ec75bfa8569d6a3e7abe922ada9a35fe_s2015年に入ってから、私たちはあるプロジェクトを立ち上げています。それは、20年以上もの臨床経験から、膨大な利用者データを統計的に処理し、その傾向を探し出すというものです。

詳しいことは、ここでは書きませんが、ご家族や本人を含めた、利用者は、一体どんなことに困っていて当センターを利用しているのかということを明確にしようというものです。

プロジェクト進行中に、あるキーワードが上がってきました。それは、「被害妄想」というものです。

パーソナリティ障害者の中には、自傷行為や家庭内暴力、数々の依存行動や犯罪行為を繰り返す方々がいますが、実はそれらの行動を引き起こしている根底には、この「被害妄想」が存在していることが、当センター独自の統計処理により表面化してきました。

ですから、彼らの心理ケアには、この「被害妄想」という症状の軽減が必要不可欠になってくるのです。

そこで、今回は「被害妄想」が出来上がってしまうまでのプロセスを簡単に紹介していきます。

被害妄想が出来上がるまでのプロセス

分かりやすい例として、母親が、父親や姑に一方的に、いじめられ、我慢を強いられている姿を息子や娘が見ていたとしましょう。いわゆる「不幸な母親」を持った子どものケースです。

93266cfe339e17b4f5e30a3f831943d5_s子どもは、どう思うかというと、心のどこかで、「不幸な母親を私が守ってあげなければ!助けてあげなければいけない!」と思い始めます。

多くの場合、ここに母子密着型共依存関係が確立されていきます。

こういった関係性が出来上がったとしても、友人や先輩、恋人などの家族以外の関係で、自分なりの逃げ場所を持っていれば、問題の深刻化を防ぐことができるのですが、もしこういった関係を持っていない場合には、残念なことに「被害妄想」の芽が育ち始めてしまいます

常に、家族の雰囲気や母親の顔色やご機嫌を気にしているので、自分のことは後回しになります。結果的に、アイデンティティが確立されず、「自分は一体何者なんだ?」という疑問を持ち続けたまま、成人になっていくのです。

要は、母親の幸せを願うあまり、自分は色々なことを我慢していくわけですね。

b961efe67d8936cc25ec17a3becaa11d_sそうこうしている間に、一旦社会に出てみると、自信のなさが浮き彫りになり周囲の評価がとても気になります。今まで抑え込まれていた感情も湧き上がってきて、抑えきれなくなります。

学校や仕事も継続することが難しくなり、母親の住む実家に戻ってきます。

すると、今まで不幸の母親を演じていたはずの母親が、それ相応に幸せそうに暮らしていたりします。しまいには、「早く一人前の大人になって自立しなさい!」と言われたりするのです。

途端に、怒りが沸き起こり、「今までお母さんのために、我慢してきたのに!味方になってあげたのに!今頃のうのうと暮らしているんじゃないよ!色々うまくいかないのは、全部お前のせいだ!責任を持って私の面倒をみろ!」という具合に、いよいよ被害妄想が本格化してきます。

まだ言葉で表現できればいいですが、言葉で表現できない場合には、当然、母親への暴力がエスカレートしていくことは容易に想像がつくと思います。

一旦、被害妄想チャンネルが入ってしまうと、自己中心的に物事を捉えていきます。

1d2f0497004548234a70f4f697075483_s誰かが、私の悪口を言っている」というものから始まり、「周りは私の苦しみを何も理解していない。クズばっかりだ!」「私はこんなに辛いのに何もしようとしない」というものもあります。

本人は、そう思い込んでいるので、周囲が「それは被害妄想だよ」と指摘してあげても、自分が被害妄想であるという意識はありません

逆に、「そうやって私を病人扱いするのか!」とキレてしまうことも珍しくありません。

この様に、パーソナリティ障害の心理ケアには、「被害妄想」へのアプローチが絶対条件になってくるのです。

この被害妄想は、放っておけば自然と収まってくることはあり得ません。むしろ、様々な問題行動として表面化し、家族を振り回していきます。

ですから、被害妄想へのアプローチは早ければ早いほど、予後はよいと言えるでしょう。