6d452fc464fb67dd449b325b2976c023_sパーソナリティ障害者をもつ母親としての心構えを、前回とその前に渡って説明してきました。

今回は、最後の心構えとして、母親として『覚悟を決める』ということについて詳しく説明したいと思います。

前回までの解説では、まず子どもの訴えている本質を知っておく学習をしておくこと。

そして、親としての限界をハッキリと伝えることとその際の注意点として子どもにとってのパイプ役を事前に作っておくことについて説明してきました。  注)子どもといっても、50代くらいまでの成人期も含みます。

覚悟を決めるということ

母親として覚悟を決めるというプロセスは、今までに説明してきた二つの心構えの上に成り立ちます。

子どもの本質を理解し、親としての限界を伝えた後の心構えということになります。

30cd5d0651143445f3dfd4d55374bc44_sでは、何の覚悟を決めるかというと、前のステップで説明した「限界を伝えた内容や約束」を何があっても貫き通すということです。

例えば、「もうこれ以上あなたをここにはおいておけない。(パイプ役があれば)そこで自立に向けて頑張ってきて欲しい!もうあなたの帰えってくる場所はここではない!」とハッキリと親としての限界を子どもに伝えたとしましょう。

そうすると子どもは、色々な方法で反発し、親が決めた限界を壊そうと試してきます

ここが親の覚悟の見せ所というわけです。

残念ながら、問題が長期化しているケースの場合、親と子の主導権が逆転してしまい、家族の中で子どもが完全に主導権を握ってしまっているケースが少なくありません。

こういった場合では、親が子どもの言い分に毎回振り回されてしまっている場合が多く、親自身が自分の決断を貫き通せないのです。

実は、子どもはそれを知っていて、そこをうまくつかれてしまっている場合があります。

境界性パーソナリティ障害 40代男性の場合:

ある40代男性、境界性パーソナリティ障害のAさんは、実家に両親と3人暮らしでした。

父親は地元の中小企業の社長であり、何十人もの従業員を抱え多忙な毎日を過ごしていました。

Aさんが学生時代も父親はめったに家に帰らず、Aさんにとっては寂しい幼少期を過ごしていました。

多忙な父親に代わり、母親はAさんに多大な期待をかけ、Aさんはその期待にこたえ続けてきました。

成績も優秀で県内でもトップレベルの進学校へ入学しましたが、そこでの人間関係につまづき、そこから、高校を中退、長期間に渡る引きこもり生活を送るようになりました。

その後、通信制の大学に入学し、何とか卒業までたどり着きますが、いざ社会に出てみると人が怖くて仕方がありません。

一人暮らしをしてみても、周りが自分の悪口を言っている様に感じ、生きている心地はありませんでした。

そんな中、たまたま出会い系で知り合った女性と恋に落ち、結婚をしましたが、うまく甘え方が分からず、自分の気持ちを汲み取ってくれない妻にDVを繰り返し、結局離婚となり、実家に戻ってきました。

途端に、両親に対する激しい暴言・暴力が始まりました。

口をついて出てくる言葉は、「俺の人生がこんなになってしまったのは、お前らの責任だ!責任を取って俺を殺せ!何もできないんだったら、金をよこせ!俺は何にも悪くない」など攻撃的な言葉を浴びせ続け、両親は疲労困憊になってしまいました。

Aさんの場合(というよりも、パーソナリティ障害の場合は)、身内以外に攻撃性はほとんど向きません。

強制入院したとしても、当たり障りのない良い患者を演じているので、すぐに退院になってしまいます。

両親はどうにもこうにも行かず、出口の見えない状態で、私のところへやってきました。

私は事前にAさんと会って、パイプ役を作っておきました。

そこで、両親に親としての限界を伝える事を提案し、いざ実行にうつしました。

ところが、案の定、Aさんは、様々な理由をつけて、センター入所を断り続けました。

Aさんの場合は、「色々な急用ができた」「体調がすぐれない」などといって先延ばししていました。

多くの場合、体調不良や色々な要求・不満などを訴えて、親の限界を揺さぶってくる場合もあります。

Aさんの場合、私とのパイプがしっかりつながっていたこと、母親に対し覚悟を決める必要性を何度となく訴え続けたことが功を奏し、晴れて入所に至ることができました。

もちろん、入所してからも私たち援助者をはじめ、母親に対しても限界を試すような行動を繰り返していましたが、徐々に落ち着いていきました。

母親の覚悟がその子どもの決断を後押しする

d674da5580c03335f575fca5236cd8b2_sずれにしても、こういったケースの場合は、子どもの決断を待つという姿勢も大事ですが、実際には自分で決められない、そこまでエネルギーがない場合が多いです。

そういった場合には、両親(特に母親)の覚悟がその子どもの決断を後押しする助けとなることもあります。

どうやら今回は、母親も本気みたいだな・・・なんとなく今までと違うぞ」などと感じてもらえれば上出来です。

そう感じてもらえなくても、母親自身が本当の意味で腹を決められるかが一番のポイントです。

心を鬼にすることは大変苦痛も伴いますが、遅かれ早かれ、その時はいずれ訪れるでしょう。