皆さん、こんにちは。
パーソナリティ障害の特徴の一つに、自分の思いへのとらわれが強すぎるために、自分を客観的に眺めることが苦手なところがあります。
この自分を客観的に眺めることの出来る力を養っていくことは、パーソナリティ障害への回復にもつながってきます。
パーソナリティ障害者は、憎しみ、恨み、怒りといったネガティブな感情が、昇華(発散)されないまま、生々しく心に取りついて、自分で自分を苦しめ続けていきます。
それが不満やグチ、自暴自棄となって繰り返されていき、出口がなかなか見えなくなってしまいます。
例えば、話をじっくりと聞いてもらったとしても、その時はスッキリしたはずなのに、また翌日にはそんなことは忘れてしまったかのように、再びネガティブな感情にとらわれてしまいます。
この無限地獄のような堂々巡りから脱出するためには、自分を客観的に眺めることができる広い視野を身につけることが必要になります。
そうなると、視点や気分を切り替えることもできるようになるのです。
見本やモデルを提示する
その習得に一番手っ取り早いのが、客観的に眺めるやり方・コツの手本やモデルをみせてあげることです。
本人が負の感情にとらわれて堂々巡りしているときにじっくりと話を聞き、もつれた糸をほぐし、もっと大きな視野で別の見方を提示したり、視点を変える手ほどきを示してあげるわけです。
この視点を変え、とらわれから脱出しやすくすることが、われわれ支援者の役割でもあるのです。
例えて言うならば、泣いている子どもや機嫌を損ねてすねている子どもを、うまくあやして機嫌を直してしまう母親のスキルに似ています。
柔軟なお母さんと言うのは、まるで魔法でも使うように、上手に子どもの気分を変えてしまうものです。
子どもがとらわれていることをもっと大きな視点で見て、「たいしたことないよ!」というメッセージを送るとともに、傷ついた気持ちを巧みになぐさめます。
子どもはそんな母親の慰めや助けを借りて、悲しみや怒りの溝から脱出することができるのです。
これらの作業は、親の客観的視点というモデルを、子どもに提示していることと同じです。
すぐには実行に移せなくても、そのモデルを内在化して、少しずつ習得することができるようになります。
私たちが日々パーソナリティ障害者と接している際に、心掛けていることはこういったことなのです。
客観的視点を習得できるようになると、先に挙げた無限地獄のような堂々巡りに陥ってしまう、自分なりの落とし穴に気が付けるようになります。
そうすると、その落とし穴を、ヒョイッと飛び越えたり、回り道を選ぶことができるようになります。
落とし穴がなくなるわけではなく、落とし穴の場所を自覚し、その避け方を習得できるようになることこそ、自我の強さであり、パーソナリティ障害の回復目安でもあるのです。