l_169パーソナリティ障害の方たちの中には、他者への激しい暴力や暴言、摂食障害や数々の依存行動等により、医療機関への入院を余儀なくされるケースがあります。

確かに、家族にとっては、自宅にいられて問題を起こされるよりは、医療機関へ入院してもらった方がよいという気持ちは理解できますが、残念ながら、入院してしまうことで、彼らの「才能」という光の部分が、徐々に影の部分に浸食されてしまうのです。

ある精神科医は、入院中に病棟内で色々と問題を起こしてもらっては困るということで、特に問題行動のある患者には、強い薬を投与せざるを得ないと言っていました。

感情の言語化は、感情コントロールを可能にする

52df3275c7e438d5e2f5ef349359e46b_s彼らの問題行動の背景には、実は強い怒りや憎しみを抱えていることが多く、その感情をどこかで表現し、受け止めてもらう必要があります。

もちろん、暴力など他人に危害を加える方法ではなく、ちゃんと言葉で表現する必要があるのです。

しかし、医療機関では、少しでもこの怒りや憎しみを表現してしまうと、薬の力で抑えようとしてしまうことが多く、適切な感情表現がされないまま、感情鈍麻が起こってくるのです。

次第に、感情を表すことをあきらめ、副作用で無気力状態になってしまい、最悪の場合には、薬依存にまで至ってしまうのです。

こうなってしまうと、もう「才能」がどうのとか言っている場合ではありません。

錯乱や興奮状態が続く場合には、一時的に入院治療は必要ですが、そこでの回復や才能開花は望めません。

30代女性 境界性パーソナリティ障害のケース

825b18af478f478fe7c1584ac0076568_s当センターを数年前に利用されていたある境界性パーソナリティ障害の30代女性は、まさに入退院を繰り返しており、いわゆる「薬漬け」状態で、当センターにたどり着いたのです。

度重なる自殺未遂と家族への激しい暴力、最終的には、自宅マンションから飛び降り自殺を試みたことがキッカケで、措置入院となりました。病棟で暴れ、周囲を巻き込んでしまった為、個室に隔離され、投薬治療がメインになりました。

もちろん、激しい攻撃性が時々顔を出してくるので、強めの薬が処方されていました。

気づいてみれば、言葉数も少なくなり、感情鈍麻が起こり、寝て過ごす日々に陥ってしまいました。

センターに来談された当初の彼女は、表情には何の変化もなく、質問しても、「はい」「いいえ」の返答しかありませんでした。何十種類という薬を服薬していて、いつもビニール袋にいっぱいの薬を持っていました。

その袋を突然手放すとパニック発作が起きるという具合でした。

”お花”という才能

673d30197a5da9d23367886568e36b7f_sそんな彼女が、センター生活の中で、実はお花に興味があることがわかってきたのです。

毎日のようにセンターガーデンのお花を眺め、時には摘んできてくれ、アレンジも作ってくれました。

境界性パーソナリティ障害として医療機関をたらいまわしにされてきた彼女の過去には、フラワーアレンジメントの資格を持ち、お花屋さんで働いていた経歴があったのです。

これこそが、彼女にとっての「才能」だったのでしょう。

彼女はお花と触れあっている時には、とても自然な笑顔を見せてくれ、アレンジメントもとても個性あふれる作品でした。

その頃には、減薬にも成功し、彼女らしさが戻ってきたのです。

もちろん、ここまで来るまでに、怒りや憎しみの表現は繰り返し行われてきましたが、その都度、彼女が自分の言葉で、怒りや憎しみを表現できるよう励まし応援し続けてきました

私たちは、この怒りや憎しみを表現することに関しては、大賛成なのです(暴力や物に当たるなどの表現は禁止しますが・・)。

むしろ、表現できたことに賞賛を示していきます。

d84740fe17a00f5e31e6f42349fbcf06_sとても地道ではありますが、これを繰り返していくことが、薬では届かない心の奥底に眠る感情を処理していく近道だと信じています。

私たちはどんなに強い怒りや憎しみが表現されたとしても、決して彼らを放り出したり逃げ出したりするつもりはありません

必ず、彼らには何かしらの「才能」が備わっていると信じています。

ちなみに、先ほどから登場している女性は、自らの才能に気が付き、再び花屋さんの一スタッフとして社会復帰を果たしています。

また、彼女はとても面倒見がよい一面も兼ね揃えていたこともあり、今では店長として社員を教育する立場に立っています。