8fc7865283afe24e33f58a177ed6a547_sこれからご紹介するケースは、当時17歳の女性、診断名は境界性パーソナリティ障害です(個人が特定できないよう内容を一部変更してあります)。

彼女は高校時代、学校の集団の中に入ることができず不登校になってしまいました。

入ろうとしても不安が強く、次第に不登校が始まってしまったのです。

やがて「皆が自分を嫌っている。自分はこの世にいらない人間だ」と泣いて叫び、母親に当たり散らし、暴力が頻繁に起こるようになりました。

手首を切るというリストカットは、月に1から2回は常時生じ、左腕の手首はケロイド状になっていました。

また、いささかわがままであり、自分の欲しいものは、どんなに高いものでも買うことを要求し、もしそれが拒否されると窓ガラスや食器類といった割れそうなものは、ことごとく壊してしまいました

このような激しい暴言・暴力がない時には、概して無気力で、虚無感が強い状態でした。

また、友人から電話がかかってくると人が変わったように立派に対応するというのも彼女の特徴でした。

この様になる前は、極めておとなしく、真面目であり、母親に実に可愛がられ、仲の良い親子関係にありました。

彼女の様に、パーソナリティ障害者の多くは、幼少期から学童期の頃は、実に素直で、聞き分けもよく、成績も優秀であったり、いわゆる「よい子」が多いのが特徴です。

c3729386f4ffb152cbe0f5e331180cd7_s高校を中退した彼女は、その後、実家から少し離れた町の受験校に入りましたが、そこでも馴染めないという理由から、一挙にこのような破壊的、ないし衝動的な人間に変貌してしまったのです。

病院でのカウンセリングでは、「自分でも自分が大嫌いなのですから人に嫌われても仕方がないですね。生きている実感がまったくない。自分という人間がなんだかわからない・・・」としんみり訴えていたといいます。

しかし、母親が家での実際の衝動行動を指摘すると、瞬く間に激しい怒りを表し、「お母さんは黙っていてよ!人のことに口出さないでよ!そもそもこうなったのはお前の育て方が悪かったからだ!」と時には母親を殴る・蹴ることもありました。

また、主治医に対しても気に入らないことがあると急に怒りの発作を示し、「医者だと思って威張るんじゃないよ!やぶ医者のくせに・・・」と日頃の態度からは全く予期できない言動が見られ、その場で化粧道具を壁にぶつけ、ガラスの破片が散らばるといったことがよくみられていました。

さらに服薬自殺未遂(OD)はすでに4~5回におよび、時にはお腹にナイフを刺したり、そのくせ母親への甘えは強く、自立心が乏しく、いつも母親に見捨てられることを恐れていました

境界性パーソナリティ障害者の抱える「耐えがたい寂しさ」

d674da5580c03335f575fca5236cd8b2_sこの様に、パーソナリティ障害の中でも、境界性パーソナリティ障害は、気分の変化が目まぐるしく、それに伴い、周囲の評価が敵・味方と激しく入れ替わり、怒りが他責に向けば暴力自分に向けば自傷行為になってしまうという特徴を持っています。

根底には「耐えがたい寂しさ」を抱いていて、人は必ず自分を見捨てるはずだと思い込んでいるのです。

私は、このような生き方しかできない方たちと長い年月の間、生活を共にしてきました。

統計としてのデータは出してはいませんが、こういった方たちが少なからず安心感を抱き始め、「自分はそうそう捨てたもんじゃないな~」と思えるようになり、親に対する罪悪感や憎しみ、恐怖や不安感が軽減し、彼らが一番苦手とする平凡な一日と安定した関係性が築けるようになっているのは確かです。