9fe47673b22c1fb7ed6dc3e5097a0ff9_s今回は、私自身が日々の臨床活動の中で、主軸としている心理療法(考え方)についてご紹介したいと思います。

言葉は少し難しいですが、私は弁証法的行動療法(以下、DBT)を用いて、多くの方々が回復へ歩んでいけるようお手伝いをさせていただいています。

この治療法は、認知行動療法と禅の思想が融合して生まれた統合的精神療法で、自殺企図や自傷行為を伴う境界性パーソナリティ障害の治療のために開発されたもので、近年注目されています。

「弁証法」というのは元々哲学のことばです。簡単に言うと、すべての物事には対立する力が働いていて、その対立を統合することによって新たな状態へ進化する、というとらえ方です。

このDBTでは、パーソナリティ障害の特徴でもある「敵か味方か」、「白か黒か」、「完璧か失敗か」などの二極化思考を積極的に取り上げていきます。

「完璧に愛されたい」o「r完璧に愛してもらえない」という袋小路から抜け出すためには、二項対立に縛られるのではなく、それを乗り越える思考や行動を身につける必要があります。

難しく感じる方も多いかもしれませんが具体的に説明してみましょう。

どちらか一方ではなく、どちらも大切にする

1688334d8cd07a2a12e98cc1badb142c_s例えば、「変わらなくてはいけない!」でも「変わるのが怖い・・・」、「問題を解決しないといけない」でも「解決できない問題は受入れなければいけない」、「自分で解決しなければいけない」でも「だれかの手助けも必要」などのような対立する気持ちを両方とも否定しないで認めてあげることを大事にしながら、より安定した状態を目指していきます。

「あれかこれか」という二つの気持ちの中で揺れ動く状態から「あれもあっていい。これもあっていい」という第三の姿勢へと変化することが、より安定した次のステップを見つけていくために必要なプロセスとなります。

あるボーダーライン(境界性パーソナリティ障害)の女性は、自分のミスにより職場内で一人の上司から注意を受けてしまい、その後軽い口論になってしまいました。

その上司以外の人との関係は、比較的良好で、協力的な関係が築けていました。上司との関係以外では、特に大きな問題はありませんでした。

しかし、彼女はこの上司と口論したことを根に持ち、「仕事を自分が辞めるか、相手を辞めさせるか」という二極化思考が働いてしまい、凄まじい怒りを抱えて面接に来られました。まさに敵か見方かの発想です。

今までの彼女であれば、相手を徹底的に攻撃するか、突然自分から仕事を辞めてしまうか、どちらかの行動しか選択肢がありませんでした。

第三の考え方を導き出す

85b558cd21f8a63fc8b1d98a3c98fd78_sこういう時に、DBTを用いると、まず対立する二つの考え方についてのメリットとデメリットを一緒に考えていきます(もちろん感情の高ぶりが収まってからの話ですが)。

そして、二つの考え方を統合させた第三の考え方を導き出していきます。

例えば、「辞める辞めないは、今決めずに、もう少し様子を見てから決める」などのような考え方です。決断を先延ばしすることのメリットを考えていくのです。

また、DBTには、ある行動や現象には必ず意味を持っている部分があることを見出し、その部分に肯定的な受容を行います。

先ほどの例で言うと「たしかに自分の失敗によって注意を受けたが、もしかしたら、上司が注意してくれたのは、自分の可能性を信じてくれていたからかもしれない。見込みのない奴には注意はしないだろう。それに、上司以外の人は、私のことをちゃんと助けてくれている」などと全体的に状況をとらえることで、全否定に陥りがちな自分への見方を変えていくことができるのです。

82702f322df2ad38b28c2042a82f2ba9_s個人的な意見になりますが、ジレンマや葛藤こそがより高次元な生き方を生み出すと信じています。

DBTには、この他に、感情調節のスキル対人関係のスキルつらさに耐えるスキル、そしてマインドフルネス・スキルなどがあります。

当センター入所中に起こる様々な出来事の中で、必要に応じてこれらのスキルを習得できるよう支援しています。