6d2ceceab7cab5ffa09a2b262fe5cba8_sもっとも身近な犯罪行為である「万引き」と、犯罪行為には似ても似つかない「摂食障害」という食べることへの依存症には、ある大きな共通点があります。

それは、どちらも幼い頃に愛着障害(愛情不足)を味わったという経験です。

親の立場からすれば、充分とはいかないまでにも、その都度愛情をかけていたのに、「どうして愛情が足らないと今ごろ言うのか」と困惑してしまいますが、実際にそういった相談が多いのも事実です。

心理臨床では「愛情」というものを量ではなく、「」と捉えていきます。

ですから、子どもと一緒にいる時間がたくさんあったからと言って、愛情が十分に伝わったかというとそうではなく、時間がない中でも子どもの話に耳を傾けたり、子どもに興味を持つだけでも十分意味があるのです。

895a3b71917b23923970d5849c76feae_s愛情不足を味わった子どもたちの多くは、両親に喧嘩が耐えなかったり不仲であった場合、必要以上に「良い子や優しい子」を演じていきます。

母親の愚痴を必死になって聞いてあげるカウンセラー役になる子どもも珍しくありません。

万引きや摂食障害を併存している方たちの学童期や青年期を見てみると、こういった、いわゆる「良い子」や「優しい子」が多いのも事実です。

今回は、万引きと摂食障害を併存している境界性パーソナリティ障害のケースを考えてみたいと思います。

万引きと摂食障害を繰り返す境界性パーソナリティ障害

4fc4667d386067658ec9c3768e1106c0_sAさん(女性、30歳代、既婚、子ども一人)は最初のインテーク面接で、「首や肩がものすごく痛い。緊張しやすくて、すぐにゲップが出てしまう。今でも出そうです・・・いろんなことをクヨクヨ考えすぎてしまって疲れやすい」などを繰り返し訴えていました。

同時に、Aさんは母親に対して以下のような想いを抱いていました。

母親には絶対に会いたくない・・・家に帰りたくない・・・もう親の顔も見たくないし、声も聞きたくない・・・両親や家族の記憶がなくなってしまえばいいのに!」というものでした。

当時、Aさんが繰り返しみていた夢の内容というのは、母親がいつも泣きながら父親にすがりついているというものでした。

そしてその後、Aさんが一生懸命母親を慰め、励ますものの、母親の気分が一向に変わらず、どうして良いのかわからず、目を覚ますと汗びっしょりになっているというものでした。

0c2d7d4a1eb62b89006ba57efd5442d2_sそんなAさんは面接を重ねていく中で、「私も実際に子どもを授かり育てていく中で、母親とまったく同じようにわが子に接していることに気が付きました」と世代間連鎖に気が付くようになり始めました。

また、「親に一切迷惑をかけたくなかった。甘えたい気持ちとかわがままな気持ちは、我慢して一切口にしたことはありませんでした。親に心配かけないように、何でも自分でできる「良い子」を一生懸命やってきました。

でも、父親と母親の距離が一向に近くならない現実を目の当たりにして、その原因を自分に持ってきては、ひたすら努力を繰り返していきました。父親も自分の世界に閉じこもる性格の人だったのはわかっていましたが、どこかで心を開かないのは私が悪いんだと思い込んでいました」などと「良い子」を演じるしかなかった背景にある素直な気持ちを語るようになりました。

11a7ef3500539cd275d5e10e7c039042_sAさんは自らの過去を素直に表現していく一方で、「時が経過した今では、私は父親と母親を絶対に許せないし憎んでいます。しかしそう思ったりすると、それが全部自分に返ってきて、自分を責める気持ちに襲われてしまうんです」と両親に対する怒りや憎しみ、自責感情なども表現できるようになりました。

Aさんは、最後に「私が、良い子になろうとすればするほど苦しく、辛く、なぜか親たちが憎くなって、なんで自分だけこんなに努力を続けても報われないのだと苦悩し、ついには家庭内で爆発するようになっていました」と良い子が家庭内暴力を振るわなければいけなくなった「悪い子」に急変する背景を付け加えました。

親に向かう家庭内暴力の背景には、「親にもっと愛されたい。でも今まで愛してくれなかった親を恨んでいる」というアンビバレンスな葛藤が存在しており、それが暴力という形で表現されていくのです。