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おとなしかった子が、どうして?

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はじめに

おとなしかった子が、突然“不機嫌になる”“手に負えなくなる”という背景には、被害妄想」という問題(心の使い方)が働いていることを意味しているかもしれません。

被害妄想って何?

被害妄想とは、あたかも「自分を追い込む」ような心の使い方を指します。例えば、身近な人物について「悪く思われているに違いない」「きっと、~されるだろう」など、自分にとって脅威や被害になるようなイメージや情報(被害のイメージ)ばかりを想像しては、それらを本気で心配し続ける傾向として確認されます※(下図参照)。

被害妄想の影響とは

被害妄想に支配されると、頭の中は警戒情報(被害のイメージ)であふれるので、その時の気分も害してしまいます。元々、私たちの頭の中(思考)は、気分状態の影響を受け、それに一致した思考(考え)を浮かべやすい傾向があるので(これを「気分一致効果」と呼びます)、不安や緊張といった気分状態が被害妄想によって引き起こされると、それに一致した嫌な記憶や予想(思考)がさらに頭の中で浮びやすくなります。つまり、思考と気分の間に結びつきが強化されていきます(思考-気分の悪循環)。

とはいえ、通常私たちの認知機能(頭の働き)は、自分の考えの是非(合理性)をチェックする機能を働かせているので、気分を害するような「行き過ぎた考え」(非合理的思考)にはブレーキを掛けることが出来ます(これを「メタ認知機能」と呼びます)

しかし、被害妄想に支配されていると、たとえそれが自らの気分を害する考えであるとしても、現在の被害状況を把握する手がかり感じられたり、被害拡大のリスクから自分を守るための情報(それに備えるための情報)に感じられたりするので、それらを手放すことは難しくなります(手放すと被害拡大や危機回避の失敗につながるため)。

結局、自分の考えにブレーキを掛けるタイミングがつかめなくなるので、ネガティブな気分との結びつきを許してしまい、自分をさらに困難な思考-気分の悪循環へと追い込んでしまうのです。

感情コントロールを妨げる被害妄想の影響

一度でき上がった思考と気分の間の悪循環は、回復後も本人の中で潜むため(記憶として残るため)、次に再活性する時は、思考と気分の反応性(内容の一致性)が高まり、そしてその反応時間(タイムラグ)も短縮していきます。

例えば、ようやく静まったと思えた不快な感情状態(思考-気分の悪循環)は、次回の再活性にもっと早くに現れるようなり、そうなると、その内容や程度も前回のものと比べてさらに激化する傾向が予想されます。

従って、ちょっとした日常の不快体験(意見の食い違い、体調不良など)に対しても、不機嫌になりやすく、また不機嫌になると、もっと強烈な感情状態にまで発展しやすくなります(思考と気分の悪循環より)。

もし、この様な傾向がお子さんに観られる場合、すでに被害妄想の影響(思考と気分の悪循環)は、本人のコントロール能力を超えたレベルで強化されている(習慣づいている)かもしれません。
  
実際、感情のコントロール問題(「情緒障害」)の発生割合は、被害妄想のあるケース群において倍(4.6倍)も有意に高いことを、当センターの解析データは示しています(下図参照)。

被害妄想の自分を振り返ったときの感想例:

  • 嫌な考えと気分が一気に押し寄せて来る感じだった。
  • 不快な映像を次々に突き付けられている感覚だった。
  • 全身の力が遠のいて行き、自分の身体感覚が分からなかった。
  • 何でもいいからこの苦しみ(恐怖や衝動)を止めたかった。

被害妄想があると行動問題も激化する

被害妄想があると、感情問題だけでなく行動上の問題も激化することが確認されます。

前述したように、被害妄想の内容は、被害イメージを含む警戒情報であるため、それを喚起する人物や環境に対して強い防衛の意識(自己防衛)をお子さんの中に引き起こします。

もし、防衛の意識が「屈辱的」「致命的」等として感じられた場合、それ以上の被害拡大を防ぐために、お子さんはさらに強い防衛的衝動(他害・迷惑行為)に駆り立てられるかもしれません。或は、抵抗すらも「難しい」と感じる場合、防衛の失敗(被害拡大)がもたらす苦悩(嫌悪感、見捨てられ感覚、空虚感などの束)に直面するので、それを紛らわすために、より強い刺激(自傷行為)を求めてしまうかもしれません。
  
いずれにせよ、被害妄想に支配されると、自分でつくり出す架空の脅威について「真実であるかのように」(他者・環境によって引き起こしたものと)思い込んでしまい、自他の見境が分からないまま、お子さんは、「不要な努力」(不適応的行動)へと誘発されてしまいます。

一方、周囲にとっては、「なぜ、そこまで行動を激化しなければならないか」を理解しづらいので、お子さんの不適応性を指摘したり、誤解を解くような対応を取ったりするかもしれません。しかし、被害妄想に対する修正を安易に求めると、却って、お子さんの妄想性(「分かろうとしない親像」「また苦しめられる」等)を刺激し、さらに強い応戦反応(不適応行動)を引き出し兼ねません。

実際、被害妄想を抱えるご家族では、約2倍(1.9倍)も有意に高い割合で、お子さんの問題行動が「手に負えなくなる」という経験(保護歴)を持っていることが、当センターの解析データから確認されます(下図参照)。

このように、被害妄想を放置すると、お子さんの心(意識)は「架空の脅威」と「不要な努力」の間をぐるぐると空回りし、被害妄想の言う通りに反応してしまう、或は、それに対する安易な反応を引き出すかのようにして、周囲との間で不適応行動(被害妄想の持続に好都合な言動)を成立させてしまいます。

従って、こうしたお子さんと同一空間に居るだけで、周囲(ご家族)もその影響を受けることになります。

別のページでは、ご家族の受ける被害妄想の影響についてご説明します。ご関心のある方は「家族だけで対応しきれないのは、なぜ?」をご覧ください。

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