皆さん、こんにちは。
当センターの研修生の中には、年単位で引きこもっていたという方も少なくありません。
内閣府は、学校や仕事に行かず、半年以上、自宅に閉じこもっている15歳~39歳の引きこもりの方が全国で54万人いると調査報告を発表しています。
時代の経過と共に、引きこもりの長期化や高年齢化の背景もハッキリしてきました。特に、30代~40代における引きこもりの実態把握を指摘する専門家も数年前に比べ増えてきているように思います。
当センターでは、10年以上も前から、「引きこもりと被害妄想」の関係性に注目してきました。
私たちが実施した統計調査からは、引きこもりが長期化・慢性化してしまっているケースには、必ずと言っていいほど「被害妄想」が関係していることが明らかになりました。
そして問題が根深く進行してしまったケースなどでは、ちょっとやそっとの支援だけでは、社会復帰に及ばないこともわかってきました。
自分の悪口を言っている・・・
引きこもりが長期間続いたケースでは、時折「近所の人が自分の噂をしている」「家の外で自分のうわさ話をしているのが聞こえた」「自分の悪口を言っている」などといった訴えをする方がいます。
これらは「被害関係念慮」などと言われていますが、この延長線上に被害妄想が存在しています。
被害妄想に発展してしまった場合、特にその対象が家族に向いてしまった場合などでは、何気ない会話であっても、自分の悪口を言われているように感じたり、自分を攻撃されているように受け取っていくのです。
そして、次のステップでは、家族を一方的に攻撃していくことになります。
「何でいつも否定するようなことを言うんだ!こっちはこんなに苦しんでいるのに、何もわかってない。それでも親か!」などと訴え、親や家族を必死に説得していきます。
中には、暴力を振るってまで、自分の苦しさを訴え続けるケースも少なくありません。
人はいずれ裏切る・・・
彼らは、家族を含めた他人に対し、強い猜疑心と対人不信感を抱いていることが多く、「人はいつか裏切るから信用できない」という信念を抱いています。
他人という存在は油断のならないもので、自分に不利益をもたらそうとスキをうかがっていると考えています。
親切心で近づいてくる相手に対しても、素直に応じることができず、「自分を利用しようとしているのではないか。だまそうとしているのではないか。危害を加えようとしているのではないか」などと疑ってしまいます。
そのため、対人関係が広がらず、親密な関係も築けないことになりがちなのです。
そして、徐々に対人関係も疲弊しきっていき、最終的に引きこもってしまうというパターンもあるのです。
プライドを傷つけられた!
彼らは、些細な言葉にも悪意や非難の意味が込められているように感じて屈辱と怒りを覚えます。
世間体や他人の言葉に非常に敏感で、自分に対して言われた言葉をいつまでも忘れません。十年も二十年も前に言われた言葉を一言一句ハッキリと覚えていて、その恨みを昨日のことのように思い出したり、語ったりすることもよくあります。
周囲からすると、どうしてそんなことで腹を立てているのかさえ分からないこともありますが、当の本人はプライドをひどく傷つけられたと感じているのです。
彼らが回復していくためには、彼らが一番苦手とする、「相手を許すこと」が必要です。
どうしても自分の痛みにばかりとらわれているため、また、自分がいかに被害者であるかという意識が強すぎるため、自分を傷つけたことについて相手を許せないのです。許せないがゆえに本人も苦しんでいくことになります。
このように引きこもりと被害妄想には、密接な関係があり、特に問題が長期化しているケースなどでは、支援に多大な時間が必要になってくるのです。
もちろん、引きこもり状態から環境を変えるということでさえも、慎重なアプローチが必要になってきます。
ですから、私たちのような専門特化されたチームと手を取り合いながら、被害妄想へとアプローチしていく姿勢が必要なのです。