界を迎えるまで

高校生になった息子が、ふとしたきっかけから学校を休みがちになってしまい、そのまま何年も引きこもりを続けることになってしまったご家庭がありました。

 

ご両親も最初の頃はそんな息子さんを不憫に思ってか、無理に登校させようとしたり、焦らせたりせずに、「今の息子には考える時間が必要なだけだ」と考えていたそうです。

 

特に父親はそんな息子の良き理解者であろうと、息子の引きこもりを容認していたそうですが、母親はそんな状況に焦りを感じていたそうです。

 

父親の態度に甘えるかのように子供は毎日部屋に閉じこもったままなので、母親の焦りや不安は日に日に増すばかりでした。

 

たまに母親が息子のためにと思って声をかけてみても、相手にされないか、一方的に暴言を吐かれることが多かったそうです。

 

そんなことを続けているうちに、いつしか母親の子供に対する想いは「息子のため」ではなく、「自分が不利益を被らないため」にすり替わっていってしまいました。

 

息子は刺激すると暴言や暴力に訴えようとしてくるので、その恐怖から母親は自己防衛本能が強くなってしまった結果なのかもしれません。

 

一方で父親にも特に変わった動きはなく、誰も息子とまともに会話をできないためか、息子が何を考えているのか全くわかりませんでした。

 

母親は、「自分(母親)が何とかしなければ息子はだめになってしまう」と考える反面、「もう全てを捨てて逃げ出してしまいたい」という自己矛盾に陥っていました。

 

このような状況において、両親が息子にしてあげられること(すべきこと)には、いったいどういった選択肢があったのでしょうか。

 

親がとれる選択肢

まず、実際に両親が身の危険や限界を感じて息子から逃げる(一時避難する)ことはどうなのかについて考えてみます。

 

これは結論から言うと、息子が成人している身であるなら特に罪には問われず、家庭内暴力等の事実があった場合「緊急避難」と判断されて正当化されるでしょう。

 

つまり、逃げることは選択肢としては「アリ」なのです。

 

しかし、逃げることによって万事解決はしないということだけは勘違いをなさらないでください。

 

あくまでも一時的な対処法として有効であるというだけで、問題の根本的な解決には別の手段をとる必要があります。

 

では、警察に相談(介入)してもらうという選択肢はどうかと言うと、これも状況次第では有効です。

 

例えば、今まさに暴力を振るわれていて、怪我のおそれや生命の危機を感じるような場合、即座に通報して場を収めてもらう必要があるため、そのような時は迷わず警察に連絡してください。

 

ただし、家庭内暴力をやめさせたいという要望に対しては「親子の問題は家族で話し合ってください」と言われてしまいます。

 

警察はそれ以上の介入はしてきませんので、あくまで怪我や事故防止のための緊急手段としてのみ有効とされるでしょう。

 

最後に、病院(精神科医)や専門家を頼るという選択肢です。

 

引きこもりや家庭内暴力、ニートなどは子供の心の病気が原因である場合がほとんどであるため、やはり根本治療を考えるのであればこの一択と言えるでしょう。

 

特に、そのような状態が長引いてしまっている子供の場合、治療にかかる時間は比例して長期に渡る傾向があります。

 

もし、本当に解決したいと思うのであれば、医者や専門家を頼るのは早ければ早いほど効果があるので、迷わずご相談いただければと思います。

 

最後に

代表的な選択肢をいくつかご紹介して参りましたが、このように手詰まりと思えていたご家族にもまだやれることはあることがわかってもらえたかと思います。

 

私ども専門家はまだまだ知名度も低く、こういった問題に悩まれるご家族を助けたいという思いとは裏腹に、なかなか支援の手をつなげることが難しい状況です。

 

少しでもたくさんの人たちに認知していただいて、本当に困っている親と子供、双方の将来に明るい希望を届けられるよう、これからも情報を発信し続けて参ります。

 

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