皆さん、こんにちは。

佐藤矢市先生の「パーソナリティ障害の回復には決断と見守る連携が必要」シリーズ第18回目となります。

今回は矢市先生に、運営にあたって大切にしていることをご紹介していただきます。

センターの紹介

私はパーソナリティ障害支援センターを設立した当初から、「家族再構築」の理念を大切に守ってきました。

その一環として、私と妻で皆さんの仮想「親役」を担っています。

全国から訪れてくるパーソナリティ障害者は、当然、私たち「親役」と意見の相違から討論になることもあります。

ここで私たちが大切にしていることは、相手の意見を「どのように認め、受け入れ、尊重するか」ということです。

同時に、彼らが自分の考えや意見をはっきり私たちに伝えることができるかという点も重要になってきます。

相手と討論になってしまった時、「考え方の違いはどこにあるのか?」や、「どのように仲直りをし、お互いの妥協点を見つければよいか?」ということを考えさせられるシチュエーションを生で体験できる機会を提供することも、パーソナリティ障害の回復には必要なステップなのです。

当然そこには、「相手にどれくらい甘えたり、頼ったりしてよいか?」という問いに対しても、自分なりの体験を通して学習していただきます。

同じ釜の飯を食べ、調子が良い時も悪い時も共に生活していくことが、どれだけ価値のあるものなのかということに気づいていくのです。

どんなに立派な書物や専門書であろうと、実際の現場に勝るものはありません。

私は、当センター内における臨床現場こそが一番の教科書たり得ると信じています。

人は「安心した環境」であれば、その人が本来持っている健全でバランスの取れた自分を取り戻すことができます。

そして、当センターでは「ありのまま」をモットーに皆が生活をし、安心できる環境を用意しています。

治療困難と言われていたり、様々な悩みや問題を抱えていることが皆さんと私どもの架け橋となっています。

ぜひ、当センターの安心できる環境でチャレンジしてみて欲しいと思います。

自分の問題を解決する

私が利用者(当センターでは「研修生」と呼んでいます)に学習して欲しいもう一つの大切なことは、「自分の問題を解決する」ということに気づくことです。

当センターでは、この点にも重きを置き、一人一人が本来の気づきに近づき、その人なりの結果を出せるよう支援をいたします。

しかし、パーソナリティ障害者が社会という集団生活の中に入っていくことは、「周囲に馴染めるのか?」という不安と怖さでいっぱいになるものです。

そういった時、彼らが「逃げ道」という選択肢をどれくらい持っているのかが重要になります。

強がらず、自分のありのままの姿を表現でき、それを受け入れてもらえるような人とのつながりが必要になってきます。

この時、本当の意味での「親離れ」ができていない人は、「逃げ道」を自分の親に求めていきますが、その多くが失敗に終わり、逃げるどころかどん詰まり状態にさえなってしまいます。

残念ながら、そこには親自身が子どもの心理状態を理解していないという背景があります。

当センターでは、研修生自身の社会自立だけではなく、こういった親御さんへの心理支援も重要なことと認識し、実践しています。

ご家族にとって、お子さんのことで何度も何度も挫けそうになったり、逃げたくなったり、諦めたくなったり・・・そういった気持ちの連続だと思いますが、そんな時こそ当センターが大切にしている「家族も一緒に」が、子どもたちの自立に効果的に働くことがあります。

決して一人にならず、私たちとのつながりの中で相互信頼が芽生えてくれば、当事者家族には回復の兆しが表れてきます。

皆さんが本来持っている回復バランスを取り戻せるよう、初志貫徹して参りますのでどうぞご安心ください。