今回もシリーズ編としてお届けしているYさんの体験談を紹介していきます。
彼女が選んでくれた今回のテーマは「被害妄想による自傷行為」です。

一見すると、被害妄想と自傷行為がどのように関係しているのか、疑問に思われる方もいるかもしれませんが、リストカットやOD(大量服薬)などの自傷行為の背景には、被害妄想が影響している場合が少なくありません。
 
この被害妄想というのは、いきなり生まれるものではなく、その前の段階に、必ずと言っていいほど「被害感情」とか「被害念慮」という被害妄想の予備軍の様な状態があります。
 
簡単に言えば「私は、周りにバカにされているように感じる」「周りに嫌われているように感じる」というようなレベルのものです。
 
被害妄想に比べれば、まだ軽度なので、自分自身でそう感じていることは、どこかで自分の思い込みからくるものだという自覚があります。
 
ですから、周囲が少し訂正してあげたり、現実検討を促してあげると、すぐに我に戻ることができます。
 
しかし、これが被害妄想にまで発展してしまうと、「私は絶対周囲にバカにされている。あいつは、自分のことを傷つけようとしている。だから、自分がやられる前に、自分がやってやろう」とあたかも自分の中で感じていることが現実の世界でも起きていると思い込んでしまいます。
 
この段階になってしまうと、いくら周りが注意したり「そんなことないのよ」「それはあなたの思い込みだよ」と言い聞かせたとしても、一切聞く耳はありません。
 
逆に、「自分の苦しさを何も理解していないお前が悪い」と攻撃対象を向けられてしまうこともあります。
 
この様に、周囲や現実の感覚(情報)と本人の感覚がかけ離れてしまった状態が被害妄想なのです。
 
実は、自傷行為も、この思い込みや被害妄想が刺激された結果、「自分は生きている価値がない。誰からも受け入れてもらえない」と感じてしまうことで、生じる行動の一つなのです。
 
家族や周囲から見れば、「そんなに自分を責めなくても・・・」と思っていても、本人にとっては真剣そのものなのです。
 
特に、パーソナリティ障害の場合、この被害妄想は、家族やパートナーなどのように、関係が近い方々に向かうことが多いのが特徴です。
 
それでは、被害妄想と自傷行為の関係性を頭に置きながら、Yさんの体験談を見てくことにしましょう。

当事者の実体験より

私の自傷行為にはいくつかのパターンがありました。
 
まずは被害妄想による自傷行為です。
 
これは「なんで私ばっかりがこんな目にあうんだ」とか「なんで貴方の為に耐えないといけないのか」という思考から逃げる為にいろんなところを切ったり(傷つけたり)、薬を多量に飲んでいました。
 
死にたいから切ったりしていたわけではありません。
 
現実の我慢していることや辛いことから、一時的にでも逃避するために自傷行為をしていました。
 
リストカットをした場合は「血が流れてるから私はまだ大丈夫」とか「切って死なないからまだ耐えられる」と思い込むためでもありました。
 
逃げるために自傷して、その自傷した痛みで現実の痛みにまだ耐えられると実感するために自分を傷つけていました。
 
実際には誰も私に耐えろとか、死にたくなるまで我慢しろとか、言ってはいないと思います。
 
しかし、そう思って自傷してしまうのには、ちゃんとした理由があるのです。
 
私の両親は、私が泣くとすぐに暴力をふるう人でした。
 
泣き止むまでひっぱたかれたりしましたが、なんで泣いてるかの理由も聞かず、こういうことをしたから貴方を怒っているとかいう理由も話さず、暴力を振るわれました。
 
それは幼い私にとっては恐怖でしかありませんでしたが、逃げる術を知らなかった私は家族はこういうものだとか、しつけは暴力なんだと自分に言い聞かせ、我慢していました。
 
しかし、両親が失敗したり、泣いたりしても私のように殴られないことに不信感を抱きました。
 
親は、私と似たようなことをしているのになんで怒られないのだろう。
 
そんな疑問が頭を巡るようになったのです。
 
その疑問が湧いたときから、「私は親から被害を受けている」と感じ始めました。
 
理由もわからず、暴力をふるわれるのですから。
 
そして、その現実から逃れるために、自傷行為を始めました。
 
被害を受けたことがあるものに対して、また被害を受けるんじゃないかと考えてしまう癖がついてしまったのです。
 
これが一つ目の自傷行為のパターンです。
 
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いかがでしたでしょうか?