皆さん、こんにちは。

前回の記事でご紹介したシリーズブログの第一部「小さな気づきで全てが変わる~Small changes make a big difference」1回目になります。

このシリーズは、当センターの施設長である「佐藤 矢市(さとう やいち)先生」の視点で展開して参ります。

今回は、思い込みと完璧主義を持っていた当時20代の強迫性パーソナリティ障害の男性の体験談を紹介していきたいと思います。

彼の回復への軌跡

出会った当初の彼は、将来への不安が強すぎて、「もう死にたい・・・」が口癖の、お先真っ暗といった状態でした。

彼は元々、高校、大学と超エリートコースを歩み、社会人としての将来も期待されていましたが、外資系金融機関に就職した途端に不適応を起こしてしまいました。

そんな彼の「回復プロセス」を過去から現在に渡り紹介していきたいと思います。

まず彼は、「今」の自分のことを全く考えることが出来ず、先のことや将来のことばかりを考えていました。

当時、無職であったことからも、頭の中は「次はどんな仕事に就こうか・・・今から専門的知識をつけるために学校に行った方がいいのか・・・」など、常に「何かをしなければいけない」という不安でいっぱいでした。

彼は、「人生やり直しがきかない。○○卒だったら、こういう生き方をしなければいけない」という思い込みが強く、そのイメージにそぐわない自分を激しく責めていました。

彼は頭の中で「○○歳は再就職において最低ラインだ」と決めつけ、もう社会復帰できないという絶望感と不安感、後悔の念にかられていることが多く、そういった時はあまり会話にならず、毎日毎日同じような会話を繰り返していました。

そんな彼が、ある体験をキッカケに、少しずつ変わり始めたのですが、そのキッカケづくりを与えてくれたのは、彼と同期の研修生(女性)でした。

彼は彼女を見た時に、「あっ、この人俺よりヤバい感じだ」と思ったそうですが、実は彼女も彼を見た時に同じようなことを感じたそうです。

お互いの悩みを徐々に打ち明けていくうちに、彼女が自分と同じような境遇だったことに気づき始め、同じ苦しさを抱える者同士、お互いを通して客観的に自分自身を見つめることが出来るようになりました。

そしてさらに、彼は会話を重ねる中で、自分の経験が人の役に立っている(少なくとも話し相手になれた)と思えるようになってきたことで、少しずつ、自分の過去の経験を受け入れられるようにもなっていきました。

彼の躍進~メッセージ~

センター修了時の彼は、「○○大学を卒業後に、外資系金融機関に勤務したこと。それはそれでいい経験をした。むしろ誇りに思っているし、後悔はしていない。あの経験がなかったら、自分の悩みに出会えなかったし、センターで出会った人達の相談にも乗ることはできなかっただろう」と、過去の自分を受け入れることができていました。

私から見ても、当初の彼は徹底的に過去に執着する人間でした。

周りが何を言っても、過去から離れることはせず、過去に留まり続けていました。

ある意味では、あれほど過去に執着できるのは、一つの能力なのではとも思います。

だからこそ、彼は本当の意味で開き直ることが出来たのだと思います。

昔の彼からは想像もつきませんが、こんなことも言っていました。

過去に執着して後悔していても何も始まらない。だったら今、何をすればいいのか。現実問題、お金を稼がねば生きていけないし、むしろこだわり続けて、お金を稼いでいないことの方が恥ずかしいし、ばかばかしいと思える。学歴はあるが、仕事に対しては経験もゼロだから、上手くできない方が自然だと思える。まずは仕事に行くことから始めてみようと思った。できることなら自分のイメージした道に進めればいいと思っているが、一歩ずつ上がっていければいい。昔は一気に理想まで近づこうとして失敗していたから。」

これまでに私やスタッフが「今のことを考えるようにしましょう」と、彼にアドバイスしてきましたが、あまり変化は感じられませんでした。

本当に苦しんで悩んだ末に自分で気づくことの大切さや、自分の力で解決策を導き出すことの重要性を、彼から改めて学ばせてもらったように感じます。

ちなみに現在の彼はと言うと、まだ強迫的な一面こそ残していますが、そのことを自覚した上でうまくコントロールする術を身に付けたようで、他県の製造会社にて主任を任され、立派に活躍なさっています。